「現代の自分 VS 過去の自分」近未来SFアクション傑作『LOOPER ルーパー』
#映画
毎週新作映画を紹介する当連載の2013年の初回は、正月休み明けのまったりモードにビシッと気合いを入れてくれる傑作アクション2本を取り上げたい。
1月12日公開の『LOOPER ルーパー』は、ジョセフ・ゴードン=レビットとブルース・ウィリスが主演した近未来SFアクション。2074年の世界から、タイムマシンで消したい標的を30年前に送り込む犯罪組織と、2044年の世界に送られてきた標的を抹殺する「ルーパー」たち。その1人、ジョー(ゴードン=レビット)の前に、30年後の自分自身が現れる。30年後のジョー(ウィリス)は、未来社会の独裁者「レインメーカー」を幼いうちに消すためタイムマシンに自ら乗り込んでいた。ルーパーの掟に従い30年後の自分を殺そうとするヤング・ジョーと、追っ手を巧みにかわしながら困難なミッションに挑むオールド・ジョー。運命の対決の行方は、そして謎に包まれたレインメーカーの正体とは……。
時間旅行を扱うSFでは、登場人物が過去の自分に会うと自身の人生や未来の世界に重大な変化をもたらす可能性が高いため、そうした行為をタブーとすることが多い。だが、本作はそれを逆手に取り、主人公が未来から来た自分と、互いに影響を及ぼし合いながら命懸けの戦いを繰り広げるという展開がユニーク。ヤング・ジョーは30年後の自分を殺さなければ組織から消されてしまうが、オールド・ジョーは30年前の自分を殺すわけにはいかない(自分の存在も消えてしまう)という非対称性も対決を一層面白くしている。若手のルーパーが傷を負うと老ルーパーの身体にも即座に反映されるという描写は、視覚効果も見事で楽しませるが、30年間の行動や記憶への影響を考えると矛盾も浮かぶ。とはいえ、細かな難点もさして気にならないほどテンポ良くストーリーが進み、ハリウッド的なハッピーエンドではないクライマックスも見応え十分。ウィリスに似せるため特殊メイクで全編演じきったゴードン=レビットや、田舎の農家で一人息子を育てる男勝りのシングルマザーという従来の出演作とはイメージの異なる役どころに挑んだエミリー・ブラントらの熱演も含め、見どころたっぷりの快作だ。
続いて1月11日公開の『96時間 リベンジ』は、リーアム・ニーソン主演で米国や日本をはじめ各国でヒットしたアクションサスペンス『96時間』(09)の続編。元CIA工作員のブライアン(ニーソン)は、元妻レノーア(ファムケ・ヤンセン)と娘キム(マギー・グレイス)との関係を修復しようと、3人でイスタンブールを訪れる。だが、かつてキムが誘拐された事件でブライアンに息子を殺された老ボスが、アルバニア人の手下たちを動員して一家を襲撃。街中でレノーアを人質にとられたブライアンは、自らもとらわれの身に。ホテルに1人残ったキムにも危機が迫る。
製作・脚本は前作に続きリュック・ベッソン。『トランスポーター3 アンリミテッド』(09)のオリビエ・メガトンが監督を務めた。リーアム・ニーソンは舞台出身の演技派だが、50代後半になって『96時間』、『アンノウン』(11)など体を張った主演作で新境地を開拓。愛娘を誘拐した組織の一味を銃と格闘技でバッタバッタと倒していった前作に対し、今作ではまず主人公が元妻とともに拉致され、娘が携帯電話で父親にアドバイスを受けながら脱出を助けるという点が新趣向だ。仮免許中の娘が父に助けられながら敵の車とカーチェイスを繰り広げるシーンも、熟練ドライバーの運転とは異なる緊張感が生まれてスリリング。元特殊部隊所属のファイト・コーディネーターがキャストとしても起用され、終盤の共同浴場でニーソンとの接近戦を自ら演じるなど、刺激的な本格アクションを随所で堪能できる1本だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『LOOPER ルーパー』作品情報
<http://eiga.com/movie/77480/>
『96時間 リベンジ』作品情報
<http://eiga.com/movie/77609/>
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