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『性愛空間の文化史』著者・金益見インタビュー

「なぜ、お城型のラブホテルは消えたのか?」目からウロコの“エッチ空間”の歴史学

――最近の若い人はあまりホテルを利用しなくなり、ラブホテル業界自体も、70年代に比べるとさほど儲からなくなっていると聞きます。これは、自宅に自室を持てるようになったという日本の住宅事情の変化が大きいのでしょうか?

 住宅事情ももちろんありますが、恋愛事情が変化したこともあります。ひとつには、草食系男子に代表されるように、あまりセックスをしないカップルが増えた。また、漫画喫茶やカラオケボックスのように個室空間や遊ぶ方法も増え、しかも安く遊べるようになった。90年代までのラブホテルは、セックス以外にもカラオケを楽しんだりと、セックス「も」できる場所でした。現在の若い人にとって個室空間は増えましたが、漫画喫茶やカラオケボックスでセックスをするわけにはいかない。ですから、逆にラブホテルはセックス「を」する場所になっているのではないでしょうか。

――数社の建築会社がホテルを造っているということですが、地域差はあるのでしょうか?

 私は北海道と沖縄には取材に行ったことがないのですが、それ以外の地域では地域差というより、都市部か田舎かという違いが大きいですね。都市部では、ホテルのフロントで対面するところもありますが、田舎では絶対に対面では難しい。田舎では、隣近所との付き合いが密ですから。

――海外には、日本と同じようなラブホテルはあるのでしょうか?

 あるにはありますが、日本のような形態で造っても、同じようには利用されていません。例えば、韓国にも日本のラブホテルと外観やフロントが同じようなホテルがあります。ですが、女性同士の利用や、ビジネスホテル代わりに利用されています。また、フランスには、日本のラブホテルのようなセクシャルな感じを取り入れた高級なシティーホテルのスイートルームがあります。

――本書には、昔のホテルの新聞広告などの資料も多数掲載されていますね。

 資料集めには大変苦労しました。ただ、ある教授に言われた言葉に救われました。「君の研究をキワモノ扱いする人もいる。ラブホテルを研究したところで、世間にどう評価されるかはわからない。でも、君しかラブホテルの研究をしていないから意味がある。この研究の資料を残しておかないと、数百年後の人たちは、今の時代のラブホテルのことがわからない。100年後の人を読者に想定しなさい」。こう言われ、100年後の人たちのことを考えて頑張れましたね。

――出版後の反響はどうですか?

 前著の『ラブホテル進化論』はとにかく話題性はありましたが、本書は著名な学者さんが書評を書いてくださったりと、わりと堅いところから評価されています。通史としてまとめたので、学問として評価されたのかなと思います。
(構成=本多カツヒロ)

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●きむ・いっきょん
1979年大阪府生まれ。神戸学院大学大学院人間文化学研究科地域文化論専攻博士後期課程修了。現在、神戸学院大学非常勤講師、大手前大学非常勤講師を務める。著書に『ラブホテル進化論』(文藝春秋)、共著に『サブカルで読むセクシュアリティー欲望を加速させる装置と流通』『恋愛のアーキテクチャ』(共に青弓社)がある。

最終更新:2013/02/06 16:00
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