ap bank fesにも出演 半身不随のボーカリストが綴る夢『終わりのない歌』
#本
そんな彼を支えたのは、医師から言われた「リハビリを続ければ、もう一度ステージに立てるようになります」という言葉だった。半身不随になると、腹式呼吸もすることができなくなってしまう。肺活量もそれまでの1/3以下にまで減少。自分でも信じられないくらいのか細い声しか出ない。プロのボーカリストとしての声が出せない体になってしまったのだ。
だが、奥野はあきらめなかった。肺活量が少ないのだからできる限り息を無駄にしない。腹式呼吸はできないが、車椅子のシートベルトでお腹を締め付けることで、その代わりとなることを発見。事故から2年後に歌った「ホワット・ア・ワンダフル・ワールド」の動画では、全身を使って、振り絞るように歌っている彼を見ることができる。それは、どんなボーカリストにも歌うことができない声だった。この奥野の姿を見て、桜井和寿は、ap bank fesへのオファーを即決した。(http://www.youtube.com/watch?v=6jo-mJPAS3A&hl=ja&gl=JP)
本書のタイトルでもあり、ROGUEの代表曲である「終わりのない歌」は、奥野が初めてカッコつけずに現実の厳しさや、それに負けそうな自分を描いた曲だった。現在、奥野の目標はROGUEを再結成し、もう一度「終わりのない歌」を歌うこと。まだ先になるであろうその日を夢見て、カッコ悪いその姿をさらしながら、奥野はリハビリに明け暮れている。
(文=萩原雄太[かもめマシーン])
●おくの・あつし
1963年、前橋市出身。82年、ROGUEを結成。85年、アルバム『ROGUE』でメジャーデビュー。バンド解散後はミュージシャン、俳優、映画音楽制作などに活動の場を広げている。2008年の不慮の事故により半身不随になるも、Twitterやブログなどを通じ、メッセージを発信し続けている。
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