震災後2年を経て見つめる、遺体安置所の光景『遺体~明日への十日間~』
#東日本大震災 #石井光太
「“死体”と“遺体”。意味は同じですが、全く違うものです。遺体安置所では、津波で流されてヘドロだらけで冷たくなって死後硬直している死体が足の踏み場もないくらいに床に置かれていました。それを遺体安置所で働く人たちが、一体一体きれいに洗って、丁寧に並べ、遺族を見つけ、納棺をして、火葬場に送り出すところまで行う。そうすると、死体が「遺体」になるんです」
(『遺体――震災、津波の果てに』(新潮社)の著者でノンフィクション作家・石井光太氏)――。
東日本大震災から2年がたとうとしている。東北地方を襲った未曾有の震災による死者・行方不明数は1万8,574名(2月27日現在)に上る。
震災のその後を扱うテレビや新聞報道が増える中、メディアが報じきることができなかった被災地の姿、遺体安置所を舞台にした映画『遺体~明日への十日間~』(http://www.reunion-movie.jp/)が封切られた。その公開を記念して、東京都港区のシナリオセンターで講演会(主催:Youlabo)が行われた。
講演会には、映画『遺体』の君塚良一監督、原作であり、震災ノンフィクションとしては最大級のベストセラーとなった『遺体――震災、津波の果てに』の著者・石井光太氏、同映画に出演した女優・小橋めぐみ氏が登壇。3人がそれぞれの『遺体』についての思いを語った。
映画『遺体』の舞台は、原作同様に岩手県釜石市の遺体安置所。釜石市は約1,100人の死者・行方不明者を出した。原作には「体育館の面積はバスケットボールのコート一面分。床に隙間なく敷かれたブルーシートの上に、遺体が所狭しと置かれている。毛布にくるまれた遺体、納体袋に入れられた遺体、ビニールシートに包まれた遺体など様々」といった壮絶な遺体安置所の光景が描かれている。
原作者の石井氏は次のように語る。
「遺体安置所が舞台というだけで、『どれだけ悲惨な描写がされているのか』『どれだけの悲しみが書かれているんだ』という悲劇に関心が寄せられますが、僕はそこが描きたいわけではなかった。僕はただ、遺族や遺体に優しく声をかける『人の言葉』や、必死になって遺族のもとへご遺体を返そうと思って働いている方々の『想い』が、どれだけ温かくて、強くて、そこで生きた人を支えたかを伝えたかった。死体が遺体になる過程の中で、どれだけ多くの人間が携わって、人間の尊厳を守り、遺族を支えたのか。そしてそこには人間の温かさや優しさ、勇気があったということを描きたかったんです」
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