海上自衛隊、SNSで防衛機密を続々開示?潜水艦運航まで…
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海上自衛隊、SNSで防衛機密を続々開示?潜水艦運航まで… – Business Journal(12月19日)
海上自衛隊員による会員制SNSでの情報流出が止まらない。Facebook上では、現役海上自衛隊員の投稿により、潜水艦の行動のみならず、水上艦艇、航空部隊の行動、海上自衛隊員の人事、隊員間の人脈、考え方など、かつて各国の情報関係者が収集に難儀したであろう情報が、実に容易に読み解けてしまう状況だ。
●名札をつけなくなった子どもたち……
地域によって多少の違いはあるかもしれないが、今、小中学校の生徒が胸に名札をつけて校外を出歩くことはない。都市部では、もはやこれは常識だ。
少なくとも10年くらい前までは、この年代の子どもたちは、必ず学校名と学年・組を示した名札をつけていたものだ。しかし今、彼らの胸元には名札はついていない。その理由について神戸市教育委員会に尋ねると、次のような回答が返ってきた。
「不審者対策のため、に尽きます。名札、すなわち実名とは重要な個人情報。不審者が児童・生徒の実名を知ることで、なにがしかのとっかかりとなり、性犯罪をはじめ、さまざまな犯罪、不審事案を起こすことを未然に防ぐため」(神戸市教育委員会)
例えばAという児童の実名を不審者が知ったとしよう。これにより学校側に「Aという児童の知り合いです」などといってAに近づく。あるいは不審者が接触したいターゲットがBという児童であった場合、Bという児童に「Aちゃんのおじちゃんだけど、ちょっと一緒に遊ぼうか」などと言い寄ってくる可能性がある。
そうした予測される犯罪を未然に防ぐため、実名という「重要な情報」を秘匿する目的で、校外では名札をつけないように厳しく指導しているのが、現在の小・中学校の実情だ。
●セキュリティへの意識は小学生以下…
ところが「潜水艦の町・神戸」にて、三菱重工業や川崎重工業の造船所付近を歩いていると、時折、作業服姿の海上自衛隊員と出くわすことがある。その際、必ず胸元についているのが実名をフルネームで示した名札だ。
【海上自衛隊員の名札】
(艦名) | (職種)
ーーーーーーーーーーーー(色付のライン)
(実名)
この名札の意味は、所属している部隊が左上、右上に職種、そして実名がフルネームで記載されている。上下を2分する色付きのラインは、所属する分隊【編註:幾つかの職種を束ねた艦内組織。陸上自衛隊の中隊に当たる組織】を示すものである。赤色なら1分隊、黄色なら2分隊、青色なら3分隊といった具合だ。
布地で縦5cm・横10cm程度の大きさで、結構遠くからでも何が書かれているか識別可能な大きさだ。現役海上自衛隊幹部A氏によると「そもそも艦内で遠く離れた場所からでも識別しやすいよう、それくらいの大きさにしているのではないか」という。
●潜水艦乗員もFacebook上に実名で書き込み
さて、神戸にある造船所付近で、筆者が偶然見かけた潜水艦乗員について、名札に書かれた名前をFacebookで検索すると見事にヒットした。Facebook上のプロフィールには、「防衛省・海上自衛隊」という勤務先のほか、卒業した高校まで経歴が丁寧に記載され、投稿には自らのものと思われる顔写真も含まれている。
またFacebook上の「友達」も公開設定なので、交流関係もすべて丸わかりだ。なお、この潜水艦乗員の友達の中には「潜水艦勤務」と記載している者、最近まで潜水艦の先任伍長(下士官の総元締め)をしており、現在は、呉の潜水隊の隊庶務という陸上勤務をしている者なども含まれている。
加えて、この「友達」をたどっていくと、海上自衛隊の潜水艦乗り下士官たちの総元締めである「潜水艦隊先任伍長」とプロフィール上に書き込んでいる者もいた。
●潜水艦の運航情報までカンタン入手
この潜水艦乗員A氏の投稿によると、搭乗する潜水艦は、今年6月22日時点では兵庫県・神戸市におり、その後、7月に広島県・呉に入港。また、Facebook友達による書き込みから、この乗員が乗り組んでいる潜水艦の母港は呉であることはほぼ確実だ。
そうすると広島県・呉市に司令部を置く、第1潜水隊群所属の第1・第3・第5潜水隊に属する潜水艦のうちの1隻であることは間違いない。
そして今年9月3日には、鹿児島に入港したとする冒頭の写真が、リアルタイムで掲載された。
自衛隊鹿児島地方協力本部のHPによると、今年9月3日から同7日まで鹿児島港沖で潜水艦の出入港予定が記されている。よって、この潜水艦乗員が乗り組んでいる潜水艦の写真は「B」であることが判別できる。
「B」が配備されているのは、第1潜水隊の3隻、もしくは第3潜水隊の1隻だ。このうちのどれか1隻であることも読み解けてしまう。
他方、Googleで検索すると、A氏がYouTubeに今年9月7日鹿児島を出港する潜水艦の様子をアップしている。これを見ると代将旗もしくは隊司令旗と思われる旗がマスト上に掲揚されているようにも見える。そうすると、第1潜水隊群司令をはじめとする司令(1等海佐)クラスが乗艦していることもまたわかる。
●対策は後手に
筆者が偶然見つけた潜水艦乗員の名札から、重要な防衛機密であるはずの潜水艦の行動、乗員の交友関係、情報セキュリティの意識なども、ここまでわかってしまうのだ。
もし筆者が、この潜水艦乗員を「知っている」と称して、神戸の造船所付近を歩いている潜水艦乗員に近づき、なにがしかのとっかかりを見つけて、潜水艦乗員と知り合いになり、さまざまな情報を聞き出せてしまう。
小中学校のほうが、情報セキュリティに関する意識はよほどしっかりしている。なぜここまで日本の防衛情報は“オープン”なのか?
「海上自衛隊でも、上層部、とりわけ年配の高級幹部は危機感を抱いている。しかし年配の下士官クラスの中には、まだまだ情報セキュリティへの意識が薄い者も多い。問題を把握はしているが、具体的対策はなんら講じられていない。組織が大きすぎるので、問題を把握し、対策を講じるにも時間がかかる」(現役海上自衛隊幹部B氏)
ようやく重い腰を上げ、この種の問題の対策に取り組んだとき、海上自衛隊に関する情報は、すでに諸外国やテロ組織によって丸裸にされた後なのかもしれない。
(文=陳桂華/ITライター)
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