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『30歳キャリア官僚が最後にどうしても伝えたいこと』著者・宇佐美典也インタビュー

「33万2,000円」! 自身の給与を公開した元官僚が見た「霞が関と永田町」の懲りない面々

──終電を逃すことも多いのですか?

宇佐美 忙しい時期には泊まりが多いですね。一番忙しい時期は、週に1~2回しか自宅に帰れません。ですから、体調を崩す人も出てきます。なにしろ業務量が膨大なので。ただ、中には、なんのためなのかと疑問に思うような業務もあります。

──例えば、どういう業務ですか?

宇佐美 政権与党が頻繁に作る「○○戦略」の編集作業などです。内閣が替わるたびに毎回作り直させられるのですが、そういう「○○戦略」の大半はその都度新しく一から作るのではなく、既存の政策の見せ方を変えてうまくまとめ直しているだけですから、本質的には何か新しい価値を世の中に提供しているわけではないんです。そもそも戦略っていうのは毎年毎年変わるようなものであってはいけないわけですしね(笑)。ただ政権側の発想からすれば、そういった戦略をまとめて発表すれば「我々はしっかりした戦略を持っている」と世間に説明できるというだけです。そのわりには資料作成や予算要求のやり直しの作業が膨大なんですよね。小泉政権くらいの長期政権だと腰を据えて戦略の実施に取り組めるんですが、こう毎年のように政権が替わっては戦略の企画・取りまとめの作業で手いっぱいで、肝心のプロジェクトのマネジメントまで手が回らなくなるというのが、ここ最近の実情でした。そろそろ安定した内閣ができてほしいと、切に思います。

──宇佐美さんは、現役官僚として給与をブログで公開して話題になりました。8年目で手取りにして33万2,000円。東大の同期で民間企業で働いている方と比べると、決して多くはない。残業代はつかないのですか?

宇佐美 中央官庁は残業しただけ残業代が出るということではなく、部に残業代がストックされていて、それを部のみんなで分け合うような感じです。例えば、100時間残業しても100時間分もらえるわけではなくて、あくまで決められた予算の上限の中で、管理職の裁量で配分する、といった形です。

──そういった厳しい労働環境だと、当然辞めていく人も出てくるわけですか?

宇佐美 お金の事情というよりは、さっき言ったように政治が混乱して意味のない仕事が増えたり、世間やマスコミからの過剰なバッシングに耐えきれなくなったり、といった総合的な労働条件が悪化してますからね。個人的にはバッシングが一番つらかったです。私の同期でも、省内全体を見渡して大臣と調整するような出世ポストに就いていた人間が辞めて、外資系のコンサルティング会社へ転職しました。また、私にとって一番ショックだったのは法令審査委員のトップを務めていた先輩が辞めて、外資の金融機関に転職したことです。大変頼りになる先輩で尊敬もしていたので、ショックでした。

──どうして、そのような出世を期待される人が辞めてしまうのですか?

宇佐美 繰り返しになりますが、一生懸命働いて頑張っても、それに見合う見返りが官僚機構で得られなくなってきているということなんだと思います。世間やマスコミからは批判ばかりですし、仕事の内容も政治が混乱する中で矮小化していく、給料も減っていく。そういう状況で外部から恵まれた条件でオファーを受けたら、誰だって心は揺らぎますよね。

──民主党政権になってから、そういった傾向は加速しましたか?

宇佐美 自民党政権時代から失望している人は多かったと思いますが、民主党はレベルが違いましたね(笑)。きちんと議論をし、合理性で物事を通すというのが官僚機構の原則なんですが、民主党政権になってからは議論すらせず「マニフェストで決まっていることだから」「党で決まったから」という政治的な理屈で一方的に決めてしまうことが多かったので。

──議論する余地すらない?

宇佐美 そうですね。きちんとした指摘であれば、なんの問題もありません。しかし、政治力にモノを言わせて決められてしまうと、官僚としては、その存在意義を否定されてしまうことになりますからね。官僚機構にとって最も大切なことは「合理性」なんです。国民の多くはマニフェストを隅から隅まで読み込んだ上で全面賛成していたわけではないのですから、そういった人たちのことも考えつつ、マニフェストに掲げられた項目を、本当に良いことなのか、スピードを重視しつつも個別に検証する必要が本来あったわけです。でも民主党政権は、そういった丁寧な議論の積み重ねをせずに、ひたすら政治力で押し切ろうとした。そういう姿勢に、やってられないという気持ちになった官僚はたくさんいたと思います。

──最近メディアでは、経産省出身の古賀茂明氏が活躍しています。宇佐美さんはブログで同氏の言動について「目に余る」と書かれていますが。

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