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フィルムの生産中止でデジタル化が進む映画界! “ピンク映画”と成人館はどーなるどーする?

hayas11.jpgピンク映画専門誌「PG」の林田義行さん。「ピンク大賞のベスト10発表は2011年度で
いったん終了しましたが、これからも良質なピンク映画の上映イベントは続けていきたい」と語る。

 富士フィルムの生産中止と並んで、林田さんが重大ニュースとして挙げたのが都心部の映画館の閉館が相次いだこと。渋谷シアターNや銀座シネパトス(2013年3月閉館)といった一般館だけでなく、成人館も閉館を余儀なくされていた。

「フィルムの生産中止とも連動するものですが、昔ながらのフィルム上映を続けてきた成人館がここ数年で次々と閉館しています。静岡、名古屋、大阪などの地方の成人館の閉館が最近は続いていましたが、2012年は9月に新宿国際劇場、浅草世界館、浅草シネマ、また8月には横須賀の金星劇場も閉館しています。都心部の成人館はまだしばらくは大丈夫かと思っていたのですが、大震災以降は耐震性や防災上の問題もあって老朽化した映画館の存続ができなくなりました。業績が良ければ建物を建て替えることも可能でしょうが、成人館はどこもギリギリの経営を続けているので断念せざるを得なかったようです。もし仮にピンク映画がデジタル撮影されるようになっても、デジタル対応できない成人館は新作を上映できなくなるという問題も生じてきます。成人館もそうですが、昔ながらのフィルム上映のみを続けている名画座もフィルムで撮られた旧作だけを上映し続けることになります。各地の成人館、名画座の動向は非常に気になります」

 新作『千年の愉楽』(2013年3月公開)を完成させた若松孝二監督が10月に交通事故で亡くなった悲報にも、大きな喪失感を覚えたと林田さんは語る。

「近年の若松さんは国際派監督というイメージがありましたが、もともとは『壁の中の秘事』(65)などのピンク映画で頭角を現わした監督。周防正行監督や根岸吉太郎監督もピンク映画で監督デビューし、現在では国際派として名を成していますが、若松さんはその先駆的存在でした。若松さんのすごいところは、自分で資金を調達し、製作した上で、配給までやるというインディペンデント映画のスタイルを初期のピンク映画で実践して自分のものにし、一時期はメジャー作品を撮ることもありましたが、最後までずっとそのスタイルを貫いたこと。ピンク映画ならではの破天荒さを発揮した監督です。若松さんのようなタイプの監督は、今後は出て来ないかもしれませんね」

 沈みがちなニュースがどうしても続くが、ここで視点を前向きに変えた話題を。実は2012年はピンク映画第1号『肉体の市場』(62)が公開されてから50周年を迎えた記念すべきメモリアルイヤーでもあったのだ。学生時代から四半世紀にわたってピンク映画を追い続けてきた林田さんにとっては感慨深い1年でもあった。

「厳しい状況が続く中、ピンク映画が半世紀の歴史を数えたことは大きなニュースだったと思います。年間の製作本数が減ったことから『ピンク大賞』ベスト10の発表は2011年度が最後になりましたが、ピンク映画50年の歴史を振り返るという意図で、銀座シネパトスで5月から12月にかけて『午後8時からの映画祭』と銘打った大規模なピンク映画の特集上映を組みました。一般館での上映ということもあり、女性ファンや成人館に馴染みのない若い層にも足を運んでもらえました。7か月間に及ぶピンク映画の特集上映ができたことは、自分にとっては感慨深いものがあります。とはいえ、シネパトスも東京都から立ち退き命令が出ており3月で閉館してしまうため、今後はどうするか頭を悩めているところです。こうした規模でピンク映画の特集上映を行なうことは難しくなってくるかも知れません。本当は年内に出すはずだったピンク映画50年の年譜付き『PG』最新号は、2013年には発刊する予定です。『肉体の市場』に助監督として参加していた小川欽也監督のロングインタビューなど盛りだくさんの内容になるので、期待していてください」

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