ルネサス救済の裏で加熱する出資元・革新機構とトヨタの攻防
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ルネサス救済の裏で加熱する出資元・革新機構とトヨタの攻防 – Business Journal(12月26日)
経営不振に陥っていた、半導体大手ルネサスエレクトロニクス救済の枠組みが固まった。政府系ファンドの産業革新機構と国内企業8社が、1500億円を出資する。そのうち、革新機構が1383億円を引き受け、7割弱の株式を握り、筆頭株主となる。同機構は7~8年かけてルネサス再建を目指すという。「再生には自信がある」と幹部は語る。だが思わぬ障壁ともいうべき存在が浮上してきた。出資企業の1社であるトヨタ自動車である。
「ルネサスの件は、今に始まった話ではないですよ。革新機構の設立当初から、半導体業界のてこ入れは課題でしたから」と、同機構の関係者は語る。2009年の設立以来、同機構が注視し続けてきたのが半導体業界。エルピーダメモリやルネサスの前身のルネサステクノロジ、NECエレクトロニクス、東芝などが苦境に陥ったこともあり、再編の枠組みを描き続けてきた。ただ、条件面などでの乖離や各社の思惑の違いも大きく、遅々として進まなかったのが実情だ。
表面上は「国に切られた」との見方が支配的なエルピーダにも、水面下で秋波を送り続けてきたが「坂本幸雄社長の土壇場の暴走(破たんを選択したこと)で話がオジャンになった」と振り返る。今春に資金繰りの危なさが表面化したルネサス再建についても、革新機構がこれまでも関係企業に打診を続けてきたが、反応は鈍かったという。
●“オールジャパン”支援成立の背景
風向きが変わったのは、米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツが、夏にルネサス支援に名乗りを上げたことだ。「外資メーカーに半導体を投げ売りされて、技術が流出する」と危機感を覚えた自動車メーカーなどの顧客が革新機構の提案を真剣に検討し始めて、今回の「オールジャパン」での支援が成立した。
現在、焦点となっているのは、国の金を投じたところで、果たしてルネサスは再生するのかという点。何せ前身のルネサステクノロジ時代から数えると、7期連続の赤字である。人員や工場閉鎖も難航しそうな上、ビジネスモデル自体の転換も求められる。それでも、革新機構の幹部は、次のように語り、自信にあふれた表情を崩さない。
「ルネサスの問題は、顧客の注文に細かく対応しすぎた点。当然、開発費用も膨れ、生産効率も下がる。全メーカーが共通して使えるような製品を増やすなど標準化を進めれば、収益性は急激に改善するはずだ」
●反発を隠さないトヨタ
こうした革新機構の計画に反発を隠さないのがトヨタだ。証券アナリストは、こう内情を解説する。
「革新機構が、半導体や自動車ビジネスの現場をどこまで理解しているかは怪しい。車の電子化が進行して、制御に使うマイコンの重要度は飛躍的に増している。車メーカーにすれば、なんでもかんでも標準化はのめない。トヨタ幹部は『お金も出すことだし、こちらの言うことも聞いてもらわないと。メーカー共通の標準化などは、ごく一部を除いて無理だよ』とこぼしていました」
一方、前出の革新機構の幹部も、こうした反発は織り込み済み。「我々が金を出さず、ファンドに乗っ取られていたら、エンジンを制御するマイコンなど、主要技術を海外に自由に売られていたのは間違いない。トヨタの出資はたかだが50億円、グループ会社のデンソーと合わせても60億円ほど。ゴタゴタ言わないでほしいというのが正直なところだ」と言い切る。
果たして革新機構は、トヨタを従わせられるのか? 同機構は7割弱の株式を握るとはいえ、しょせんは国の金だ。業界のマイナスになるような方向付けはできないはず。加えて、経済産業省の関係者はこう囁く。
「当初、日本のものづくり力の低下に危機を感じたトヨタは、100億円でも200億円でも出すと言っていた。それを、揺るがないマジョリティを握りたいがために、経産省にトヨタを説得させて50億円にとどめさせたのは、実は革新機構」
12月初旬、ルネサス支援の枠組みを説明する記者会見では、革新機構は最大株主になる身ながらギリギリまで出席を拒み、ルネサスからの再度の要請で同席するなど、傲慢ともいえそうな対応を指摘されている。
「革新機構は、(今年発足した)東芝、ソニー、日立製作所の液晶事業統合会社・ジャパンディスプレイの成功で、いい気になっている」との声も聞こえてくる。
革新機構の驕りが続けば、新生ルネサスの前途も揺らいでいくことになろう。
(文=江田晃一/経済ジャーナリスト)
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