市販薬で効く育毛剤はリアップだけ? 人がハゲるワケとその有効策【前編】
#育毛
サイゾーのニュースサイト「Business Journal」の中から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けします。
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市販薬で効く育毛剤はリアップだけ? 人がハゲるワケとその有効策【前編】 – Business Journal(2月26日)
生化学分野に精通し、サイエンス・コミュニケーターとしても活動するほか、教育機関で教鞭も執っているへるどくたークラレ氏が、薬局で買える医薬品や健康・栄養食品を分析! 配合成分に照らし合わせて、大げさに喧伝されている薬や、本当に使えるものをピックアップする。
オイッス! 今回はわりと神妙なお題です。
「将来ハゲたらどうしよう」「最近抜け毛が日増しに……」
男なら誰もが一度は考えたことのある、大きな男の悩みの1つですネ。脱毛症が今回のテーマであります。わりと深刻に悩んでいる人もいるでしょう、親父がハゲているから俺も……とまだ若いうちから心配している人もいるでしょう。
メカニズムを知れば、何をすべきかが分かります、分かれば打てる手もあるものです。逆にきちんとした知識もなく、テレビや雑誌の言うがまま、なすがままだとお金だけ取られて取り返しの付かないところまで進行してしまう場合も少なくありません。
コンプレックス商売は、やり口がエグい業者も多く、モノがモノだけになかなか消費者庁などへも相談もできないということがあり、わりと悪徳業者がやりたい放題やっているという現状もあります。
そんな魔物達の食い物にならないためにも、ハゲと育毛剤に関する知識は大事なわけです。そこでまず、勇気を出して「そもそもどうして毛が抜ける?」というところから、ちょっと勉強しておきましょう。
●そもそもどうして毛は抜けるのか?
薄毛の起源は洞窟などの穴蔵に住んでいた我々の祖先。およそ2万年以上前にさかのぼります。当時はようやく言語らしい言語を開発し、洞窟に毛皮で作った衣類をまとい生活していたわけです。
その時代では、長生きしている=生存能力が高いとなり、老年の特徴である、はげ上がった頭が、成熟したオスのシグナルとしてセックスシンボルだったわけです。
それ故、若くても薄毛になる遺伝子が出てくると、率先して子孫を残すことができ人類は繁栄。その結果が現在の若くして脱毛症の始まる血統の元という説があります。
しかしながら、薄毛がモテ要素だったのはそれくらいの時代までで、人間が文明を持ち出すと同時に、薄毛の悩みと戦い始めます。記録では紀元前4世紀に、偉大な哲学者アリストテレスが育毛剤を使っていたという話もあるように、飽くなき育毛に関する探求は続けられてきました。
そして時代は移り変わり現代。様々な薬剤が開発され、薬局に行くと、「これぞ本命」「いやいや、ウチのメーカーこそ毛が生えます」「何を言ってるんだこの医薬用成分が……」などと宣伝文句が躍り狂い、何を買ってよいものか迷う始末。ミノキシジルのリアップが効果が高いらしい……と、いざ買おうと思うも、意外な程の値段の高さに戸惑い、まずは、もう少し安いモノを試してみてから……と、また迷ってしまう人も多いでしょう。
●金髪にするとハゲる! は間違いない
毛は成長、休止、脱毛というサイクルで、2~7年の成長期と何も起きない3週間の中間期を経て休止期に入り、休止期を迎えた毛は1~3カ月以内に脱毛します。これにより髪の毛が無限に伸びていかないようになっているのですが、個人差があり、人によってはギネスブックに載っているような超ロングヘアまで成長する人もいるようです。
毎日100本抜け100本育つというサイクルが普通なのですが、このヘアサイクルが乱れ、脱毛が育毛を上回り、生えてくる毛が軟毛(産毛)になってくると男性型脱毛症がすでに始まっているといえます。
「猫っ毛はハゲる」とは昔から都市伝説のようにいわれていますが、毛の根元、特に前髪の生え際に、3~4センチ以上の細くて長い猫の毛のような毛が生えているということは、すでにヘアサイクルに乱れが生じ始めているといえるので、男性型脱毛症がすでに始まっている目安となります(もちろん、それらは専門医の診断があって初めて決まるわけですが)。
こうした脱毛症の原因はストレス性の疾患を除き、頭皮のダメージなどによるものと遺伝性のものに大きく大別できます。よく言われるのが、金髪にするとハゲる……という話です。
金髪にする場合、日本人の髪の毛は非常に太く、芯まで色を抜くのは相当強い薬品を使わなければいけません。この薬品によるストレスで、毛の再生の速度が落ちることが知られており、特に金髪を連続した場合、遺伝性の脱毛症でなくても十数年のスパンでそのツケが回ってきます。ただ、多くの場合、頭皮の衛生や生活面の改善でその進行を食い止めることが可能です。
薬局で売られているものとしては、サイトプリンや塩化カルプロニウム、ケトコナゾールなどの成分を配合した育毛トニックなどが医薬部外品として売られています。
ただそれらは「育毛促進!!!」や「毛根の血流を!!!!」みたいな力強い宣伝をしていますが、その根拠となる研究は信頼性が微妙といわざるを得ないもので、「効果が無い」とは言えないまでも、気休め程度に考えておいたほうが良いとされています。
次に最も多い、遺伝性の脱毛症です。男性型脱毛症(AGA)といわれ、前者は、遺伝的な原因ではないので、医薬部外品の育毛トニックや衛生面や生活改善をするだけでは、ハゲの進行を遅らせる程度の効果しかなく食い止めることは難しいと言えます。
男性型脱毛症の原因は、頭皮の毛乳頭細胞内で男性ホルモンであるテストステロンが2型5アルファ還元酵素によってジヒドロテストステロンに変化、このジヒドロテストステロンの刺激をうけた母毛細胞が細胞自殺(アポトーシス)することで起こるというのが分かっています。
当然別の原因も考えられるのですが、このジヒドロテストステロンへの変化を標的にした薬剤は、高い効果を上げており、現在最もメジャーな治療法として評価されています。
●薬局薬で効果が期待できるのはリアップだけ
20代前半で猫っ毛が増え始めた……という初期段階の人は安いシャンプーではなく、美容院などで使われる良いシャンプーを使い、ドライヤーでしっかり乾かし、そして育毛トニックをつけることで進行を遅らせることができるかもしれない……というくらいで考えておくべきです。
はっきりしているのは、多くの医者が市販薬では塗布剤のミノキシジルしか医学的に「効果がある」と認めていないということです。
ミノキシジルを含んだ薬剤は現状、大正製薬のリアップだけとなります。壮絶なリアップのステマをしているような気がしますが(苦笑)、続けます。
ミノキシジルの発毛作用は、もともと血圧の薬である降圧剤の臨床試験の過程で、副作用によって患者に多毛が発現した事から研究が進められ開発されたもの。1980年に製薬会社のファイザー(当時はアップジョン)が外用発毛薬としてアメリカ食品医薬品局(FDA)に承認させました。日本では大正製薬がリアップとして全国の薬局で第1類医薬品(薬剤師が不在だと販売できない)として購入が可能。現在はより効果の高い5%配合のものが7~8千円で売られていますよね。
余談ですが、アメリカ国内でファイザーが扱っているロゲイン5%のモデルだと、同量で30ドル前後とおよそ半額なので、長期で使う場合は個人輸入のほうが安くつきます。育毛剤関連で個人輸入をするのはこの程度にしておいたほうが無難でしょう。
今回は薬局売りの育毛剤についてまとめましたが、次回は、テレビCMで「AGA! AGA!」と連呼する内服用育毛剤からゴリ押しの外科手術まで、その他の治療法について迫っていきましょう。
(文=へるどくたークラレ)
※本記事は、サイエンス・ライターがつづる化学コラムです。報道の見地から行っているものであり、再現性やその内容を保証するものではありません。一切の責任は編集部及び著者は負いかねます。また薬を服用する際は、医師や薬剤師にご相談ください。
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