「33万2,000円」! 自身の給与を公開した元官僚が見た「霞が関と永田町」の懲りない面々
#本 #インタビュー
(ダイヤモンド社)
キャリア官僚というと、「実質的に日本を動かしている権力者」などとしてマスコミや国民からやり玉に挙がることが多い。しかしながら、彼らが何を考え、実際にどういう仕事をしているかは、国民にはなかなか見えてこない。
2012年2月、経済産業省在職中にブログで自らの給与や労働環境、政治に対する見解などを掲載し話題となり、その後、同省を辞職した宇佐美典也氏。今年9月にはブログでは書ききれなかった自らの生い立ちから官僚制度の問題点、日本への提言までをまとめた『30歳キャリア官僚が最後にどうしても伝えたいこと』(ダイヤモンド社)を出版し、話題となっている。
今回、宇佐美氏に「官僚の労働環境」「民主党政権」「経産省OB」などを中心に話を聞いた。
──宇佐美さんは、経済産業省でキャリア官僚として働いていたわけですが、どんな仕事をされていたのですか?
宇佐美典也氏(以下、宇佐美) 経産省では、知的財産や技術開発、企業立地といった専門的な分野の法律づくりに携わっていました。その後経産省の外郭団体であるNEDO(独立行政法人・新エネルギー・産業技術総合開発機構)に出向していた頃は、電機・IT分野の国家研究開発プロジェクトのマネジメントを担当していました。
──NEDOの仕事ってイメージしづらいのですが、具体的には?
宇佐美 一言で表すと「組織の枠を超えて日本の英知を結集させ、オールジャパンの体制で最先端の技術開発プロジェクトを実施する」といったところです。もう少し説明すると、学会で注目されているけれど、まだ使い道がはっきりしないような革新的材料や電機分野など国際的な性能競争が激しい技術領域で、産学官が結束した国家研究開発プロジェクトを立ち上げ・運営することが仕事でした。といっても、日々の仕事は地味で、民間企業や大学に対して「新しくこういった研究開発をしましょう」と提案して回り、企業同士が協力するための基本的なフレームワークを作って技術開発のロードマップを描き、政府に予算を要求し、協力事業者を公募して、事業者とプロジェクトの方針や予算の割り当てを調整する、といった仕事をしていました。
──新規の研究開発プロジェクトのフレームワークは、官僚が作るんですか?
宇佐美 一応、世間ではそういうことになっていますが、実態はそうでもないケースが多々あります(笑)。特に私が在籍していた期間も含め、ここ10年ほどは、経産省の官僚ではなく、実際には民間の事業者が提案し、それを官僚が書いたようにお化粧するといったケースも結構ありました。NECや東芝といった民間事業者のコンソーシアムが「こういう新しいことをやりたい」と官庁にプロジェクトを持ち込み、あたかもそれを官僚が描いたような形にするのです。
しかし、NEDOのプロジェクトに参加する民間事業者は大企業が多く、そういった組織からはなかなか新しいアイディアが生まれないのが現実です。そこで、私が担当していた範囲ではNEDO内の人間が汗をかいて、なるべくベンチャー企業や若い研究者のような新たなプレーヤーを体制に入れるように心がけ、既存の企業の技術力と新しいプレーヤーの柔軟な発想・知識を組み合わせることを意識していましたね。
──民間事業者との付き合いは難しいのではないですか? 官僚と民間事業者の癒着などと非難されることも考えられますし。
宇佐美 官僚機構は意思決定のプロセスが複雑なので、民間事業者との話し合いの場でハッキリとした返事ができない難しさはあります。本書の中でも、交渉の場面では「首をナナメに振る」と表現しましたが、「こういう方向で検討しましょう」程度にしか言い切れないのです。逆に軽率な発言をしてしまうと言質を取られ、あとで関係者から激しい突き上げや批判を受けることになってしまう。そういう微妙な声色の使い方には気をつけました。
──民間事業者と宴席を共にすることはありましたか?
宇佐美 私のポジションだとあまりなかったのですが、もう少し上のポジションだとあります。もちろん、飲食代は折半です。少なくとも、そういうことにはなっています(笑)。
──世間一般のステレオタイプな見方だと、官僚のような公務員はいい給料をもらって、定時で仕事も終わって、家でゆったりしていると思われがちですが、実際の官僚の生活はどうなんでしょうか?
宇佐美 入省してから4~5年目までは、100時間程度の残業が当たり前です。忙しい時期だと200時間、緊急事態が発生すれば300時間の残業に及ぶこともあります。ですから終電帰りが基本で、夜の11時前に帰ろうものなら「今日は早く帰って申し訳ございません」という雰囲気です(笑)。
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