テレビ界の“明日のジョー”『5時に夢中!』名物Pが明かす、お化け番組の作り方
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大川 逆手に取って……って聞こえはいいですけど、結局はやれることが限られるので、そこを極端にしていっただけです。予算もそうですけど、人もいない。そうなると、この労力をどう効率的に回すか。だって帯番組なのに、当初はスタッフが5人だったんですよ(笑)。本来はできることから始まる発想なんてダメなんでしょうけど、実現不可能なことで会議しても、僕らの場合はしょうがないから。スタッフを育てながら、番組を作っていくしかない。だけど、いい感じに仕上がったところで、みんな辞めてっちゃう。もっとカネのイイところに(笑)。今は徐々に体制が整ってきて、スタッフも増えてきて、これからもっと面白いことができるかな~とは思ってるんですけどね。
――荒波の中で船出をした『5時に夢中!』が、現在ではすっかりMXの看板番組に。ヒットの理由は、どんなところにあるのでしょうか?
大川 何が理由でヒットしたかなんて分かりませんよ。そんなの分かってたら、世の中のすべての企画は大成功しているはず。ただ、MXは数字だけを評価する会社でもないので、そうなると逆に何を信じていいかが難しい。たまたま僕が最初の異動でADをやっていた時、まだ売れる前のTKOさんがMCだったんですね。それが死ぬほど面白かった。安田大サーカスさんとか、小島よしおくんとかも出ていました。彼らがみんな売れてくれたことで、自分の目線に自信が持てたことは確かです。僕が面白いと思ったことは、世の中も面白いと思ってくれる。勝手な自信ですけど。
――マツコさんを筆頭に、女性コメンテーターさんは皆さん売れっ子になっていますし。人選が絶妙だと思います
大川 この番組のメイン視聴者層、子育てしながら見ている主婦の人っていうのは、昔ながらの“幸せをつかんだ人”じゃないですか。家庭もあって、子どももいて。ただ、そういう人たちが本当に幸せかどうかは誰も分からない。だから、結婚や出産を選んだ主婦とは真逆な選択をして、なおかつ幸せに生きていそうな人たちを並べて、違う価値観を視聴者たちにぶつけてみたいなっていうのはありましたね。「温かな家庭=女性の幸せ」という画一的な価値観に対しても、一石を投じたいなと。まぁ、後付けですけどね(笑)。僕は自分の母親を見て、そう思っていたんです。幸せの条件は整っているんですけど、まったく幸せそうに見えなかった。本当はもっとやりたいことがあったんじゃないか、子どものために我慢しているんじゃないかっていうのは、なんとなく子どもの頃から思ってたんですよね。
――主婦のガス抜きという側面もあると。
大川 そうそう。誰だって一歩間違えれば、こういう人生だったかもしれない。志麻子さんなんか毎週ヤリマン自慢してますけど、家庭の主婦だってチャンスがあったら覗いてみたい世界なんじゃないですか? あと歴代の男性司会者がボロクソに叩かれるっていうのも、世の主婦たちにとっては代弁なんでしょう。ダンナに対するね。溜飲が下がるらしいんです。
――個人的に思い入れのある企画は?
大川 「おママの花道」(※註)ですね。女性の人生って、男には計り知れないところじゃないですか。僕は男子校で、しかも全寮制で、大学まで野球やってて、めちゃくちゃ男尊女卑の世界で生きてきました。だけど、知れば知るほど「女ってスゲーぞ!」と。スナックのママというのはその象徴みたいな人たちで、それこそ圧倒的な現実を生きている。離婚したとか、借金背負わされたとか。男だったら自殺するかもしれないなっていうことを、淡々と生きちゃうんですよね。その凄みみたいなものを見せたいっていうのが「おママ」です。
――予定調和なき世界というのが『5時に夢中!』の大きな魅力だと思いますが、大川さんの中で「言論の自由」のボーダーラインは、どのように設定しているのですか?
大川 そうですね、人格を貶めるようなことですかね。個人攻撃のような。皆さん、そんなこと言わないですけど。「好き」とか「嫌い」とか言う分には個人の自由ですからいいんですけど、「アイツは本当は○○だ」のような、裏の取れない話はダメかなとは思います。新聞社から頂いた情報はあくまでも入り口であり、コメンテーターさんにはどれだけ脱線してもらっても構いません。皆さんの妄想や世界観でしゃべってもらう分には、いくらでも。ただ、出演者さんは、ほとんど悪口は言ってないんです。人によってはそう聞こえるかもしれないけど、基本的には自虐。「私はこう思う」ってこと自体を咎める理由は何もないし、それがまったく言えなくなっちゃう世の中だったら本当に怖いと思いますしね。普通の人なら記事そのものを受け入れますけど、出演者の方々はその先を見ていたり、まったく見方が違ったりとか、視点が本当に独特だから、何年やっても飽きないのかなと思います。
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