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週刊誌スクープ大賞

元・名物編集長がアベノミクスの大本営発表に苦言「週刊誌よ、権力を疑え!」

 還元セールの禁止では、企業や小売店が経営努力で値引きすることもできなくなる。いわば『みんなで値上げしよう』法案であり、消費者のために値引きセールをした業者を、『税を取る役所』の国税庁(財務省)と『消費者を守る役所』の消費者庁が取り締まる。還元セールを行った企業は名前が公表され、調査が入る。値上げに協力しない企業は”犯罪者”扱いである。

 一方で財務省は増税後の住宅需要冷え込み対策として、今年9月末までに注文住宅の購入契約を結べば引き渡しが来年4月以降でも税率を5%のままにする経過措置を打ち出した。税率引き上げが正式に決まってもいないのに『経過措置』とはふざけた話だが、これも増税の『来年4月実施』を既成事実化する露骨な動きだ」

 3月8日に発表された内閣府の「景気ウオッチャー調査」もおかしいという。

「今回の調査結果(2月分)では、『現状判断DI』が前月比3.7ポイント上昇の53.2、『先行き判断DI』が前月比1.2ポイント上昇の57.7となった。

 景気の先行きを示す指数は00年に調査を始めてから最も高い57.7となったという報道が多く見られたが、これは役所と記者クラブの「コンビネーションプレー」だったと批判する。

「しかし、今回の調査結果を注意深く読むと、手放しでは喜べない日本経済の実態が見えてくる。

 25ページにわたる調査結果(全体版)の最終頁には、『参考』として『景気の現状水準判断DI』という指数が掲載されている。そこには『景気の現状をとらえるには、景気の方向性に加えて、景気の水準自体について把握することも必要と考えられる』との記述があるだけだ。

 内閣府に問うと、『「現状判断DI」は3カ月前と比べて景気がどう変化しているかを質問した数字で、「現状水準判断DI」は、現在の景気について尋ねた数字です』と説明する。

 つまり、『現状水準判断DI』こそが実体経済の実感を示している数字なのだ。この数字は今回調査で「45.9」と50を大きく下回り、いまだ過半数が『景気が悪い』と判断していることを示している。その数字を最後に『参考』として載せるのではなく、強調することこそ政府の義務というものだ」

 さらに、作られた賃上げラッシュの裏で「首切り自由化法」が練られているというのだ。

「さる3月6日、産業競争力会議の『雇用制度改革』分科会の第1回会合が開かれた。そこで議論の中心になったのが、経済界の悲願である『金銭解雇ルール』の創設だ。

『日本では企業が社員を整理解雇する場合には4要件と呼ばれる厳しい制約がある。産業競争力会議でテーマになっている金銭解雇ルールとは、企業が『転職支援金』などの名目で一定の金額さえ支払えば自由に社員のクビを切れるようにするもので、実現すれば、サラリーマンはいつ会社から『辞めてほしい』と通告されるかわからない不安にさらされることになります」(ジャーナリスト・溝上憲文氏)」

 昨今TPPが話題だが、そこにも裏があるという。農協の大規模な反対運動が報じられているが、政権と農協側は水面下で条件交渉を始めているそうである。

「TPP参加は既定路線だから、あとは農協を通じた農家への補助金交渉になる。農協は、93年にウルグアイ・ラウンドで米市場の一部自由化を決めた際には、8年間で6兆100億円という巨額の農業対策予算を引き出した。関税撤廃品目次第では、今回は10兆円規模の減額交渉になるのではないか」(安倍ブレーン)

 自民党のTPP対策委のひとりもこう言う。

「北海道庁がTPPによる道内の損失額を米1130億円、小麦418億円などトータルで2兆1254億円と試算している。委員会では農水族の議員が『北海道だけでこれだけの数字になるんだ!』といいながら、補償額について話し合っている。最低でもウルグアイ・ラウンドの6兆円は超えるはずだ」

 今の株高は一場の夢になるかもしれないと、慶應義塾大学ビジネススクール小幡績准教授がこう指摘している。

「小泉政権下でも景気拡大局面が現われて株高となったが、庶民はそれほど恩恵を受けられなかった。現在、それと同じような状況がある。株や土地が上がっても持たざる人や投資資金のない人には関係ない。円安で業績が好転して賃上げにつながるのは一部の大企業にすぎません。多くの庶民にとっては賃金が上がらない中で、物価だけが上がるというのはマイナスでしかありません」

 ポストの報道姿勢を私は評価する。新聞やテレビなどの大メディアが大本営発表のような情報を垂れ流している中で、こういうときこそ週刊誌は「権力を疑え」という姿勢を貫かなければいけない。それが週刊誌の存在理由なのだから。
(文=元木昌彦)

●もとき・まさひこ
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。 

最終更新:2013/03/18 21:00
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