殺された街、牛、心…福島警戒区域内で積み上がり続ける”屍”
#原発 #東日本大震災
福島第一原発から半径20キロ圏内は警戒区域に指定され、同区域内への立ち入りは法律で厳しく制限されている。原発事故前、同区域では牛約3500頭、豚約3万頭、鶏約44万羽が飼育されていたが、事故後は、鶏は全羽、牛や豚はその過半数が餓死した。生き残った家畜は、国の指示で殺処分が今も実施されている。
そんな中、自身の被ばくを顧みずに事故後も警戒区域に残り、牛の世話を続けている農家がいる。吉沢正巳(58歳)。吉沢の牧場から福島第一原発までは約14キロ、牧場から排気筒や復旧作業中のクレーン群が見える。
「ド~ン、ド~ンと2回、花火を打ち上げるような音がした」
2011年3月14日の3号機建屋の爆発音と立ち上る噴煙を目の当たりにした吉沢。だが、逃げ出さなかった。
「数日もすると、近所の牛舎では、痩せ細った牛が水や餌を求めて悲鳴を上げ、その隣では牛の死骸を豚が食べている。まさに地獄のような光景だった」
それから約1年8カ月たった今、吉沢の牧場では約400頭の牛が毎時約3マイクロシーベルトの環境下で飼育されている。被ばくした牛は、当然売り物にはならない。
「被ばく牛を原発事故の生き証人として、俺は牛と運命を共にする」
国は警戒区域内での牛の飼養どころか、餌の搬入さえ認めていない。牛は栄養失調に陥り、弱い個体から次々と死んでゆく。これまで約100頭が死んだ。写真は、牧場内にあるその”墓場”だ。昼間はカラスが、夜になると野良化した犬が、その死肉をむさぼりにやってくる。
「深い絶望の先には、きっと希望がある」――牛飼い吉沢の闘いは始まったばかりだ。
(針谷勉)
『警戒区域』
原発事故後、福島第一原発から半径20キロ圏内を警戒区域として設定。市町村長の許可がない立ち入りは禁止され、違反すると10万円以下の罰金又は拘留となる。
■衝撃写真と物語!緊急出版
『原発一揆 警戒区域で闘い続ける~ベコ屋~の記録』
警戒区域内に取り残された牛たちの命を守るため、被ばく覚悟で牧場の維持を決意した吉沢正巳氏。彼が国や東電と闘いながら、絶望の淵で「希望の牧場」を生み出すまでの記録をまとめたフォトルポルタージュ『原発一揆』が、小社から発行された。本書には「原発事故の真実」が収められているが、ここに掲載した写真もその”一幕”だ。
著者/針谷勉 発行/サイゾー 価格/1365円
【「サイゾーpremium」では他にも『原発』を多角度からぶった斬る記事が満載です。】
・事故処理の下請けはヤクザだけじゃない!! 原発お膝元のイビツな利権構造
・新左翼がオルグしている!? 大手マスコミでタブー視される首相官邸前反原発デモの現場
・アウトローが語る原発労働の実態 久田将義×鈴木智彦「東電はヤクザを黙認している」
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