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一筋縄ではいかない展開に「やられた!」 オリバー・ストーン監督最新作『野蛮なやつら』

yabanmain.jpg(C)Universal Pictures 配給:東宝東和

 この週も続々と封切られる新作映画の中から、ホラー系の印象が強いサム・ライミ監督が初めて手がけたファンタジーと、社会派の姿勢を貫くオリバー・ストーン監督によるクライムストーリーの2本を紹介したい(いずれも3月8日公開)。


 『オズ はじまりの戦い』(2D/3D)は、名作児童文学『オズの魔法使い』に登場する魔法使いのオズが、いかにして誕生したのかを、オリジナル脚本でサム・ライミ監督が描くファンタジーアドベンチャー大作。サーカス一座の若き手品師オズ(ジェームズ・フランコ)は、身勝手で女たらしだが、いつか「偉大な男」になることを夢見ている。そんなある日、乗り込んだ気球が竜巻に飛ばされ、たどり着いた先は自分と同じ名前の魔法の国オズ。そこで伝説の偉大な魔法使いと勘違いされたオズは、エヴァノラ(レイチェル・ワイズ)とセオドラ(ミラ・クニス)の魔女姉妹から邪悪な魔女グリンダ(ミシェル・ウィリアムズ)を倒してほしいと頼まれる。魔女退治の冒険に出たオズだったが、出会ったグリンダの優しさと悲しみに触れ、エヴァノラの悪だくみに気づく。

 冒頭のサーカスの場面は白黒スタンダード画面で始まり、オズの国にたどり着くと世界が色づき広がって、カラーのワイド画面へと移行するなど、古典的名作『オズの魔法使』(39)へのオマージュを随所に盛り込んだ。『アリス・イン・ワンダーランド』(10)の主要な製作陣が再結集したが、視覚効果でバーチャルな背景に多く頼った前作よりもセットや小道具など現物を増やしたおかげで、自然でリアルな感覚が向上。アラサーで女盛りのウィリアムズとクニス、40代前半でいわゆる「美魔女」のワイズという、女優3人の美の競演が父親世代の観客層にもしっかりアピールしそう。厳しい試練を知恵と勇気と団結で克服すること、甘く切ない恋模様、そして映画愛に満ちたクライマックスの大仕掛けなど、子どもだけでなく大人の映画ファンも存分に楽しめる上質のエンタテインメントとなっている。

 もう1本の『野蛮なやつら SAVAGES』(R15+指定)は、米ベストセラー小説を原作に、『プラトーン』(86)と『7月4日に生まれて』(89)で2度アカデミー監督賞に輝いたオリバー・ストーン監督が映画化。カリフォルニアのビーチリゾートで共同生活を送る植物学者のベン(アーロン・ジョンソン)、元傭兵のチョン(テイラー・キッチュ)、2人の恋人オフィーリア(ブレイク・ライブリー)。3人は高品質なマリファナを栽培して事業化に成功し、優雅な暮らしを満喫していたが、やがて彼らを支配下に置こうと企むメキシコの麻薬組織がオフィーリアを拉致。女ボスのエレナ(サルマ・ハエック)と幹部ラド(ベニチオ・デル・トロ)らが仕切る巨大な組織に、ベンとチョンは勝ち目のない戦いを挑むが……。

 裏社会で繰り広げられる、実力行使に情報戦や心理戦も駆使したあの手この手の駆け引きがまず興味をそそる。ただし、主人公側のイマドキ若者チームと巨大麻薬組織との単純な抗争だけでなく、組織内で女ボスを出し抜こうとする幹部や、ジョン・トラボルタ扮する悪徳刑事が事態を複雑にすることで、がぜん面白みが増した。物語のナレーターでもあるオフィーリアが「信頼できない語り手」を自ら宣言することで、一筋縄ではいかないストーリー展開を予感させるが、期待通りに終盤、叙述上のトリックが仕掛けられている。早々に気づくか、種明かしの後に「やられた!」と感嘆するかは観客次第。イタズラっ子のようなストーン監督の眼差しを感じつつ、鑑賞後のえも言われぬ余韻を味わいたい。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

『オズ はじまりの戦い』作品情報
<http://eiga.com/movie/57264/>

『野蛮なやつら SAVAGES』作品情報
<http://eiga.com/movie/77248/>

最終更新:2013/03/08 21:00
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