「離婚には人生のすべてがある」『最高の離婚』の息ができないすれ違い
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第6話で灯里は、浮気を繰り返す諒に別れてほしいと懇願する。「今度浮気したら、俺のおちんちん切っていいから」という諒に、「じゃあ、今切る」とハサミを手にする。それを見ていた結夏は、灯里の悲しみはそんな程度の痛みでごまかせるものではない、と制止する。すると灯里は、こんなことを口にする。
「悲しいとかじゃないの。苦しいとかじゃないの。だって負けてるんだもん。『浮気はやめて』とか『嘘はやめて』とか。負けてる方は正しいことばっかり言って責めちゃうんだよ。正しいことしか言えなくなるんだよ。正しいことしか言えなくなると、自分がバカみたいに思えるんだよ」
同居生活を続けていた光生たちも、このまま一緒に住んでいるのはおかしい、と結夏が家を出て行く。その際、結夏は光生に宛てて長い手紙を書いた。
「最近どうもまたあなたのことを見てると、変にざわざわとするのです。私なりにそのざわざわを打ち消すとか、あるいは元に戻す努力を検討してみたのですがどちらもうまくいきませんでした」
「好きな人とは生活上気が合わない。気が合う人は好きになれない。私あなたの言うことやすることには何一つ同意できないけど、でも好きなんですね。愛情と生活はいつもぶつかって、何というかそれは私が生きる上で抱えるとても厄介な病なのです」
別れを決意し、別れるために相手に向き合った時、お互いの機微が見えてくる。だから、光生と結夏、灯里と諒、それぞれが再びお互いに思い合っていく。けれど、この手紙が結夏自らの手で破り捨てられ、光生に読まれることはないように、決してその関係は元には戻れない。一度壊れた関係は、どんなに愛情があらためて芽生えようとも、元通りにはならないのだ。
諒と別れ東京にいる意味を失った灯里は実家の青森に帰ろうと思い立つも、その感情の代替品として、青森行きの切符代と同じ値段の加湿器を買う。その帰り道、それまで拒絶していた光生とばったり会い、2人は昔付き合っていた当時よく行っていた定食屋に向かう。弱っている2人は「過去」を代替品にするように寂しさを紛らわし、灯里は光生に「とりあえず寝てみよう」と言うのだった。同じ頃、結夏は光生を思いながら酔いつぶれ、その勢いで一緒に呑んでいた諒とキスをしてしまう―――。
人と人はすれ違う。いや、すれ違うのは「人と人」だけではない。「自分と自分」との間でもすれ違うのだ。感情と言葉も、言葉と行動も一致しない。ことごとくすれ違っていくのだ。それを徹底的に描いているのが『最高の離婚』なのだ。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)
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