【坂本浩一】『仮面ライダー』『ウルトラマン』『スーパー戦隊』に新たな息吹を吹き込む男
#テレビ #特撮
──たかが「ヒーローもの」と侮るなかれ。自らスタントもこなす、この監督が撮る作品は、我々が子どもの頃に観たヒーローものとは何かが違う。親子揃って、観る者をアツくさせる特撮界の寵児の素性とは?
今、最も邦画界で熱い”アメリカ人監督”坂本浩一。我が国を代表する3大特撮ヒーロー『仮面ライダー』『ウルトラマン』『スーパー戦隊』のすべてのシリーズでメガホンを取った稀代の男である。
坂本は、これらに香港・ハリウッド映画並みのテンポとリズムのいいアクションを取り入れ、高い評価を得ている。例えば今冬公開の『仮面ライダー×仮面ライダー ウィザード&フォーゼ MOVIE大戦アルティメイタム』での主人公による追跡シーンは、香港アクションもかくやという大胆かつ緻密なカット割りと圧巻のスピード感で一気に魅せた。『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(09年)では、ミニチュア特撮を排し、グリーンバックによるCG合成に、ワイヤーアクションも交えて、縦横無尽なバトルを披露し、新たな方向性を提示した。そんな革新性が、子どもだけではなく、特撮ヒーローで育った大人にも支持されているのだ。
「僕の人生を変えた作品は、9歳の頃に観たジャッキー・チェンの『ドランクモンキー 酔拳』(78年)。それまでは、特撮ヒーローとかアニメが大好きだったんですけど、ジャッキーを知って、『自分で演じて、撮れる人間になりたい』と。そこから格闘技をやり始めて、まっすぐ来ちゃった感じです(笑)」
坂本少年は肉体を鍛えつつ、父親のビデオカメラで、親戚の子を起用しながら、映画を撮り始めた。
「高1の時、『君もジャッキー・チェンにならないか?』という文句で、倉田プロモーションが募集をかけていて。そこで、スタントマンとしての修行を始めたんです」
高校を卒業すると、アクションの仕事をしながら、映画制作を勉強したいと考えて渡米。ジェフ・ウィンコット主演の『アンダーカバー/炎の復讐』(91年)などにも出演する中、大きなチャンスがやってくる。『スーパー戦隊』をアメリカ放送用にリメイクし、人気を博していた『パワーレンジャー』シリーズにかかわることになったのだ。
「知人の紹介で『パワー~』のプロデューサーに会ったら、『日本風の戦隊の動きができる人がいないんだ』と言われ、僕自身がポーズを取ったり、立ち回りなどを披露したら、『それ! それが欲しいんだけど、アメリカにいないんだよ』と言われて」
それが縁で坂本は、同シリーズのスタント・コーディネイトに始まり、アクション監督、監督、プロデューサー、果ては製作総指揮まで務め、アメリカに骨を埋めるつもりで米国籍まで取った。
が、そんな坂本を、日 本の特撮界が放っておくはずがない。09年に『パワー~』シリーズが一時休止したことを機に、国内の要請に応えて、坂本は帰国、映画『大怪獣バトル~』を監督する。『仮面ライダーW』(10年)のテレビ版や劇場版の監督も務めた。
「まさか自分が子どもの頃に憧れていた『ウルトラマン』を撮ることができて、『次に、仮面ライダーを撮れちゃうの!?』という想いはありましたね」
さらに、『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年)、『仮面ライダーフォーゼ』(同)を監督。わずか3年で、3大ヒーローを制覇した。
香港アクション、そしてハリウッド映画技法を全身で吸収した坂本の体当たりともいうべき演出法は日本で開花した。現在、社会の第一線で活躍する、子育て世代と多感な時期の”共通体験”を持つことも、親子で楽しめる作品を生み出せる強みだ。そんな坂本の新たな挑戦が、現在OA中の『獣電戦隊キョウリュウジャー』である。
「今回は、僕らが子どもの頃に観て育った”戦隊のカッコ良さ”を再認識してもらう形で、決めポーズやセリフなどのお約束を省略せずにきちんと見せていこうと。昔のものを今風にアレンジして、どう子どもたちにアピールしていくか? というのがテーマです」
ヒーローたちと共に、坂本も進化を続けている。
(文/岩佐陽一)
坂本浩一(さかもと・こういち)
1970年、東京都生まれ。90年2月、『アンダーカバー』でアシスタント・アクション・コーディネイターとしてハリウッドデビュー。92年に倉田アクションクラブの同士と共に、スタントチーム「アルファスタント」を設立。監督としては、映画『大怪獣バトル~』ほか、『仮面ライダーW』のテレビ・映画・Vシネ、『仮面ライダー・フォーゼ』のテレビ・映画、テレビ『海賊戦隊ゴーカイジャー』などを手がける。4月13日からは、台・日合作の新作映画『トラベラーズ 次元警察』が公開される。
・東映
『獣電戦隊キョウリュウジャー』
太古の時代、宇宙の暗黒種、デーボスが地球を襲った。対して当時の地球の覇者の恐竜たちは、賢神トリンに機械の体を与えられ獣電竜となり、敵を封印した。だが時を越え現代、デーボスが復活し再び人々を襲い始めた。そこに立ち上がったのがトリンに選ばれし5人の若者だ。彼らはキョウリュウジャーとなり、恐竜の魂が宿る”獣電池”を駆使して、獣電竜と共に戦う! スーパー戦隊シリーズ第37弾。テレビ朝日系列/毎週日曜7時30分。
【「サイゾーpremium」では他にも特撮ヒーローの魅力に迫った記事が満載です!】
・『仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦』──夢の共演映画から考える、特撮モノの歴史と未来
・【ご当地ヒーローの特撮的真価】── “ご当地ヒーロー”は、イロモノか? ヒーローの新世代か?
・仮面ライダー出演中!【奥仲麻琴】女優開眼のPASSPO☆まこっちゃん、「朝ドラ目指します!」
■「サイゾーpremium」とは?
雑誌「サイゾー」のほぼ全記事が、
月額525円で読み放題!
(バックナンバー含む)
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事