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日刊サイゾー トップ > その他  > 退任のソニー迷走元凶に非難轟々 

落第経営のソニー・ストリンガー卒業 赤字続きでも高額報酬で株主やOBから非難轟々

 サイゾーのニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けします。

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落第経営のソニー・ストリンガー卒業 赤字続きでも高額報酬で株主やOBから非難轟々 – Business Journal(3月17日)

ナイトの称号を持つ、
サー・ハワード・ストリンガー氏。
(「Wikipedia」より)

 ソニーのハワード・ストリンガー取締役会議長(71)は3月8日、ニューヨークで開かれた日米交流団体で講演し、取締役会議長の任期が満了する6月末の株主総会で「ソニーから卒業しようと考えている」と退任の意向を表明した。2012年4月に就任した平井一夫社長兼CEO(最高経営責任者、52)が「しっかり足場を固めてソニーをリードするようになった」と指摘。「自らの役割は終わった」と判断したようだ。

 ストリンガー議長の退任表明を受け、平井社長兼CEOは9日、「ソニーにおける多大な貢献に心から感謝する」とのコメントを発表した。

 だが、ストリンガー氏はソニーに「多大な貢献した」といえるのか。「心から感謝」するようなことがあったのか。断じて「ノー」だろう。

 経営者は結果で評価される。ストリンガー氏が取締役兼代表執行役会長兼CEOに就任したのは05年6月22日。その日のソニーの株価の終値は3890円。時価総額は3兆8791億円。12年4月1日、社長兼CEOを退いた。その前日の3月30日のそれは1704円。時価総額は1兆7119億円だった。

 CEO在任中に時価総額を2兆1672億円減らした。これが、ストリンガーCEOがソニーにもたらした実績、いや被害である。経営者としての勤務評定は不可。落第点しかつかない。「多大な貢献」どころではないのである。

 ストリンガー氏は、ジャーナリスト出身という珍しいキャリアの経営者だった。米国の3大ネットワークのひとつ、CBSで30年以上テレビの報道記者としてのキャリアを積み、88年から95年までCBSの社長を務めた。

 CBSを辞めてインターネットテレビ会社の会長兼CEOになった時に、当時、ソニーの社長だった出井伸之氏にヘッドハンティングされた。97年に米国ソニー社長、98年には同社の会長兼CEOに就いた。映画やレコードなど米国の事業をソニーの稼ぎ頭に育てた実績を買われて、99年ソニー本社の取締役、03年に副会長に昇任した。そして05年6月、会長兼CEOに就任。09年4月からは社長も兼務して、全権を一手に握った。

「ストリンガーはカルロス・ゴーンになれるのか?」

 これが日米エレクトロニクス業界の最大の関心事だった。カルロス・ゴーン氏が日産自動車のV字回復を果したように、ソニーを復活させるのではないかという、大きな期待を背に華々しく登場した。

 だが、ストリンガー氏はゴーン氏にはなれなかった。黒字回復など具体的な数値目標を掲げたゴーン氏は、「達成できなければ退任する」と不退転の決意で改革に取り組んだ。その結果、日産は巨額な赤字から過去最高の利益へと、絵に描いたようなV字回復を果した。

 一方、ストリンガー氏がトップとして在籍した7年間のうち、4年間は赤字を計上した。営業赤字の元凶は、主力事業であるテレビの不振にあった。テレビの再建なくしてソニーの再生はなかった。しかし、テレビ事業をどうやって再建させるのかという具体的な道筋を示さなかった。いや、示せなかったのである。

 ストリンガー氏は本音の部分では、自分の守備範囲である映画・ソフトなどの事業をソニー本体から切り離して分離・独立、その会社をニューヨーク証券取引所に新規上場して、その経営に当たりたいと考えていたのではないだろうか。東京にいるソニーの日本人の経営幹部は、だから疑心暗鬼になっていた。

 ソニーはモノ作りにかかわる技術力や、音楽を携帯して聴くウォークマンのような新製品を生み出す発想力が衰え、製造部門はリストラを繰り返すだけになった。平井体制になった現在でも、基本的には同じパターンである。

 結局、主力のテレビ事業を黒字に転換させることができなかった。ソニーは05年3月期の赤字以来、ストリンガー氏がCEOを退任する12年3月期までテレビ事業は8期連続の赤字となった。12年3月期に2700万台の薄型テレビを全世界に売りまくったが、それでも赤字だ。テレビ部門の累積赤字は約7000億円と推定されている。ストリンガー氏がCEOに在職中も、社長を兼務して、文字通りワンマン体制を確立してからも、テレビ事業は一度も水面に浮上したことがないのである。

 平井社長に交代した13年3月期も、テレビ事業は赤字の見通しだ。平井社長は来期(14年3月期)はテレビ事業の黒字化を公約しているが、達成できなかったら、ゴーン氏のように腹を切る覚悟はできているのか。はなはだ疑問なのだ。

 ストリンガー氏はソニーの再生に失敗した。だが、経営責任を問われることはなかった。ソニーは委員会等設置会社の形態をとっており、取締役の指名・解任権は指名委員会が握っている。指名委員会に名を連ねる社外取締役が首を縦に振らなければ、ストリンガー氏の首を切ることはできない仕組みになっていた。建前上、指名委員会には、それだけの権限がある。

 産業界からは「経営責任を取ろうとしないストリンガーCEOの居座りを許した指名委員会とは名ばかりで、まったく機能していないのではないか」との痛烈な批判が起きた。ストリンガー氏の“お仲間”で指名委員会を固めたから、ストリンガー氏は経営責任を問われずに済んのだ。外国人の社外取締役は、ストリンガー氏を護衛する“親衛隊”と揶揄された。

 ソニーは12年3月期の連結決算で、過去最悪となる4566億円の最終赤字に陥った。ストリンガー氏は会長にとどまるつもりでいたが、巨額赤字の前に、さすがの指名委員会も続投を認めるわけにはいかなくなった。結果的に会長兼社長兼CEOを外れた。

 ストリンガー氏はゴーン氏にはなれなかったが、役員報酬だけはゴーンに倣った。11年3月期の役員報酬(ボーナス、ストックオプションを含む)の8億1650万円は、全上場会社のなかで、ゴーンに次いで第2位だった。高額報酬は、3期連続して赤字経営の“論功行賞”かと皮肉られた。

 ストリンガー氏がCEOを退任した12年6月の株主総会では、彼の巨額報酬がやり玉に挙がった。4期連続の赤字を垂れ流しながら4億4950万円の役員報酬を受け取っていたからだ。株主からは「ソニーの企業価値の毀損は、ストリンガー前CEOが進めた“賞味期限切れ”の戦略が原因だ」との批判が噴出した。株主総会で業績不振の原因を超円高や東日本大震災のせいにするなど、言い訳に終始したストリンガー氏は、株主から「資質のあるトップは外部環境のせいにはしない」と説教されるありさまだった。

 平井社長は、自分を大抜擢してくれたストリンガー氏に「心から感謝」しているのかもしれないが、何をもって「多大な貢献」をしたといえるのか。そう思っているのは、平井社長とその側近だけではないのか。ソニーのOBや現役の若手幹部は平井社長のコメントにあきれ、深く失望している。平井一夫(カズ)社長の前途は多難である。
(文=編集部)

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最終更新:2013/03/18 14:00
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