レアな映像満載!『NHK×日テレ 60番勝負』が見せたテレビの底力
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そして、2日にわたっての通し企画「24時間ドラマ」。これは、その場で決められたジャンルに沿って、24時間で5分ドラマを作るというもの。ディレクター以外(日テレのほうはディレクターもその場で言い渡された)ほぼ何も決まっていない状態でドラマ制作がスタートし、その模様をWebで中継。そして、完成させたドラマを2日目の放送で発表するというものだった。こちらは、自由度と柔軟性の優れた日テレが底力を見せつけた。
奇しくもこの番組の1日目に放送された『テレビのチカラ』(NHK総合)で、萩本欽一はテレビについて「あさま山荘事件」(72年)を例に挙げて分析していた。この事件は各局が生中継をし、NHK、民放を合わせた視聴率は89.7%に達した。視聴者は、窓しか映っていない画面に釘付けになったのだ。それを見た欽ちゃんは、テレビの特性を発見する。「テレビって『何かが起きてる』じゃない、『何かが起こりそうだ』でみんなが集まるんだ」と。まさに、『NHK×日テレ 60番勝負』は、そんな「何かが起こりそうだ」というワクワク感でいっぱいだった。
そして、「何か」が実際に起こる。
番組の終盤、突然、明石家さんまがスタジオに登場したのだ。そしてCMが入らないNHKで30分近くノンストップでしゃべり続け、笑わせ続けた。
さんまのNHK出演は実に28年ぶり。さんまは『クイズ面白ゼミナール』(81~88年)の番組内で、退屈そうにあくびをしていたのが視聴者の逆鱗に触れ、新聞の投書欄を賑わせて降板。その後、朝ドラ『澪つくし』(85年)に出演して以来の登場だった。そんなサプライズに「今、テレビご覧になってる方は、本当にビックリされていると思う」と興奮するアナウンサーの言葉を遮り、さんまは言う。
「いや、テレビの前の人はそうビックリしてないやろ、テレビやから」
その言葉は何気なく発せられたが、さんまのテレビに対する哲学とプライドが詰まっているように感じられた。そう、テレビは「何かが起こりそうだ」を映すメディアであるのと同時に、何が起きても不思議ではない「何でも起こり得る」メディアなのだ。
テレビがほかのエンタテインメントと異なるのは、それが「日常」と地続きなことだ。「日常」の中に、突如として「非日常」の興奮が紛れ込む。そして見たことがない「何か」が起こったカタルシスは、すぐに当たり前の「日常」の風景に変わる。だとしたら、それは僕らが生きていくしかない「日常」にも、ワクワクする「何か」が起こり得る証明にほかならない。
「非日常」の興奮と多幸感は、いつだって「日常」のすぐそばに存在する。そんなことを思い起こさせてくれることこそ、テレビの力だ。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)
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