“使い捨て”ファストファッション人気を支える、新・生産国の劣悪な労働環境
#海外
11月24日、バングラデシュの首都ダッカ郊外にある輸出向け衣類製造工場で火災が発生。工場内で働いていた貧困層の若い女性を中心に、120人以上が死亡する大惨事となった。
9階建ての工場内には、火災時の非常口が備えられていなかったという。火は地下から一気に広がり、犠牲者の多くは火の手から逃れようと、上層階から飛び降りて死亡したものとみられる。
この工場では、世界最大のスーパーマーケットチェーン「ウォルマート」やヨーロッパのアパレルチェーン「C&A」などに製品を納入していたことが明らかになっており、下請けに対して圧倒的な立場にある巨大クライアントの企業責任を問う声も上がっている。
人件費の安さから、中国に代わる世界の工場となりつつあるバングラディシュには、ファストファッションを中心に、世界のアパレル企業が生産や調達の拠点を構えている。日本企業としては、2010年にユニクロが進出している。
しかしその一方では、危険で劣悪な労働環境が問題視されている。バングラデシュ国内の輸出向け衣類製造工場では、06年以降、火災だけで700人以上もの労働者が死亡しているのだ。そんな危険な環境で働く彼らの最低賃金は、月収にして3500円ほどで、苦しい生活を強いられている。
今回の火災をきっかけに、国内では同じく衣類製造工場で働く工員らによる、労働環境と待遇の改善を求める抗議デモが散発している。労働者らによる反発を受け、繊維業者らによる業界団体は、火災犠牲者への補償を支払うことを決定。しかしその額は10万円ほどにすぎないという。
手ごろな価格で、使い捨て感覚で楽しまれることも多いファストファッション。消費者あっての雇用であることも確かだが、そうした低価格の裏には、劣悪な環境と待遇での労働を余儀なくされている貧しい人々がいることを知っておくべきだろう。
(文=牧野源)
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事