美観地区だけじゃない──ビミョーなお楽しみスポット満載だった町・倉敷
気を取り直して改札をくぐると、やってきたのはディーゼルカー。平日の日中だが、乗客はそれなりにいる。この先、ワクワクするような大工場が連なる車窓の風景現れるのかと期待していたが、まったく違う。
ずーっと続くのは住宅地ばっかり。終点一つ前の水島駅を過ぎると、ようやく工場群が見えてくる……ほんのちょっとだけ。なんとも期待はずれなまま、汽車は無情にも終点・三菱自工前駅に到着したのである。
降りたのは筆者のほかは、工場に用がありそうなサラリーマンが数人だけ。駅名の通り、駅の前には三菱自動車の工場が。あとは何もない。店も民家もなく、ただただ工場があるばかり。しばらく、折り返しの汽車もやってこないので、一つ手前の水島駅まで歩くことにしたのだが、途中、人に出会ったのはわずかに3人だけ。工場は絶賛稼働しているようだが、中を見ることもできず、ただ閑散とした道路が続いているだけなのだ。
筆者は、こうした旅行の時には、極力同じ路線を折り返すのを避けることにしている。なので、帰りは鉄道以外で別の場所に向かう手段を探してみた。きっと、バス路線はあるだろう。そう思って大きな道沿いを歩いていたら、バス停はあった。確かにそこはバス停なのだが、バスはやってこなかった。なぜなら、バス停には「バス路線廃止」のお知らせが貼り付けてあったのだ。いまやこのバス停は、児島ボート(競艇)開催日の臨時バスのためだけに使われているのだ。途方に暮れながら水島駅までたどり着いたが、やっぱり水島駅からのバスも廃止されていたのだった……。おまけに、この水島駅も駅前にコンビニすら見当たらない。遠くには工場群、周囲には住宅。こんな何もない風景を味わえる場所も、国内ではそうそうないのではなかろうか。
■レトロというか、リアリズムすぎる町・玉島
そんな、うらぶれた風景を見せる場所が、倉敷市にはもう一カ所。水島と高梁川を挟んだ対岸にある、玉島地区がそれだ。玉島は、もとは倉敷市とは別に玉島市を形成していた江戸時代からの港町で、鉄道唱歌にも「金刀比羅宮に参るには 玉島港より汽船あり」と歌われている。しかし、対岸にもかかわらず、公共交通機関を使って玉島へたどり着くのは、一苦労だ。
まず、水島臨海鉄道で倉敷まで折り返し、JRで福山方面へ二駅目。新幹線停車駅の新倉敷駅が、玉島地区の中心となる鉄道駅だ。
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