朝日に読売…消費増税に賛成し、自らは平然と軽減税率を求める大手新聞社の醜態
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朝日に読売…消費増税に賛成し、自らは平然と軽減税率を求める大手新聞社の醜態 – Business Journal(2月5日)
会長を務める朝日新聞東京本社。
(「Wikipedia」より)
昨年8月に法案が成立し、現行5%の消費税率は、2014年4月に8%、15年10月には10%に引き上げられる見通しだ。大手新聞各社は消費増税に賛成しながら、新聞の購入金額には軽減税率を適用するよう主張し続けている。
軽減税率とは、本来の標準税率より低い税率のこと。新聞社は「自分たちだけは税金を安くしろ」と言っているわけである。例えば、読売新聞は1月9日の社説でこう書いている。
「税制改正では、生活必需品などの消費税率を低く抑える軽減税率の導入を明確に打ち出す必要がある。(中略)公明党が提示している2段階の導入論は、検討に値する。公明党前代表の太田国土交通相は『消費税率を8%に引き上げる段階で軽減税率の対象をコメ、みそ、しょうゆ、新聞などに限定し、10%への引き上げ時に対象を拡大する』との案を示した」
公明党の太田氏がそういう発言をしたのは事実だが、「コメ、みそ、しょうゆ、新聞」という並びには、少し違和感を感じる。
他紙も軒並み同じ論調だ。産経新聞の1月8日社説のタイトルは『軽減税率 8%からの導入決断せよ』だった。
「新聞に対する税率も、ドイツでは食料品と同じ7%だ。(中略)国民の『知る権利』にかかわる言論の多様性を確保し、活字文化を守るために『新聞への課税は慎重であるべきだ』という伝統による。知識への課税は活字文化を損なう恐れがあり、日本もこうした欧州の例に学んでほしい」
●経営への影響大きい毎日は必死?
毎日新聞も昨年12月、総選挙の投開票日を5日後に控えた11日、「軽減税率で自公を評価」というタイトルの社説を掲載した。税制面で新聞業界を優遇してくれそうな政党を支持しようという露骨なものだ。リベラルで庶民的という定評があった毎日でさえ、このありさまである。しかも、毎日が新聞への軽減税率適用を求めた社説やコラムを掲げたのは、この日だけではない。
『一体改革は必要だ 欧州の実例に学ぼう』(2011年12月15日付社説)
『一体改革 与野党で問題点を洗え』(2012年1月12日付社説)
『「大人の自民党」が見たい』(2012年4月12日付「熱血!与良政談」与良正男)
『消費増税法案 複数税率の検討を』(2012年4月25日付社説)
『ケーキ? ビスケット?』(2012年4月27日付「発信箱」福本容子)
これだけ度重なると、悪質としか言いようがない。全国紙とはいえ、毎日の朝刊部数は約340万部といわれ、朝日と読売には大きく水をあけられている。増税分を転嫁できず自社で負担すれば、他紙よりも経営的に大きなダメージを受けると見られる。
さて、朝日新聞はどうかと言えば、これまでのところ、他紙のような露骨な主張はしていない。『消費増税と低所得層ー軽減税率は将来の課題に』(2012年5月20日付社説)では軽減税率を客観的に論じながらも新聞への適用には触れていない。しかし、素直に褒められたものではなかった。
●ロビー活動にご熱心な朝日新聞社長
日本新聞協会の会長を務める朝日新聞の秋山耿太郎会長は昨年10月、第65回新聞大会で「知識課税の強化は活字文化の衰退を招く」とあいさつし、「経営を直撃する消費税の大波をどう乗り越えていくべきか。進むべき道を探り出していかねばならない」と述べた。軽減税率導入に向けた新聞協会のロビー活動は、昨年3月と6月にも大々的に行われており、そのたびに秋山会長が出席している。「業界の総意」という隠れ蓑を使って、朝日新聞としての本音を抑えていると考えるのは、勘ぐりすぎだろうか。それとも、朝日新聞社では、経営者たる会長の意見と論説含む編集陣の意見はまったく違うということなのか。
●読売は財務省の天下り先?
みんなの党の山内康一衆院議員は2011年6月19日のブログで、「財務省主導の増税路線にマスコミも乗っかっています」「消費税が上がっても大手新聞社は困らないカラクリがあります」と書いている。その中身として「大手新聞は『新聞購読料は消費税対象外』という主張をし、その主張に財務省はOKを出している様子」と暴露している。もしこれが本当ならば、財務省と大手マスコミは蜜月状態といえよう。
実際、2010年11月には丹呉泰健氏が読売新聞の社外監査役に就任しているが、丹呉氏は09年の政権交代直前に財務事務次官となり、10年7月に退任した人物だ。読売が同氏の財務省に対する影響力を見込んでの人事であると見るのは普通だ。
●国から守られ続けてきた大手新聞社
そもそも、自由競争の業界なのに、大手新聞ほど国から守られて生き延びている民間企業はない。古くは国有地を安く払い下げてもらい本社を建て、戦後はテレビ局を開設して電波利権まで手中に収めてきた。長らく官庁丸抱えの記者クラブで一次情報を独占し、役人提供のリリースに少し手を加えただけの原稿で紙面を埋めてきた。そして、現在も再販制度で新聞価格を高く維持している。記者出身の素人が経営者になっても、会社を存続できるわけである。
各社は新聞を軽減税率の対象にすべき理由として「活字文化の存続」や「知る権利」などを挙げているが、今や新聞社だけが情報取得手段の担い手ではない。インターネットの普及で、役所や企業も独自に情報を発信しており、記者会見にはフリーの記者も参加できるケースが増えた。フリージャーナリストの活動はネットによって飛躍的な広がりを見せ、情報は多様化している。中には新聞社の社説よりもはるかに説得力のあるものも多い。また、ネット中継や動画の進歩によって、速報性でもネットメディアは力を発揮している。新聞が軽減税率の対象になるとすれば、それは新聞社の既得権以外の何ものでもない。
さて、自民党と公明党は1月23日に与党税制協議会を開き、軽減税率は「消費税率10%への引き上げ時に導入を目指す」ことで合意した。これで、今回は新聞業界の要望が入れられる見込みはなくなったが、今後も新聞業界は恥も外聞もなくロビー活動を展開してくるだろう。彼らの動きに、目を光らせておかねばなるまい。
(文=横山渉/ジャーナリスト)
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