ねたみ・そねみ・因根が渦巻く、“大都会岡山”の実態『これでいいのか岡山県』
#本
「かつて、岡山県一帯には大和朝廷に匹敵する勢力を持つ吉備国が栄えていました。しかし、古墳時代に吉備国は大和朝廷に敗北し、衰退しました。以来、岡山県は決して一番になったことがない。それでも、内部では自分たちが一番だと信じ、ほかの地域の人を見下しています。いや、地域だけじゃない。たいていの岡山県民は、互いに“自分が一番スゴイんだ!”と思っているんです」
自分が一番だと思っているから、目立つのも当然(いや、目立とうと思っているのではなく、結果的に目立ってしまったのかも)。ゆえに、ほかの土地で成功する岡山出身者には、ナンバーワンよりもオンリーワン系の人が多いハズだと、昼間氏は語る。
そんな素晴らしい土地なら、なぜわざわざ東京に出てくる必要があったのか? こんな素朴な質問をぶつけたところ、キレられた。
「学歴差別がひどいんじゃ!」
本書の中でも記されているが、岡山県の高校は公立優位。象徴的な事例として「普通科」という言葉は、県内のエリート校を指すもの。偏差値の低い高校の普通科に通う生徒が「普通科に通っている」と言うと、「何をいよーんなら、あんごうが」とバカにされるんだとか。30歳を回って、高校時代のことを怒るなんて……と思っていたら昼間氏は続ける。
「だいたい都会で成功する岡山出身者は、岡山に対して恨みや怒りを秘めている。だからこそ、成功できる……と漠然と思っていたのですが、今回さまざまな文献を読んでいると、岡山で“郷土の偉人”とされる人があまり岡山に帰ることはなかったとか、一切、岡山には触れなかったという事例が多々ある。故郷に対する複雑な思いも、岡山出身者が成功する原動力といえるでしょう」
うーん、ますます岡山県の謎が深まるばかり。発言とは別に執筆の際には、かなり論理的思考をしたらしく、本書では岡山県独特の複雑な県民性もきちんと分析されている。
この後、火がついたのか、とてもここでは書けないほど岡山県に対する批判を語りまくった昼間氏。最後に、一つくらい自慢することはないのか? と聞いたところ、
「食べ物がうまいんじゃ!」
と、語り出した。
「本の中でも記していますが、ラーメンは岡山県が最もおいしい。東京では半ば当たり前になった、ドヤ顔で腕まくりしたような店主のいる店なんて皆無なのが素晴らしい。そして、岡山の食の至高は岡山ずしです。どんなに高級な材料を揃えたとしても、岡山県産の食材でなくては、岡山ずしの味にならない。これよりうまいものを、私は食べたことがありません」
この後、岡山ずしの材料として「雄町の米」だのなんだのを、延々と語り続けた昼間氏。珍妙な岡山県に住む人々と土地の実情が、本書では次々と明らかにされている。
いずれにせよ、酸いも甘いも知る出身者ならではの容赦なき記述。“大都会”岡山の実態を暴く一冊なのは間違いない。
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