“普通”の人々の歴史が面白い! 著名人の家族を通してひもとく、日本の庶民史『ファミリーヒストリー』
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現在写真家としても活動する永瀬正敏の曽祖父が実は写真館を開業していたり、「お祭り男」宮川大輔の先祖が神田明神の防火用の天水桶を作った人物であったりと、本人がまったく知らない現在の自分と符合する事実が次々と明かされていく。宿命と呼ぶのは大袈裟かもしれない。けれど、ただの偶然と切って捨てることはできないルーツであり、それは家族と本人のアイデンティティにもつながっていく。「事実は小説よりも奇なり」という使い古された言葉がリアリティをもって迫ってくるのだ。
「出川哲朗とNHK、真逆のところでやってきたんで……」と、本人もこの番組への出演を驚いたという出川哲朗は、創業100年以上の歴史を持つ海苔問屋の息子として生まれた。この回は、その伝統ある店の三代目に嫁いできた彼の母親が、夫の放蕩の果て家業が傾く中、必死で店を守り抜いた人生を中心に描かれた。父は調子に乗って手を出したクラブ経営で失敗して多額の借金を抱え、おまけに愛人を作って、家には帰らない。そんな父の人となりは、ええ格好しいの調子乗りで出川哲朗そっくりだ。それでも父と意地でも離婚せずに気丈に家業を守りぬいた母。彼女は時折、海の見えるところに行き、その先にある故郷の宮城県塩釜に想いを寄せるようにジッと海を眺めていたのだという。
58歳で亡くなった父の葬儀には、予想をはるかに超える参列者が集まった。母との別居中も父は、多くの人に対して見返りを求めることなく世話を焼いていたのだ。「母親は完全に最後に父のことは許していました」と、出川の姉は振り返る。父からはええ格好しいで友人思いの性格を、そして母からは常に身を粉にして全力で仕事に取り組む姿勢を受け継いだ出川哲朗は、家族の歴史の事実を見て「心を新たに、いただいた仕事を一つ一つ頑張ってやっていく」と涙をこぼした。
ただ、そんな感動的な話も、出てくる先祖の写真がことごとく出川本人とソックリすぎて笑ってしまい、前半は頭に入ってこなかったのだけど。
毎回、さまざまなゲストの家族史を追っているのに、そのどれもが劇的なことに驚く。そしてほとんどの回に共通するのが、そのターニングポイントに戦争が色濃く関わっているということだ。戦争によって翻弄され、厳しい選択を強いられ生き延びた家族。そんな無名の庶民の昭和史・近代史は、これまでほとんどテレビで語られることはなかった。タレントの家族というフィルターを通すことで、そういった「普通の人々」の生活と歴史をひもとく。それは、今まで「面白くない」「興味がない」と漠然とイメージされてきたものだ。しかし、それは違う。普通に生きてきた人々の歴史だからこそ面白いのだ。そして、庶民史だからこそ見えてくる日本の近代史が確かにある。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)
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