テレビ・ウォッチャーてれびのスキマが選ぶ、2012年ドラマベスト3
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NHK大河ドラマ『平清盛』が大河史上最低の平均視聴率を更新し、民放の連続ドラマにいたっても平均20%を超える作品は出ず、惨憺たる結果となった2012年のドラマ界。しかし一方で、バラエティ豊かで野心的・挑戦的な作品が多かった年でもあった。そんな2012年のドラマを振り返ってみたい。
第1位 『カーネーション』(NHK総合)
第2位 『リーガル・ハイ』(フジテレビ系)
第3位 『赤い糸の女』(フジテレビ系)
■「どうかしてる」も通り越す、欲望丸出しの名ゼリフ
昼ドラのカオスっぷりは今に始まったことではない。しかし、『赤い糸の女』のそれは、もう「どうかしてる」をも通り越していた。ヒロインは三倉茉奈演じる志村唯美。その同級生で同姓だったため、その容貌から「ブタ志村」と呼ばれイジメられた経験を持ち、全身整形をしてヒロインの前に現れるのが奥村佳恵演じる芹亜だ。欲望のままに生き、他人の欲望にも敏感で、その欲望を導き出す“才能”がある芹亜を中心に出てくる登場人物は例外なく欲望まみれでセックス狂い。ヒロインの中学生の弟まで「セーーックス!」などというくしゃみをする始末。「好きだ、唯美さん! やらせてくれ!」「あたしはビオラ……鳴らして……鳴らして!」「ふん、セックスのお裾分けってわけ?」「愛とかセックスとか、青春には付きものじゃないか」などと欲望丸出しの名ゼリフは枚挙にいとまがない。
脚本は『真珠夫人』『牡丹と薔薇』など、ドロドロした愛憎劇を書かせたら天下一品の中島丈博。「欲望が、絡みつく。」のキャッチコピーにたがわない欲望が欲望を生むストーリーは、まさに中島文学の集大成ともいえる怪作だった。極めつきは遥香(小沢真珠)が徳須(瀬川亮)と結婚式を挙げるシーン。徳須に想いを寄せる唯美の母、豊子(いしのようこ)が錯乱し、般若の面をつけて乱入。ウェディングケーキ入刀で使ったナイフを奪い遥香の身体に突き刺し殺すと、返り血を浴びたウェディングケーキに豊子が外した般若の面が突き刺さり“血染めの般若ウェディングケーキ”が映し出された。もはや意味すら吹き飛ばす、昼ドラ史上に残る狂ったシーンだった。
■2012年のドラマ界を象徴する役者・堺雅人
「喜怒哀楽のすべてを微笑みで表現する男」として名高い堺雅人が、表情を百面相に変えて、早口でまくし立てながら喜怒哀楽を躍動的に演じたのが『リーガル・ハイ』だ。彼が演じたのは百戦錬磨の弁護士・古美門研介。ハマリ役だった。いや、堺雅人はこのドラマの後、『大奥 ~誕生~[有功・家光篇]』(TBS)でも万里小路有功を演じ、これもハマリ役。すべてをハマリ役にしてしまう堺雅人は、2012年のドラマ界を象徴する役者だったといえるだろう。
『リーガル・ハイ』の脚本を担当したのは『ALWAYS 三丁目の夕日』『キサラギ』『ゴンゾウ 伝説の刑事』『相棒』『鈴木先生』などの古沢良太。スピード感あふれた物語展開と伏線が張り巡らされた緻密な構成が両立している「ながら見」を許さない、くぎ付けにならざるを得ない脚本だった。
古美門は「君が正義とか抜かしているものは、上から目線の同情にすぎない」「正義は、特撮ヒーローものと少年ジャンプの中にしかないと思え!」「これがこの国の“なれ合い”という文化の根深さだ」などと言い放ち、「正義」や「絆」などという“美しい”言葉が覆い隠してしまったものを、彼独特な罵詈雑言で駆逐していく。そして「見たくない現実」を白日の舌に晒す。
特に第9話、「絆」や「誠意」で公害を起こした企業との和解に応じようとした住民への古美門の長ゼリフは圧巻だった。
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