震災2年、行方不明者なお2,800人──【震災遺骨】砂浜に流れ着く命の欠片をめぐって
#東日本大震災
■命の欠片が流れ着く砂浜
こうしたボランティアグループが活動しているのは、宮城県南部の閖上地区が多い。では、最大の死者約3,000人を出した石巻市の現状はどうなっているのだろうか? 統計によると、現在でも448人が行方不明のままである。一方で隣接する東松島市は、死者1000人、行方不明者が29人。石巻市と東松島市は行政としては区切れているが、地理的には地続きのエリアである。
石巻・東松島エリアでの震災遺骨の探索には、難しい現実がのしかかってくる。実際に沿岸部を歩いてみればわかるが、このエリアは県の南部と違って砂浜が少ない。護岸用のテトラポットが置かれていたり、工業地帯や港として整備されているため、骨が流れ着いても陸地に打ち上げられないのだ。
東松島市の野蒜海岸は、一部は海水浴場になっているものの、漂流物も多く骨かどうかの判別がつくような状態ではない。また沿岸部は工事用車両のみならず漁業や工業などの物流が集中するエリアでもあり、一般の人が近寄れる場所とは言いがたい。
石巻市の隣の女川町や石巻の雄勝エリアは、リアス式海岸で入り組んだ独特の地形をしているため、遺骨が陸地に流れ着くとは限らない。
もちろん希望的な観測は必要だし、地道な作業を続けるのは大切なことだ。実際、そんな思いをくみとった人や震災をきっかけに縁をもった人たちの協力により、これまでに多数の震災遺骨が発見されている。また、浜辺で骨を見つけたとしても、それで終わりとはならない。発見される骨すべてが人間のものとは限らないからだ。家畜や野生動物、周辺の墓地から流出した骨の可能性もある。
こうした骨を識別するため、DNA鑑定が行われている。行方不明者の身元確認を実施しているのは警察だ。宮城県警察本部は現在では、「DNA型資料の提供依頼について」と題して、行方不明者の血縁者に鑑定用のサンプルの提出をホームページで呼びかけ続けている。それにもかかわらず、長時間海水に浸かっていた骨の欠片から鑑定に耐えうるだけのデータを抽出できないこともあり、DNAの鑑定作業は順調には進んでいない。それでも、ほかに本人確認の手段はないのが現実なのだ。
骨のひとつもない状態では、大切な人の「死」を受け入れることは到底できない。震災から2年の歳月が経過した現在でも、大切な人のもとに戻れない人たちがいる。「震災遺骨」という言葉がなくなる日が来たとき、本当の意味で被災地に生きるすべての人が納得して次のステップへと踏み出すことができるのだろう。
(取材・文=丸山佑介/犯罪ジャーナリスト http://ameblo.jp/maruyamagonzaresu/)
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