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重信房子・獄中からの新著『革命の季節 パレスチナの戦場から』で明かす、若き日の珍道中

 重信とは以前、東京拘置所で対面したことがある。その時の短い会話で「あの頃は若かったから」という言葉が耳に残った。本書でも同様のことが記されている。だが、その思想を支持するにせよ、しないにせよ、多くの人が重信にシンパシーを感じているのは、若い情熱だけで走り切ったゆえである。本書の冒頭には、幻冬舎社長の見城徹が文章を寄せているが、同年代の彼は「彼らに対する僕の後ろめたさはこの世界の中で自分が世俗的にのし上がるパラドックスの強烈なモチベーションとなった」と記している。

 狭い島国の枠組みをヒョイと乗り越えて、世界を股にかけて戦い抜いた重信や日本赤軍のメンバーの壮大さを真似するのは難しい。だからこそ、彼らに憧れた者は、自分の根拠地を築き「革命」することを志す。その面で、彼らの活動は社会を確実に変えてきたといえる。

 重信も登場する映画『赤軍‐PFLP 世界戦争宣言』の中に「武装闘争はスタンバイすることである」の一文が登場する。武装闘争だけではない。自分の目指すべき「革命」に、メシを食べているときにも、寝ている時にも、常にスタンバイしていることこそが、重要なのだ。そして、重信たちがスタンバイし続けることができたのは、本書の行間からも伝わってくる情熱ゆえである。

 「社会を変える」のは、一時の高揚感や解放感に酔うことではなく、何かを掴もうとする情熱であることを本書は教えてくれる。選挙やデモで世の中が変わるという流行のスタイルに疑問を持っている人にとっては、座右の書になることを確約できる名著である。本書は、人生をいかに生きるか、重信を通して自身と対話するための本である。
(文=昼間たかし)

最終更新:2013/01/22 21:00
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