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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.203

あの低視聴率ドラマ『鈴木先生』が映画版に! “鈴木式教育メソッド”は世界を変えられるか?

suzukisensei3.jpg鈴木先生との対立が原因で自宅療養中だった足子先生(富田靖子)が
映画版でカムバック。彼女の言動が再びトラブルを招くことに。

 映画版の中での短いシーンだが、公園に集まった生徒たちに鈴木先生が演劇指導する場面がある。目を閉じて後ろにドタッと倒れる生徒を他の生徒たちが支える動作を繰り返している。「DVD&ブルーレイビジョン」1月号(日之出出版)で武富氏&長谷川博己にインタビューした際に、この“倒れ込み”トレーニングにはどういう目的があるのかを尋ねたところ、心理的効果をもたらすのだと両者は口をそろえた。「頭をブツけて怪我するくらいの勢いで倒れると効果的。倒れる体を他の人にしっかり支えてもらうことで、お互いに信頼感が生まれるんです。舞台をやっていた頃、日常とスイッチを切り替えるための手段として、この稽古は欠かさずやっていました」(武富)、「基本的な演劇トレーニングのひとつなんです。ボクも舞台を始めた頃によくやっていました。仲がよくない同士でも、これをやることで関係性が変わるそうですよ。演劇指導のシーンは、ボクも初心に帰るような気持ちになれましたね」(長谷川)。決して頭デッカチにならず、体を動かして覚えていく教育。それも鈴木式メソッドの大切な要素。信頼関係で結ばれた2-A生徒たちが、クライマックスでどのような行動をとるのか注目したい。

 文化祭で『ひかりごけ』を上演するため、鈴木先生の演出指導のもと、稽古を重ねる2-Aの生徒たちだが、彼ら彼女らにとっての本番が始まるのは、もう少し先になる。学校を卒業し、実社会に出てからが本当の意味での本番だ。実社会に出てしまえば、自分の失敗をもう学校のせいや家庭のせいにすることはできない。ましてや社会のせいにしていては、舞台はまったく前に進まない。それぞれの生徒たちが主人公である、長い長い一幕ものの舞台が待ったなしで開幕する。つまらない舞台にしてしまうか、血湧き肉踊る舞台にできるかは自分次第だ。そのためには、より多くの知識と技術と経験を学び続ける必要がある。鈴木式メソッドの本懐はそこにある。
(文=長野辰次)

suzukisensei4.jpg
『鈴木先生』
原作/武富健治 脚本/古沢良太 監督/河合勇人 出演/長谷川博己、臼田あさ美、土屋太鳳、風間俊介、田畑智子、斉木しげる、でんでん、富田靖子、夕輝壽太、山中聡、赤堀雅秋、戸田昌宏、歌川椎子、澤山薫、窪田正孝、浜野謙太、北村匠海、未来穂香、西井幸人、藤原薫、小野花梨、桑代貴明、刈谷友衣子、工藤綾乃 配給/角川映画、テレビ東京 配給協力/ミラクルヴォイス 2013年1月12日(土)より角川シネマ、丸の内TOEI、渋谷TOEIほかにて全国ロードショー (c)2013映画「鈴木先生」製作委員会
<http://www.tv-tokyo.co.jp/suzukisensei>

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[第54回] “空気を読む”若者の悲劇『パレード』楽しいルームシェア生活の行き先は?
[第53回]社会の”生け贄”に選ばれた男の逃亡劇 堺雅人主演『ゴールデンスランバー』
[第52回]『男はつらいよ』の別エンディング? ”寅さん”の最期を描く『おとうと』
[第51回]ひとり相撲なら無敵のチャンピオン! 童貞暴走劇『ボーイズ・オン・ザ・ラン』
[第50回]ヒース・レジャーが最後に見た夢の世界 理想と欲望が渦巻く『Dr.パルナサスの鏡』
[第49回]トニー・ジャーは本気なんジャー! CGなしの狂乱劇再び『マッハ!弐』
[第48回]全米”オシャレ番長”ズーイー、見参! 草食系に捧ぐ『(500日)のサマー』
[第47回]市川崑監督&水谷豊”幻の名作”『幸福』28年の歳月を経て、初のパッケージ化
[第46回]押井守監督、大いなる方向転換か? 黒木メイサ主演『アサルトガールズ』
[第45回]ドラッグ漬けの芸能関係者必見!”神の子”の復活を追う『マラドーナ』
[第44回] 暴走する”システム”が止まらない! マイケル・ムーア監督『キャピタリズム』
[第43回]“人は二度死ぬ”という独自の死生観『ガマの油』役所広司の監督ぶりは?
[第42回]誰もが共感、あるあるコメディー! 2ちゃんねる発『ブラック会社』
[第41回]タラとブラピが組むと、こーなった!! 戦争奇談『イングロリアス・バスターズ』
[第40回]“涅槃の境地”のラストシーンに唖然! 引退を賭けた角川春樹監督『笑う警官』
[第39回]伝説の男・松田優作は今も生きている 20回忌ドキュメント『SOUL RED』
[第38回]海より深い”ドメスティック・ラブ”ポン・ジュノ監督『母なる証明』
[第37回]チャン・ツィイーが放つフェロモン爆撃 悪女注意報発令せり!『ホースメン』
[第36回]『ソウ』の監督が放つ激痛バイオレンス やりすぎベーコン!『狼の死刑宣告』
[第35回]“負け組人生”から抜け出したい!! 藤原竜也主演『カイジ 人生逆転ゲーム』
[第34回]2兆円ペット産業の”開かずの間”に迫る ドキュメンタリー『犬と猫と人間と』
[第33回]“女神降臨”ペ・ドゥナの裸体が神々しい 空っぽな心に響く都市の寓話『空気人形』
[第32回]電気仕掛けのパンティをはくヒロイン R15コメディ『男と女の不都合な真実』
[第31回]萩原健一、松方弘樹の助演陣が過剰すぎ! 小栗旬主演の時代活劇『TAJOMARU』
[第30回]松本人志監督・主演第2作『しんぼる』 閉塞状況の中で踊り続ける男の悲喜劇
[第29回]シビアな現実を商品化してしまう才女、西原理恵子の自叙伝『女の子ものがたり』
[第28回]“おねマス”のマッコイ斉藤プレゼンツ 不謹慎さが爆笑を呼ぶ『上島ジェーン』
[第27回]究極料理を超えた”極地料理”に舌鼓! 納涼&グルメ映画『南極料理人』
[第26回]ハチは”失われた少年時代”のアイコン  ハリウッド版『HACHI』に涙腺崩壊!
[第25回]白熱! 女同士のゴツゴツエゴバトル 金子修介監督の歌曲劇『プライド』
[第24回]悪意と善意が反転する”仮想空間”細田守監督『サマーウォーズ』
[第23回]沖縄に”精霊が暮らす楽園”があった! 中江裕司監督『真夏の夜の夢』
[第22回]“最強のライブバンド”の底力発揮! ストーンズ『シャイン・ア・ライト』
[第21回]身長15mの”巨大娘”に抱かれたい! 3Dアニメ『モンスターvsエイリアン』
[第20回]ウディ・アレンのヨハンソンいじりが冴え渡る!『それでも恋するバルセロナ』
[第19回]ケイト姐さんが”DTハンター”に! オスカー受賞の官能作『愛を読むひと』
[第18回]1万枚の段ボールで建てた”夢の砦”男のロマンここにあり『築城せよ!』
[第17回]地獄から甦った男のセミドキュメント ミッキー・ローク『レスラー』
[第16回]人生がちょっぴり楽しくなる特効薬 三木聡”脱力”劇場『インスタント沼』
[第15回]“裁判員制度”が始まる今こそ注目 死刑執行を克明に再現した『休暇』
[第14回]生傷美少女の危険な足技に痺れたい! タイ発『チョコレート・ファイター』
[第13回]風俗嬢を狙う快楽殺人鬼の恐怖! 極限の韓流映画『チェイサー』
[第12回]お姫様のハートを盗んだ男の悲哀 紀里谷監督の歴史奇談『GOEMON』
[第11回]美人女優は”下ネタ”でこそ輝く! ファレリー兄弟『ライラにお手あげ』
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[第9回]胸の谷間に”桃源郷”を見た! 綾瀬はるか『おっぱいバレー』
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最終更新:2012/12/27 16:00
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