総資産10兆円!“移民”中国富裕層の海外脱出が始まった!
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総資産10兆円!“移民”中国富裕層の海外脱出が始まった! – Business Journal(11月19日)
前回、中国の格差社会の背景には、正規の給与以上に表に出ない収入があるというレポートをお届けした(『反日デモは約100兆円の賄賂が原因…数字で知る中国の経済格差』)。特に、公務員や国営企業の幹部は、給与以外にもさまざまな恩恵を受けていると言われる。給与など正規の収入は「白色収入」と言われ、賄賂など非合法な収入は「黒色収入」、その中間を「灰色収入」と言う。実は「黒色収入」と「灰色収入」の表に出ない「隠性収入」が、彼らの収入の大半を占めている。
例えば「紅河」というタバコは1カートン2300元(約3万円)する。さらに「利群」は1カートン5000元(約6万円)。「天価煙」とも呼ばれているこれらのタバコは、喫煙し味わう為に買われるのではない。あくまでも贈答用に買われる。だが、もらった人間はこれらを吸う事は無く、すぐに転売して現金化するのだ。こうした贈答習慣が、同国での賄賂の象徴になっている。
これらの収入は、中国当局が把握している統計には表れない収入であり、格差のもとになっている。そして、中国の抱える隠れた問題の一つに、これらの富裕層が海外への“逃避”を考えており、その資金が海外に“避難”している現実があるのだ。
中国では70年代末に、密出国や出稼ぎのため、多くの人民が海外に渡った。80年代には留学ブームが到来し、多くの大学生が海外で学んだ。そして現在、移民の主体は富裕層による資産の海外逃避である“投資移民”に主体が移っているようだ。
1000万元の投資資産を持つ同国富裕層の14%が既に海外への移民を決め、46%が移民を計画中だと言われている。1億元の投資資産を持つ富裕層の27%が既に移民の手続きを終えている。さらに「双重国籍」(中国で二重国籍を表す言葉)を持っている人間が、政府幹部の中にもいると言われている。
90年代半ば以降、経済事犯で海外に逃亡した政府、公安、司法、国有企業幹部は、1万6000人から1万8000人いると言われ、彼らが海外に持ち出した人民元は8000億元(約10兆円)にのぼると言われている。
11年には、2969人の中国人が米国移民局に投資移民ビザを申請し、同年に投資移民ビザが認められた移民のうち75%を中国人が占めた。中国では、経済成長の波に乗って富を得た人間、あるいは裏経済によって富を得た人間、つまり中国を利用して富を得た人間の多くが、その資産を海外に移し、自らが移民になっていく。
58年に中国産の白黒テレビ第1号が生産され、78年には上海でカラーテレビの生産が開始された。86年には白黒テレビの生産は世界一となり、12年に中国は世界のスマートテレビの市場の4分の1を占めるまでに成長した。93年の深圳で個人が所有していた自動車台数はわずかに2100台だったが、10年後の03年には20万台となり、4年後の07年には100万台、5年後の12年には200万台になった。
まさに“飛ぶ鳥を落とす勢い”の成長を続けている中国は、その裏で政治の腐敗、社会的なモラルの低下、政治権力と結びついた特権階級による富裕層の誕生、権力と結びつくための賄賂、裏社会、地下経済といったさまざまな問題を抱えた。それが、中国が最も頭を悩ませている“格差問題”と強く結びついている。
しかし、今や、こうした腐敗によって誕生した富裕層すらも、中国という国家から逃げ出そうとしているのだ。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)
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