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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > メディアが報じない北朝鮮の日常
写真集『隣人。38度線の北』発売記念インタビュー

違和感ではなく、共感を拾い集めたい――メディアが報じない「北朝鮮の日常」

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初沢 案内人の目を盗んで撮影しようとする記者が多く、彼らもメディアの人間に対しては警戒心を働かせています。僕の場合、彼らと信頼関係を築くことで、少しずつ撮影させてもらえる範囲を広げていきました。

――北朝鮮の案内人と信頼関係を築く……一筋縄ではいかなそうですね。

初沢 いえ、とことん正直に接しただけです。ストレートに自分の気持ちを伝え、「なんでこうなんですか?」と文句も言います。拉致問題やミサイル発射の話などもしました。そうやって、時間をかけて信頼を獲得することで、撮らせてくれる範囲を広げていったんです。また、撮影した写真はすべて見せました。彼らにとっては、あまり国外に見せたくない浮浪児の写真などもありましたが、消してくれという指示はありませんでしたね。向こうも(消してくれと)言うか言わないか迷いながら、結局言わなかったようです。

――信頼を得ることで、自由を獲得したということですね。

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初沢 完全な自由というわけではなく、軍事施設などの本当にマズい場所は初めから行くことすらできません。ただ、地方部を含め、自分の納得のいく写真を撮ることはできました。

 僕の発表の方法によっては、案内人たちが上層部から「なんでこんな写真を許可したのか」と咎められ、職を失ったり、それ以上の事態に発展する可能性もある。それでも「写真を消せ」と言わなかったのは、僕が悪意なく伝えてくれることを信じてくれたからでしょう。実際、朝鮮総連の人も、この写真集を見て「よくここまで撮らせてもらったね」と驚いていました。

――案内人としても、ニュートラルな北朝鮮の姿を伝えたいという気持ちがあるのでしょうか?

初沢 日本語を学び、日々日本人に接している案内人たちは、基本的に親日家ばかり。彼らこそ、日朝国交正常化を本当に望んでいる人たちなんです。案内人の一人である金さんは、30年前に2週間日本を旅したことがあるそうです。90年代に入って日本に来ることができなくなってしまいましたが、30年前の思い出を大切にしていました。ニュートラルな視点で北朝鮮の生活が伝われば、何か変わってくれるんじゃないかという期待はあるでしょうね。

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――3年間にわたった4回の取材の中で、北朝鮮の変化はあったのでしょうか?

初沢 内情はわかりませんが、平壌は経済発展をしているような変化を遂げています。高層マンションが数多く建設されていますね。

――北朝鮮にタワーマンション!?

初沢 ただ、停電になると30階まで歩いて上がらなければならないそうです(笑)。あんなに見栄っ張りの国なのに、平壌でも普通に停電します。

――そういった詳細な情報は、実際に訪れた初沢さんならではですね。本書巻末に掲載された文章にも書かれていた「違和感ではなく共感を拾い集める」という言葉が印象的でした。

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