「何もかも違和感だらけの作品だった」幾原邦彦監督が語る、『ウテナ』と故・川上とも子の追憶
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でも、本当のことを言いますと、幾原監督からこのお話をいただいたときに、どんなに監督が悔しく残念に思われているか、本当に私にはわかったんです。なぜかと言いますと、主役を演じたとも子がいなくなってしまったあとのウテナがどうなるか、やはり監督としても心配だし悔しかったと思います。画を描かれたちほさんと、おふたりが揃って病室にお見舞いに来てくださったときに、とも子が『あぁいいな、私も早く元気になって、またあのふたりと一緒に仕事がしたい!』と、ずっと言っておりました。
ここにいるみなさま方のお顔がちょっと、ここにいるとよく見えないのですけれども、とも子のことを思ってくださっている方たちだったんだなと、すごくわかりました。本当にありがとうございます」
「川上とも子の15年前の仕事をこの環境で聴いていただけるということに、本当に僕も興奮している」(幾原監督)、「川上さんが『終わるのが寂しい、寂しい』と半べそをかきながら何度も言っていたことが印象に残っています。すごくこれに入れ込んでいたなと思います。その生きた証しのような『ウテナ』をみなさんにもう一度見ていただけることは、川上さんにも本当に幸せなことだと思います」(さいとう)という言葉に送られ、休憩を挟んで上映が始まると満場のファンから拍手が湧き起こる。「オレのハートに火をつけたぜ」という台詞の場面では笑いも。本当に見たい人だけが集まったイベント上映ならではのいい雰囲気だ。
音の迫力も劇場ならでは。ズン、と腹に響く拡がりや重さは、決闘に向かうシーンで流れる「絶対運命黙示録」のメリハリをも強調していて、より物語に引き込まれる効果があるのではないかと思えるほどだった。
第1部終了後はプレゼント大会。原画が多数掲載されたセガサターン版ゲームソフトのおまけ資料集など、お宝を詰めた袋が当選者10名に手渡された。幾原監督がHDリマスター版の手応えを「思ったよりよかった。16ミリをこのサイズ(スクリーン)に拡大するわけだから大丈夫かと思ったけど、きれいだった。デジタル化に手間をかけているので、なんとか見られるレベルになっている。今のところ大丈夫。よかったでしょ?」と語り、問うと、大勢の拍手が返ってきた。
「(仕事が煮詰まったときなどに)黒薔薇編の世界って行ってみたくない?(※懺悔室のような場所が出てくる)」という第2部、「暁生が大活躍。たぶんこの音響で見るとすごいと思います。クルマの音だけで来ると思うんですよね。ガーッと。とおっ! って飛びますよね。当時、さいとう先生が衝撃を受けていましたね。『ああ、変態なんだ』と(※無意味なほどにシャツがはだけてポーズをとっている)」という第3部の最終回までの上映を終えると、時刻はもう始発が動く5時30分。
第1部後のトークでは、別のセレクションでの上映会を実現すべく動いていることも明らかにされた。今後も続くお祭りへの期待も含め、満腹といった感でファンはそれぞれの家路についた。
(取材・文=後藤勝)
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