愛らしいぬいぐるみの中身は、中年不良オヤジ!? 変わり種バディムービー『テッド』
#映画
2013年1月18日(金) TOHOシネマズ スカラ座他全国ロードショー
今週も続々と封切られる新作映画の中から、注目の話題作を3本ピックアップしていこう。
1本目の『テッド』(1月18日公開、R15+指定)は、マーク・ウォールバーグ扮するサエない中年独身男と、命が宿ったぬいぐるみのテディベアが繰り広げるドタバタと成長を描く大人向けのコメディ。いつも仲間はずれで孤独な少年ジョンは、クリスマスにプレゼントされたテディベアを「テッド」と名づけ、本当の友達になれるよう神様に祈る。すると奇跡が起き、テッドは意志を持ち、話したり動いたりできるように。2人は親友として27年間を共に過ごし、気づけば30代のオジサンになっていた。女好きで下品なジョークを連発するテッドと一緒に、マリファナを吸いながら往年のアメコミヒーロー映画をテレビ鑑賞する自堕落な日々を送っていたジョンは、恋人のロリー(ミラ・クニス)から「私とテッド、どっちを選ぶの?」と究極の選択を迫られる。
精神的に大人になりきれないジョンと、外見は愛らしいぬいぐるみなのに中身は不良オヤジなテッドの組み合わせが絶妙で、変わり種のバディムービーとしても上出来。本作で長編映画監督デビューとなるセス・マクファーレンが、原案・脚本に加え、テッドの声とモーションキャプチャーによる動きまで自らこなした。ラブコメ、成長物語、スリラーの要素を巧みに織り交ぜ、大フィーチャーの『フラッシュ・ゴードン』をはじめ有名映画からの引用も満載で、ハリウッドスターのカメオ出演も豪華。最後まで飽きさせない痛快作だ。
2本目は打って変わって、現代の日本の家族をしみじみと描く山田洋次監督の『東京家族』(1月19日公開)。瀬戸内海の小島に暮らす老夫婦の周吉(橋爪功)ととみこ(吉行和子)は、子どもたちに会いに東京へやってくる。車で迎えにくるはずの次男・昌次(妻夫木聡)は駅を間違えてしまい、周平らはタクシーで郊外の長男・幸一(西村雅彦)の家へ。長女の滋子(中嶋朋子)、遅れて昌次も到着し、家族がそろって食卓を囲む。滞在中に横浜や東京を案内しようと計画する子どもたちだが、それぞれ仕事や近所付き合いで忙しく、思うように両親の相手をできず数日が過ぎる。
『男はつらいよ』シリーズなどで各時代の家族と向き合ってきた山田監督が、映画監督生活50周年の節目に、小津安二郎の名作『東京物語』(53)をモチーフに描いた。2011年3月の東日本大震災の後に書き直した脚本で、家族の絆、夫婦と親子、老いと死を見つめ、問いかける内容。夏川結衣、林家正蔵、蒼井優、小林稔侍、風吹ジュンなど豪華共演陣も加わり、名優たちのアンサンブル演技をたっぷり味わえる。穏やかな笑いと共感を呼ぶエピソードの奥に、監督の願いとメッセージが確かに込められた珠玉の感動作だ。
ラストは『片腕マシンガール』(08)、『電人ザボーガー』(11)の鬼才・井口昇監督が放つコミカルなホラーアクション『デッド寿司』(1月19日公開)。伝説の寿司職人の娘として、自身も職人を目指し厳しい修行を積んだケイコ(武田梨奈)は、家を飛び出し田舎の温泉旅館で中居の職を得る。元寿司職人の澤田(松崎しげる)に仕えながら働いていたある日、旅館に現れた元新薬開発者の男が細胞蘇生薬を寿司ネタに注入したことで、血に飢えた「殺人握り寿司」が誕生。宿泊客を次々と血祭りにあげる中、ケイコは修行時代に父から鍛えられた武術でデッド寿司軍団に立ち向かう。
主演は、空手の黒帯保持者であり『ハイキック・ガール!』(08)で映画デビューを果たした武田梨奈。本格アクションをこなせる日本で数少ない若手女優と、過激なエログロ特撮アクションと独特の笑いのセンスで世界が注目する異才の井口監督は、まさにベストマッチ。バカバカしい設定を大まじめに熱演する津田寛治、手塚とおるら個性派共演陣とともに繰り広げるワールドクラスのB級エンタメは、クセになる危ない魅力がテンコ盛りの怪作だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『テッド』作品情報
<http://eiga.com/movie/77234/>
『東京家族』作品情報
<http://eiga.com/movie/55930/>
『デッド寿司』作品情報
<http://eiga.com/movie/77290/>
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