「おしっこ高価買い取り中」のチラシを配って逮捕!?『可笑しなヘンタイ図鑑』
#本
先日、友人宅に侵入した下着ドロボーが逮捕された。犯人宅からは、彼女のものを含め、合計500枚の下着が発見。警察から「下着、お返ししますか?」と尋ねられたものの、「気持ち悪いからいらない!」と即拒否したという。それを聞いて、500枚という途方もない数と、盗まれた下着が戻ってくるという事実に思わず笑ってしまった。
だが、今回紹介する『可笑しなヘンタイ図鑑』(宝島社)に登場するのは、この下着ドロボーのような、いわゆる“正統派”のヘンタイではない。「えっ、なんでこんなものを盗んだの?」「んんっ、どうしてこんな行動を?」と、大量のハテナが頭に浮かばざるを得ない、究極のヘンタイさんばかり80人が大集合。
例えば、自作チラシを配り卑猥な勧誘を行う「放尿キャッチ」、女子生徒の水着を着用して脱糞した男「ダップンダー」、電車内に幼虫200匹をばらまいた「ミールワームの使い手」など、ありとあらゆるいろ~んな変わり者たちが登場する。人の性的嗜好はそれぞれではあるが、これほど果てしなく深く、ピンポイントにマニアックな嗜好には衝撃を受ける。
そして、この本はただヘンタイを紹介しているだけでなく、ちょっと変わった趣味趣向を持つ男性と日常的に接してきた元SM女王ライター・マイ女王様が登場。彼らの滑稽にすら思える可笑しな行動に、斬るところはバッサリ斬り、ところどころ同情しそうになりながら、実に的確なコメントをしている。
また彼女に加え、現役の女王様が集まり、彼女たちだけが語ることのできる“ヘンタイ談義”も行われ、人々のとどまることのないフェチぶりについても議論が交わされている。本書に登場するヘンタイさんについても「うち(SMクラブ)に来れば、なんとかなったのに~」と、犯罪に走ってしまったことを残念がったりしている。
読み物としても十分すぎるほど面白いが、この本の良さは、なんといってもイラスト。『バカドリル』(扶桑社)でおなじみの漫画家のタナカカツキ氏が、登場するヘンタイさんたちの特徴を絶妙にとらえ、行き過ぎた行動の滑稽ぶりを見事なまでに表現している。
日常生活にマンネリ化を覚えるアナタ。これを読めば、一瞬にして、今まで知らなかった世界に一気にワープできるはず。ヘンタイの奥深さを知る世界へようこそ。
(文=上浦未来)
●たなか・かつき
マンガ家。1966年大阪生まれ。1985年マンガ家デビュー。著書には『オッス! トン子ちゃん』『サ道』天久聖一との共著『バカドリル』などがある。
●はやかわ・まい
元女王様ライター。得意分野はSM、フェティッシュ、サブカル界隈。北尾トロ編集『季刊レポ』にルポタージュ「そのとき歴史が鞭打たれた」を連載(完結)。電子書籍『女王様はオタクだった 腐った遺伝子』が、honto等のネットストアにて発売中。
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