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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.207

“明るい不登校児”のガラパゴスな団地ライフ! 中村義洋監督の箱庭映画『みなさん、さようなら』

minasan_sayonara01.jpg「一生、団地で過ごす」と決めた悟(濱田岳)は仕事も恋人(倉科カナ)も
団地内で手に入れた。果たして悟の“ひとり鎖国令”は可能なのか。

 団地を舞台にした映画が続々と公開されている。タナダユキ監督の『ふがいない僕は空を見た』(12)では団地から抜け出すことができない高校生男女の切ない友情が描かれた。イギリスのSFコメディ『アタック・ザ・ブロック』(11)では団地を徘徊する不良少年たちが団地育ちの絆で侵略エイリアンを迎撃した。インドネシア発の格闘映画『ザ・レイド』(11)やスタローン主演のSF映画のリメイク『ジャッジ・ドレッド』(2月16日公開)は低所得者向け賃貸マンションで壮絶アクションが繰り広げられる。そんな数ある団地映画の中で真打ち登場と言えるのが、中村義洋監督の『みなさん、さようなら』だ。『アヒルと鴨のコインロッカー』(06)、『ジャージの二人』(08)、『チーム・バチスタの栄光』(08)の中村監督(1970年生まれ)が、同世代の作家・久保寺健彦(1969年生まれ)の同名小説を限りなく忠実に映画化。団地から一歩も出ないで一生を過ごすことを決意した主人公の青春の日々が描かれる。中村作品の常連俳優・濱田岳が年齢不詳な童顔を活かして12歳から30歳までをひとりで演じているのも見どころだ。

 悟(濱田岳)は前向きな引きこもりだ。小学校の卒業以来、母親のひーさん(大塚寧々)と暮らすマンモス団地から一度も外へ出ていない。団地内には小さいながらも商店街があり、郵便局に保育園もある。団地外にある中学校には通わずに、毎朝ラジオ講座を聴きながら独学を続けている。団地内の公園でのトレーニングも欠かせない。団地内商店街にあるケーキ屋「タイジロンヌ」には週一度は通い、15歳になったら働かせてほしいと根回しに励んでいる。小学校時代の同級生たちが中学校から戻ってくると、しばし談笑して友情をキープしている。悟の登校を促しに来た中学校の教師(安藤玉恵)からは「世界が狭すぎるッ」となじられるが、悟は堂々と言い返す。「俺は決めたんだ。団地の中だけで生きていく!」と。

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