いつもヘラヘラしていた変なヤツ『横道世之介』和製『フォレスト・ガンプ』を思わせる青春回顧録
#映画 #パンドラ映画館
東京の美人偏差値の高さに驚く。
流れに身を任せて生きる平凡な世之介だが、『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94)の主人公ガンプをどこか彷彿させる。ガンプはベトナム戦争や卓球世界選手権を経験し、ケネディ大統領やジョン・レノンら歴史上の著名人たちと次々に遭遇するが、世之介が遭遇するのはもっと身近な人たち。でも、そんな普通な人たちの人生が大きく変わる瞬間に世之介は立ち会うことになる。大学に入って最初に知り合った倉持は早々に大学を去ることになるが、彼が社会人としてスタートを切る記念すべき新居への引っ越しを手伝う。祥子とは故郷・長崎の夜の浜辺でいいムードになるが、初キスを決めようとした矢先にボートピープルの集団が上陸してくる。箱入り娘だった祥子にとって、この一件は衝撃だった。お金持ちのオヤジたちを転がしていた千春さんは、年下の世之介に真っすぐに慕われ、自分の中に意外と気のいいお姉さん気質の部分があることに気づく。世之介本人はまったく自覚がないが、倉持も祥子も千春さんも世之介と出会ったことで確実に人生が変わった。だから、世之介のことを思い出す度に、みんな胸の底から心がキューンとなってしまう。
本作を撮ったのは『このすばらしきせかい』(06)、『南極料理人』(09)で抜群のコメディセンスを披露した若手の沖田修一監督。1977年生まれの沖田監督は1980年代という時代性に強い思い入れはなかったものの、原作を読んで世之介のキャラクターに惹かれたそうだ。沖田監督いわく、「18~19歳の頃って、大学に進学してどこかのサークルに入って、誰か好きになって『ヤベー』みたいな感じで1年間が過ぎてしまうと思うんですよ(笑)。でも、そんな時間の過ごし方の中で、その後の人生が決まっていく。それぞれ人生のスタートラインに立つことになる。『横道世之介』ではそれぞれのキャラクターたちが16年後に自分の人生のスタートラインを振り返り、一緒にいた世之介のことを思い出す。世之介は確かにそこにいたんだと。何者でもない世之介の存在が、とても意味のあることのように思えるんですよね」。
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