自動改札機が「SF的スピード」だった時代『ひとり暮らしの東京事典 84年版』
#雑誌 #出版 #昼間たかしの「100人にしかわからない本千冊」
もちろん、当時と比べると値段は変化しているのだが、いまだに現存しているところが多い。どうも、学生が多い街で定食屋という商売はハズレがないようだ。もし、何か商売を始めるなら、選択肢に入れたほうがよいような気も。生活編の記述を見て気づくのは、現在よりも外食のチェーン化が進行していないこと。そして、スーパーは生活に密着しているが、コンビニはまだまだ珍しい存在であったことだ。セブン-イレブンの説明では「名前のとおり朝7時から夜11時まで営業だが、24時間営業の店も多い」と記されている。深夜営業の記述では博報堂の調査を紹介する形で午前零時に都内の街で買えるものを記しているのだが、これも目を見張る。これによれば、もっとも深夜の買い物が便利なのは池袋で、ワーストは上野。池袋では深夜でもコーラはもちろん、菓子パンでも生理用品でも、香典袋でも、英和辞典でも買うことができる。対して、上野ではコーラは買える物の、コンドームも菓子パンも売っていない。つまり当時、午前零時を過ぎた上野では、店がまったく営業していなかったというわけだ。いまやどこでもコンビニがあって、大抵のものは手に入る時代。なんて便利になったのだろうかと、感動せざるを得ないだろう。
■ロリコンが喜ぶ街は茗荷谷
もう一つ、本書の現代的な価値を感じるのが「キャンパスのある街」の紹介だ。東京を扱うテーマの本だけに、筆頭で紹介されるのはお茶の水。まずは、明治大学の紹介から始まって、写真は今のリバティータワーのところ……すなわち、ボロい建物があって某新左翼党派の看板があったところ。なんだって、こんな写真をセレクトしたのだろうか(その後、21世紀になって、とんでもない内ゲバがあった挙げ句に大学が暴力ガードマンを雇ったり、出資金を返還しないまま生協がなくなったりとか……予測できない未来だったろうな)。
それはともあれ、本文中で紹介されているけっこうな数の店が現在でも残っている。三省堂や東京堂など書店はともかく、ヴィクトリアなどのスポーツ用品店は当時から繁盛していたらしい。対して数を減らしているのが喫茶店。ここでは、レモン・ファイン・マロニエ・きゃんどるが紹介されているが、現在も喫茶店営業を続けているのは、きゃんどるだけ。学生街の喫茶店も今は昔になってしまった。
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