そんなバカな……埼玉で最も有名な“山田”が単行本に!!『愛の山田うどん』
#本
もはやミイラ取りならぬ“かかし取り”状態で、2人はすっかり山田うどんに絡め取られることとなった。
ベテランライターにもかかわらず、もはや、御用学者ならぬ、“御用ライター”と化している2人。だが、御用学者と違うことは、金が入ってくるわけではないこと、そしてすでに山田うどんが望む以上に愛してしまっていることだ。
「この時期、北尾トロと熱心に語り合っていたのは『山田に僕らの気持ちは伝わっているのか?』であった。いやぁ、もう中学生の恋心みたいなレベルだ。(中略)もう、おいおい、これ両想いだったらどうするよ? みたいな感じでヒャーヒャー騒いでいた」(本文より)
50歳を越えた大人2人が、山田うどんにはしゃぐ風景。それは、“異常”以外の何物でもない。山田うどんへの愛が、人を狂わせたのだ。“山田狂い”となった2人の論考には歯止めが利かない。高度経済成長、モータリゼーション、郊外化、そして「埼玉性」……社会を取り巻くあらゆるキーワードは、山田うどんの歴史を語るための参照項となってしまう。
日常に、何気なく寄り添った存在に、僕たちは気づくことができない。それがなくなってはじめて、その存在の大切さに気づくことは多い。田んぼの片隅で、かかしが守ってくれていることに、僕らは気づくことができない。日本人の食卓に、うどんが欠かせないものだったことに、僕らは気づくことができない。「丸亀製麺」や「はなまるうどん」など、讃岐勢力の躍進は著しい。しかし、関東に生まれた僕らが食べてきたうどんは、あんなにシコシコとしたコシのあるものだっただろうか? 記憶の中にあるうどんの歯ごたえを思い出してほしい。それは、もしかして山田うどんの味だったんじゃないだろうか?
(文=萩原雄太[かもめマシーン])
●えのきど・いちろう
1959年生まれ。コラムニスト。中央大卒業。大学時代に創刊したミニコミ誌「中大パンチ」が話題となり、それをきっかけにフリーライターに。主な著書に『我輩はゲームである。』『F党宣言!』など。
●きたお・とろ
1958年生まれ。ライター。「本の町」プロジェクトスタッフ。「季刊レポ」編集・発行人。主な著書に『裁判長! ここは懲役4年でどうすか』『駅長さん! これ以上先には行けないんすか』など。
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