LCCはキケン!? 欠航、遅延、規定違反で国交省が厳重注意!
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LCCはキケン!?…欠航、遅延、規定違反で国交省が厳重注意 – Business Journal(1月4日)
鳴り物入りで就航したLCC(格安航空会社)が大苦戦である。2012年8月に就航したばかりの全日本空輸系のLCC、エアアジア・ジャパンがもう社長交代だ。
12月17日付で新しい最高経営責任者(CEO)に、全日空出身でオペレーション部門統括責任者兼安全統括管理者だった小田切義憲・取締役が昇格した。
創業時の2011年8月からCEOを務めた全日空出身の岩片和行は取締役を外れ、会長に退いた。また、取締役の人数も10人から7人に減らした。
エアアジア・ジャパンは、全日空が51%、マレーシアのLCC・エアアジア49%(無議決権を含めた割合)の出資で設立された。成田国際空港を拠点に12年8月、札幌、福岡、那覇便を就航。10月以降、仁川便、釜山便など韓国路線を2便、新たに開設した。
運航開始後の8月に84.4%だった全路線の搭乗率は、9月が68.3%、10月が56.9%、11月が55.9%で平均は65.4%で、目標の80%に届かなかった。LCCが採算を維持するには、75%以上の搭乗率が求められるが、これを下回ったわけだ。
成田空港を拠点とするライバルの日本航空系のLCC、ジェットスター・ジャパン(千葉県成田市)の全路線の搭乗率は、就航した7月が85.5%。8月85.6%、9月76.7%、10月69.4%、11月64.9%と推移し、平均で76.4%。エアアジアはジェットスターに搭乗率で10ポイント以上、水をあけられた。
前CEOの岩片氏は「搭乗率は日本では季節変動があるので年間を通してみないと判断はつかない」とし、「(搭乗率80%の)目標には届いていないが、直接の(退任)理由ではない」と引責辞任との見方を否定した。ただ「(辞任の)背景には業績もある」と認めた。
新CEOの小田切義憲氏は、東京商船大学商船学部を卒業して87年に全日空に入社した変り種。日本貨物航空からの出向を経て、全日空では成田空港と東京空港でステーションコントロール部の各部署を歴任。LCC進出のために設けられたアジア戦略室副室長を経て11年8月、エアアジア・ジャパンの設立に伴い取締役になった。
エアアジアは成田空港に続き、中部国際空港を第2の拠点とする方針で、13年3月末に中部ー福岡便を就航する。国内LCCが中部国際空港に就航するのは初めて。成田で伸び悩む搭乗率をいかに向上させるかが、経営課題となっている。中部空港はLCC向けの施設の建設など受け入れ態勢の整備を進めている。中部空港もLCCに熱い視線を送っているのだ。
●LCC各社でトラブル続出中……
だが、搭乗率ではライバルのエアアジアに差をつけたとはいえ、ジェットスターも大苦戦中だ。
ジェットスターは11年9月、豪カンタス航空と日本航空が各33.3%、三菱商事と東京センチュリーリースが各16.7%出資して設立した。成田を拠点に大阪、札幌、福岡、沖縄の国内4便を就航した。
鈴木みゆき社長の経歴は多彩だ。幼少期と学生時代のほとんどを英国で過ごす。英オックスフォード大学卒業後、82年ロイター(現・情報企業トムソン・ロイターの一部門)に入社。世界各地で勤務したのち、起業などを経験。02年、日本テレコム専務執行役員兼コンシューマ事業本部長に就き、インターネットプロバイター事業など個人向けサービスを統括した。06年、情報ネットワーク会社KVHのCEO。11年12月、ジェットスター・ジャパンのCEOに就任した。
ジェットスターは12年7月3日の就航初日からトラブルが相次いだ。初日の札幌ー成田行きの最終便が欠航し、搭乗予定の155人のためにホテルを用意した。前便で乗客の搭乗に手間取ったことが原因という。7月12日も同じ最終便が欠航。7月28日には機体に鳥がぶつかるハードスライクの影響で、成田ー沖縄(那覇便)が欠航した。
8月24日、同日就航したばかりの関西ー福岡便など3便が、関西国際空港で見つかった機体トラブル(胴体中央部下部のネジの欠落)の影響で欠航。あまりの欠航の多さに、利用者からは「もうLCCに乗らない」と不満の声が上がったほどだ。
11月16日には、経験が社内規定(3年以上)に満たない整備士を確認主任者に選任していたことが発覚し、国土交通省から厳重注意を受けた。LCCへの厳重注意は初めてである。この問題で12月に予定していた関空の第2拠点化を延期した。
もう1社のLCCはピーチ・アビエーション(大阪府泉佐野市)。全日空38.67%、香港の投資会社ファーストイースタン・インベストメントグループ33.33%、産業革新機構28.0%の出資で11年2月に設立された。
関西国際空港を拠点に12年3月に就航。国内が札幌、福岡、長崎、鹿児島、沖縄の5路線、海外は韓国・仁川、香港、台北の3路線を運航している。
この結果、関空は国内外9社が乗り入れる国内最大のLCC空港となった。大阪(伊丹)空港と経営統合し、再建を目指す新関空会社は、中期経営計画で「LCCによる成長ネットワークの獲得」を重点施策のトップにあげた。「関空をアジアのLCCの拠点にする」のが目標だ。LCC空港、関空の稼ぎ頭と期待されていたのがピーチ・アビエーションだった。
エアアジア・ジャパンは国内線就航から4カ月で社長交代。ジェットスター・ジャパンへの厳重注意とLCCの経営課題も見えてきた。
国交省航空局がまとめた航空8社に関する「航空輸送サービスに係わる情報公開」(12年7~9月分)によると、LCCの遅延率が突出している。遅延率とは定時の運行予定時間より15分以上時間がかかった発着率の割合をいう。延滞率はエアアジアが57.2%でワースト1位。便の半分以上が定時運行していないということを示す。ワースト2位はジェットスターの25.9%。ピーチは13.7%でスカイマークの15.4%に次いでワースト4位だ。
欠航率は6.4%の日本トランスオーシャン航空がワースト1位だが、これは沖縄を直撃した台風による欠航がほとんど。実質的にはエアアジアの3.5%が1位。ジェットスターは1.4%、ピーチは1.1%だった。
LCCは少ない航空機を使い回してコスト削減するため、遅延や欠航が出やすい。ここに事業拡大を急ぐLCCのひずみを見ることができる。LCCを利用するリスクが改めて浮き彫りになった格好だ。
(文=編集部)
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