美観地区だけじゃない──ビミョーなお楽しみスポット満載だった町・倉敷
だが新倉敷駅は、地名は「倉敷市玉島爪崎」となっているものの、港町として栄えた旧市街とは随分離れている。この新倉敷駅は、新幹線が開業する1975年までは玉島駅と呼ばれていたそうだが、もう、そのことを記憶している人も少ない。
旧市街地まではバスで10分ほど。しかし、バス停の前で筆者は愕然とした。次のバスは1時間10分後! 玉島の市街地へ向かうバスは、両備バスと井笠バスカンパニーの二つ。井笠バスカンパニーは、昨年、破産による事業停止で話題となった井笠鉄道バスの受け皿だ。もはや、バスを利用するのは高校生と老人くらいになってしまい、運行すればするほど赤字がかさんでいった結果の破産……日中とはいえ、この本数の少なさに「よほど乗る人が少ないのだ」と実感した。
でも、チェーン店と住宅地しかない住宅地を散策した後、ようやくやってきたバスには、もっと驚いた。先にやって来たのは井笠バスカンパニーのバス。一歩バスに足を踏み入れて、なにかのはずみでタイムスリップしてしまったのかと、思った。
バスの床が木でできていたのだ。しかも、ものすごく掃除が行き届いておらず、ホコリや砂が溜まって、リアリズムたっぷりのレトロ加減。座席の背面には「おっぱいぼいんぼい~ん」とか、落書きもそのまま。「田舎のバスはおんぼろ車~」という昔の流行歌が似合うほど、田舎じゃないと思うのだが……(と、そのバスに海外旅行帰りとおぼしき、大きなスーツケースを持って乗り込んできた若い女性がいたのも驚き)。
さて、そんなバスに揺られて10分ほどでたどり着いたのは玉島中央町。玉島は良寛ゆかりの名刹・円通寺で知られる町だが、近年はレトロな街並みで売り出し中だ(そう考えると、あのレトロなバスも合点がいく)。
今頃、跡形もなくなっているんだろうなあ。
その町の中心部にあるのが映画『ALWAYS三丁目の夕日』のロケ地にもなった、1948年建造の港水門である。さっそく、水門の方へ行ってみると、事前リサーチと違う姿がそこにはあった。水門の半分あまりが消滅しているのだ。聞けば、県道の改良工事で取り壊すことになったのだとか。レトロな街並みで売り出しているというのに、目玉になりそうなスポットを取り壊すとは、玉島の人々は、どこへ行こうとしているのか?
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