パナソニックとシャープの経営危機…銀行管理も待ったなし
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パナソニックとシャープの経営危機…銀行管理も待ったなし – Business Journal(12月23日)
「社長 島耕作」が社長辞任――。「モーニング」(講談社)の2012年12月6日号で島社長が2期連続の大幅赤字を計上する責任を取って辞意を伝えたことが、ネット上で反響を呼んでいる。
島耕作シリーズは弘兼憲史氏の代表作。大手家電メーカーのモデルが、弘兼氏が勤めていた松下電器産業(現・パナソニック)であることは有名な話だ。作品にもパナソニックの苦境が投影されている。
13年3月をメドに、プラズマディスプレイパネル(PDP)の新たな研究開発を中止する。プラズマテレビといえばパナソニック。パナソニックといえばプラズマテレビだ。国内メーカーで唯一、PDPを作っているパナソニックが基礎技術の研究開発を断念するというのだ。同社は今後、液晶パネルや有機ELパネルに技術者をシフトする。パナソニックがテレビの世界戦争で完全に敗れたことを示す、歴史的な出来事である。
パナソニックの敗戦の原因を探ることにする。3人の経営トップの時代を経て、パナソニック、ここまで落ちた。
2000年に社長に就任した中村邦夫がプラズマTVへの巨額投資へと経営の舵を切った。03年当時、松下電器(現パナソニック)には「プラズマは液晶より画面が明るい」という、一種のプラズマ神話があった。創業者の松下幸之助にはじまり、常にユーザーの声を聞くことで成長してきた会社なのに、薄型テレビの開発ではプラズマのみに注力して液晶TVにはほとんど見向きもしなかった。日立製作所などプラズマ陣営が次々と撤退する中、中村はプラズマにこだわり続け、6000億円超を注ぎ込んだ。
薄型テレビの顧客ニーズを無視した戦略に、社長の器でない人物の社長就任が追い打ちをかけた。大坪文雄は2006年に社長に就任し、会長になった中村のプラズマ拡大路線を引き継いだ。大坪はグローバル企業を統率できる経営者ではなかった。ここにパナソニックの最大の悲劇がある。
09年末には三洋電機株式のTOB(株式公開買い付け)を実施し子会社にした。三洋は既に国際競争力を失い、経営破綻の危機に陥っていたが、パナ-三洋の両社の強みを生かせばシナジー(相乗)効果を出せると盲信した。三洋電機の買収は完全に、戦略上の失敗であった。6700億円を投じ、ガラクタ会社を手に入れたのである。
12年に社長に就任した津賀一宏は、尼崎のプラズマパネル工場を視察して「戦艦大和だ」と呟いた。津賀は中村-大坪路線の完全否定から出発したが、社長に就任するのが1年遅かった。戦艦大和は太平洋戦争の末期、沖縄に特攻出撃して、米航空機動部隊に撃沈された、戦略上は無用の長物だった。戦艦大和に引っかけて津賀は無謀なプラズマ拡大路線を批判したのだ。もう1年早く津賀が社長に就任していれば、13年3月期の7650億円の赤字は半分に抑え込めただろうとアナリストは指摘している。
ここまでがパナソニックに起こった悲劇のおさらいである。
ここからが、今、起こっていること。そして、これから起こることである、
●資金確保のため、スポンサーは打ち切り。銀行と融資契約
プロゴルファーの石川遼との所属契約を13年1月で終了する。08年1月から5年間の契約を結んでいたが、延長しない。主催する国内男子ツアーのパナソニックオープンも、13年の第6回大会を最後に打ち切る。三洋電機から引き継いだ女子バドミントン部や男子バスケット部も休部。企業スポーツからも足抜きする。
冠イベントや企業スポーツの中止は、銀行の軍門に下ったことを象徴する出来事といえるだろう。かつて豊富な資金力で「松下銀行」と言われたパナソニックは、銀行からの借り入れに頼ることはなかった。
10月末、今期7650億円の最終赤字を計上すると発表して、社債市場で“パナソニックショック”が起きた。取引開始直後から同社債に売り注文が殺到した。株式市場でも同様のことが起きた。11月2日の東京株式市場でパナソニックの株式時価総額が一時、1兆円を割った。1兆円割れはデータをとることができる86年以降では初めて。06年の時価総額のピーク時から7分の1に目減りした。欧米系の格付け会社フィッチ・レーティングスは、パナソニックの会社格付けを「投機的な水準」に引き下げた。
薄型プラズマテレビの不振に三洋電機の戦略的買収の失敗が重なり、有利子負債は08年3月期の3886億円から12年9月末には1兆5616億円と4倍に膨らんだ。かつて2兆円以上持っていた現金・預金は、12年9月末には4713億円にまで減ってしまった。株価は11月6日に376円まで下げた。もちろん年初来の安値。37年9カ月ぶりの歴史的安値だ。会社格付けが投機的な水準に引き下げられたことにより、社債市場からの資金調達が困難になり、「会社存亡の危機」に立たされたのである。
資金を確保するためパナソニックは銀行と総額6000億円の融資枠契約(コミットメントライン)を結んだ。融資枠を設定すると、あらかじめ決めた期間と金額の範囲内で銀行から資金を借りられる。コミットメントラインの内訳は、主力行の三井住友銀行が2500億円、三菱東京UFJ銀行2000億円、三井住友信託銀行1000億円、りそな銀行500億円である。
これからは株式や社債の資本市場に代わって、銀行の間接融資に全面的に頼らなければならない。銀行に頭を下げて資金を借りたことがなかったパナソニックの経営陣には、屈辱以外のなにものでもなかった。
<主力取引銀行の元首脳は「あれだけ銀行なんか関係ないと言っていたパナさんも、ようやく我々のいうことを聞くようになったわけや」と感慨深げに語った>(日本経済新聞12月13日付)と報じられた。
パナソニックは13年3月28日に、中期経営計画を発表する予定になっている。役員(担当)を含む大量の人事異動、収益の改善が見込めない事業の売却や中止。その前にケータイ事業の中止(撤退)も年内に発表する。今年度中にパナソニック東京汐留ビルを売却するか証券化する方針。汐留ビルは03年にパナソニックが完全子会社にした旧松下電工が東京本社ビルとして完成させたものだ。
パナソニックは他の保有不動産売却も含め、2000億円の資金を捻出する。追加のリストラを含めて単体決算ベースで14年3月期の復配、15年同期の繰り延べ税金資産の復活を目指す。中期経営計画は、銀行の意向を盛り込んだ内容にならざるを得ない。「パナソニックのシャープ化」という厳しい見方もできよう。
シャープはさらに深刻だ。13年3月期に過去最悪の最終赤字、4500億円を見込んでおり、窮地に立たされている。12年9月末時点の現金・預金は2211億円。対して有利子負債は1兆1741億円に上る。シャープも、これまでは銀行からの借り入れは微々たるものだったが、社債市場からの資金調達をシャットアウトされた結果、銀行からの融資に頼らざるを得なくなった。
主力行のみずほコーポレート銀行と三菱東京UFJ銀行が9月末、1800億円を緊急融資し、さらに1800億円の融資枠を設定した。りそな銀行とみずほ信託銀行、三菱UFJ信託銀行の3行は融資枠の一部、400億円程度を肩代わりして、銀行団に加わる方向だ。
続いて、シャープの敗戦について書く。
●鴻海との提携はすでにネックに……
シャープの失敗は町田勝彦・元社長・会長がオンリーワン経営を貫いたことにある。オンリーワンにこだわり続け、液晶テレビの大成功で、「液晶のシャープ」といわれるまでになった。この、望外な成功体験から、世界一の液晶テレビメーカーを目指した。09年に世界最大の液晶パネル工場が稼働した。関連会社を含めた総投資額は1兆円である。だが、11年以降、3~5割の低稼働率が続く。過大な設備投資のツケで経営が急速に悪化。電子機器受託製造サービス(EMS)の世界最大手、台湾の鴻海精密工業の出資を仰ぐこととなる。
シャープのアキレス腱は、液晶の1本足打法にある。堺工場の稼働率を高めるには鴻海の外販力に頼るしかない。しかし、鴻海との交渉が難航し、提携先を次々に模索しているが主導権は常に、相手側に握られている。中小型液晶の生産拠点である亀山第2工場の稼働率を高めなければ経営が破綻すると、足元を見透かされているのだ。
12年9月中間期の決算短信に、企業継続のリスクとして「継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせる事象の存在」が付け加えられた。倒産予備軍になったということだ。フィッチ・レーティングスは11月2日、シャープの長期信用格付けを「トリプルBマイナス」から一気に6段階引き下げ「非常に投機的な水準」を意味する「シングルBマイナス」にしたと発表した。フィッチは、さらに格下げする可能性があるとしている。シャープの格付けに関しては、米系格付け会社のムーディーズ・ジャパンとスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は既に「投機的な水準」に引き下げている。
投機的水準にまで格付けが下がると、資金調達に大きな困難が生ずる。事実、企業の信用リスクを取引するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場で一時、シャープの保証料率は45%に達していた。この数字はシャープの信用リスクを引き受ける投資家が見当たらないことを意味する。シャープの社債の流通価格は、額面100円に対して40円台に急落した。シャープの株式や社債を持っている上場企業は、減損処理を迫られることとなった。
シャープは3月、鴻海と資本・業務提携した。郭台銘・鴻海董事長個人による堺工場への出資は実行されたものの、鴻海によるシャープ本体への出資交渉は暗礁に乗り上げたままだ。
鴻海は670億円(1株550円で9.9%)を出資する計画だったが、シャープの株価が急落したため、みすみす損失が出る出資に二の足を踏んだのである。台湾の金融当局も、鴻海のシャープへの出資を認可していない。
シャープは鴻海に代わるスポンサー探しに奔走した。半導体大手のインテルやクアルコム、パソコン大手のヒューレット・パッカードなどに出資とセットで共同開発を持ちかけた。
12月4日、米クアルコムから最大100億円の出資を受け入れることで大筋合意した。消費電力を大幅に抑えた、スマートフォン向け次世代パネルを共同開発する。シャープが高精細で省エネ性能が高いIGZO(イグゾー)の技術を提供する見返りに、クアルコムがシャープを支援することになったが、これとても100億円程度の出資では焼け石に水である。
13年3月に、鴻海との契約交渉の期限を迎える。交渉を延期するのか破談になるのか。金融機関は鴻海の出資を前提として、つなぎ資金を融資してきた。破談となれば難しい選択を迫られることになる。融資を継続するのか、法的整理をするのか。刻々と最終局面が迫ってくる。
一つだけいえることは、シャープがどうなるかを決めるのは銀行である。経営陣には、その資格も力量もない。(敬称略)
(文=編集部)
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