餃子の王将はブラック企業じゃない?スパルタ研修、人材育成へ多額投資…
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餃子の王将はブラック企業じゃない?スパルタ研修、人材育成へ多額投資… – Business Journal(1月20日)
世の中には「ブラック企業ランキング」「不人気企業ランキング」といったものが存在する。しかし、ブラック企業アナリストの新田龍氏によれば、「ブラック企業」に該当しない企業が含まれていることがあるという。内情は優良企業でさえあるのだが、その企業が属する業界や、一部の個別企業によるダーティなイメージが投影されている可能性があるためだ。新田氏がそのような企業を取り上げ、「何がブラック企業イメージの原因か」「実際はどうなのか」について、多角的に分析していく。
さて今回は、「王将フードサービス」を取り上げる。ご存じ「餃子の王将」を展開する会社だ。2013年卒就活生にきいた「絶対に入りたくない企業ランキング」において、オリンパスと並んで堂々同率6位にランクインした不名誉な記録を持ち、検索サイトで社名を打ち込むと必ず関連キーワードに「王将 ブラック」などと表示されてしまう、気の毒な会社である。
個人的には関西出身ということもあり、同社には馴染み深い感覚を抱いている。私自身ユーザーとしてちょくちょく利用しており、いつ訪問しても客が途切れない、顧客から支持されている店という印象だ。
実際、同社の業績は好調である。売上高は2010年6月に2年11カ月ぶりの前年同月比減を記録するまでずっと増収を続けており、10年連続で過去最高益を更新し、売上高も8年連続の増収である。同社の積極的な事業展開と、サービスクオリティの向上によるものであろう。
ただ、ユーザーとして利用するのと、社員として働くのは別ということだろう。就業先として同社の人気は著しく低い。恐らく直接的なきっかけは、2010年4月に日本テレビ系列で放送された『TheサンデーNEXT』ではなかろうか。
●スパルタ研修が話題に
この番組では、同社の新入社員研修の様子が放送された。研修中、携帯電話は会社に預け、テレビ、新聞、酒、タバコも一切禁止。夜は11時に消灯、朝は6時半からランニング。社訓とオリジナルの「王将体操」、あいさつなどの接客基本動作、3分間の「私の抱負」スピーチのすべてで合格点をもらえないと、修了が認められないというスパルタぶり。
厳しい研修であるが、怒鳴られているうちに新人たちにも熱が入り、最終的には
「弱い自分を脱却して、立派な自信を持った社会人になります!」
「1年後にチーフとなり、店長になって絶対に日本一の店にします!」
とスピーチで絶叫し、常務と抱き合って涙を流す。配属後、新人は「あそこで甘えが捨てられた」と振り返った……この様子は、今でも動画投稿サイトで確認可能である。
放送当時、ネット上を中心に賛否両論で、かなり話題になったものだ。否定的な意見としては
「まさにブラックそのもの」
「洗脳こわい」
「社畜こわい」
「先進国の光景じゃない」
「軍隊式が崇められてて日本独特」
といったものが多かった。
一方で擁護的なコメントも寄せられており、
「感動した」
「これでブラックとか、どんだけひ弱なんだよ」
「そもそも研修で遅刻するなんて考えられない」
などといった意見も見られた。
●スパルタ研修は王将、社員双方にメリット?
ただ、この様子はTV番組ならではの「編集」が加わっていたようだ。要するに、テレビ的に盛り上がる「インパクトのある部分」だけが放送されたため、拒否反応も強かったようだ。実際同社は番組放送の10年前から同様の研修を継続しており、それでうまくいっているわけだから、部外者がとやかく言ういわれはないのかもしれない。その後、同社HPではこの研修についての「釈明文」が掲載された。要素としては次の通りだ。
「餃子の王将」では、メニューの工夫や、イベント企画を行うなど、社員一人一人が存分に力を発揮し、併せて仲間とも協力することが必要とされる。その前に、あいさつや礼儀を社会人として身につけなければならない。「現代の若者」は、家庭や学校でこうしたしつけをされることが少なく、叱られたことのない人も多い。そのため、通り一遍の無難な研修だけでは、学生気分から脱却させることはできない。
また、今の若者には「汗をかかない」「涙を流さない」「感謝を知らない」といった傾向があり、研修では「感謝を知ること」を一番教えたいのだという。仲間に励まされながら自分の弱さに向き合い、最後に感動を分かち合う。仲間あっての自分を知り、感謝を知ることが真の目的だとしている。
このように、店長に経営者的な権限を持たせる形で人材育成を行っているのは「ユニクロ」のファーストリテイリング社も同様である。王将の場合、1店舗の年間売上は平均で1億円を超えるから、ちょっとした中小企業を経営するのと同じなわけだ。
外食産業は離職率が高く、初年度で3割にも上るという。腹をくくって数年で自立するのか、さもなくば「早めに辞めたほうがお互いのため」と認識させるためにも、スパルタ研修は必要なのかもしれない。
●「ヒト」への投資を重要視
同社が「ヒト」への投資を重要視していることは、直近5年分のコスト構造を分析すればわかっていただけることだろう。
同社の財務関連資料を読み解けば、同社が「ヒト」への投資を重要視していることがわかる。同社の原価率は、この5年を通して平均的に売上の30%程度で推移しており、大きな変化はない。
しかし、販管費の中身を「ヒト」(人件費など、人材関連の投資)、「モノ」(減価償却費など、モノに対する投資)、「稼働」(交通費や光熱費など、ヒトとモノをより効率的に動かすための投資)分野に分けて分析してみるとどうだろう。「モノ」と「稼働」に関しては、売上の上昇に合わせて緩やかに増加している程度だが、「ヒト」に投下する資本はこの5年で160%増まで、急激に増加していることがわかる。つまり、「ヒト」への投資に注力しているということなのだ。
同社は過去(02年頃)、倒産の危機に直面したことがある。そのとき、「本業以外の不採算な事業を清算する」という一般的な対策をとったことと同時に、注力すべき本業である王将については、「リストラ」「コスト低減」「効率的なセントラルキッチン方式」というような、一般的な対策をあえて取らなかったのだ。
社長の大東隆行氏いわく、「王将本来の強さは、客席から厨房が見える活気あふれる店で、おいしくて新鮮な料理を早く安く出すこと」であるとし、わざわざ厨房が客席から見えるようにオープンキッチンへと変更し、毎日店で従業員が餡を皮で手巻きにし、客の目の前で焼くように改善していったのだ。
そして、その徹底した取り組みが、サービスの価値として顧客にも評価されていった、ということなのではなかろうか。このように同社は、極限状況でもポリシーを大事にした判断を行い、着実に業績を向上させ、顧客から支持を受ける会社という面もある。厳しい環境でも揉まれて成長したい意志を持った人にとっては、格好の「修行の場」といえるのではなかろうか。
【今回のフォロー企業】 王将フードサービス
生産性優良度 ☆☆☆☆★ (☆=優良度 ★=ブラック度 5段階評価中)
(文=新田龍/ブラック企業アナリスト)
※本稿は、新田龍氏のメルマガ「ブログには書けない、大企業のブラックな実態」から抜粋したコンテンツです。
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