閉塞化した世界を笑い飛ばす、常識破りの怪作! メタメタおかしい底抜け脱線ホラー『キャビン』
#映画 #パンドラ映画館
ヤリマン女のジュールス(アンナ・ハッチソン)。
彼女は自分の運命を知らない。
三池崇史監督の『悪の教典』(12)もそうだった。学校の先生=未成年の自分たちを守ってくれる存在、という固定観念に縛られている生徒から真っ先にサイコパス教師(伊藤英明)に処刑されてしまった。子どもたちに常識を教えるはずの学校が、殺戮の場となった。三池監督は「悪は滅び、正義が生き残る」という旧態依然としたドラマツルギーを、伊藤英明を遠隔操作することで粉々にブチ壊してみせた。正義が生き残るのではなく、生き残ったものが歴史を作っていくのだ。フィクションの世界だけの話ではない。常識を盲目的に受け入れるととんでもない事態に陥ることを、日本人は最近学んだばかりだ。“日本の原発は安全”という根拠のない常識をみんな鵜呑みにしたために、大惨事を招いてしまった。『キャビン』で若者たちの行動をモニターを通して高みの見物していた研究員風の男たちも、「自分たちは安全」という常識に腰掛けていたために尋常ではない恐怖を味わうはめになる。
次々と底が抜けていく、この常識破りなホラーコメディを手掛けたのはジョス・ウェドン(脚本)&ドリュー・ゴダード(監督)のコンビ。ジョス・ウェドンは金髪女子高生がヴァンパイア退治する学園ホラーシリーズ『吸血キラー 聖少女バフィー』(97年~03年)でカルト的人気を博し、アメコミヒーローたちを呉越同舟させた『アベンジャーズ』に抜擢された監督。ドリュー・ゴダードは怪獣王ゴジラを主観映像で追った『クローバーフィールド/HAKAISHA』(08)や無人島サバイバルミステリー『LOST』(04年~10年)の脚本家で、本作で監督デビューを飾った。ジャンル映画の中で異彩を放つオタクな2人組は、面白さを徹底追及するうちにいつの間にか映画界のお約束はおろか、地球の引力圏からさえも離脱してしまったようだ。
では、この底抜けホラーコメディのクライマックスはどーなるのか? らっきょうの皮をどんどん剥いていくうちに、自分のいる世界まで剥いてしまった、そんな感じ? さぁ、うらぶれた山小屋の扉を開けてみよう。アナタが大切にしていた常識ってヤツは、真っ先にぶっ殺されるだろう。
(文=長野辰次)
『キャビン』
監督/ドリュー・ゴダード 脚本/ジョス・ウェドン&ドリュー・ゴダード 出演/クリステン・コノリー、クリス・ヘムズワース、アンナ・ハッチソン、フラン・クランツ、ジェシー・ウィイアムズ、リチャード・ジェンキンス、ブラッドリー・ウィットフォード、ブライアン・ホワイト、エイミー・アッカー、あと某大物俳優がカメオ出演!
配給/クロックワークス R15 3月9日よりシネマサンシャイン池袋ほか全国ロードショー中
(C)2011 LIONS GATE FILMS INC.ALL RIGHTS RESERVED
<http://cabin-movie.jp>
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