「中国の動物園は雑すぎる!」日本だからこそできた動物目線の写真集
#リリー・フランキー
「ヤベェ。マジでかぁー。だーら、ちゃんとセーブしとけって言ったべ」と、カメラ目線でぼやくキリン。まっすぐカメラを見つめながら、「あ・・・! すいません・・・。人違いでした・・・」と謝るプレーリードッグ──。
写真家・橘蓮二が撮影した“カメラ目線”の動物たちに、リリー・フランキーが謎のひと言をつけた世にも不思議な写真集『どうぶつぶつ』(パルコ出版)。写真でボケる大喜利のようでもあり、人間の縮図を動物で表現した深い哲学書のようでもあり……これは一体、何の本なの? 著者の2人に率直な疑問をぶつけてみた。
「まあ、歯医者の待合室か何かに置いてあって、治療前に読んでやんわり癒やされてもらえたらうれしいって本なんですけどね。そもそも、動物を真っ正面から見つめる機会って、滅多にないじゃないですか。この珍しい構図だけでも十分に面白いと思います。言葉に関しては、なんの前情報もなく写真を見て、感じたことをそのまま書きました。ゴリラなんて完全にヤクザの親分にしか見えなかったし、派手なクジャクは着飾ったおばさんにしか見えなかった。その印象をコメントにした感じですね。多分、クジャクはオスだと思いますが(笑)」(リリー)
ひたすら動物の正面写真が続いていく構成になっているので、リズムよくすらすら読めてしまう本書だが、よく考えてみると、大きさも棲息している場所も動物によってバラバラなはず……。撮影するのに苦労も多かったのでは?
「すべて真っ正面から平行に写しているので、キリンは背が高すぎて大変だったし、逆にカメなんかは地を這うようなところにいますからね。鳥たちも小刻みに動くから撮影が難しかった。というか、そもそも動物たちは撮影に関してまったく協力してくれません。だから真っ直ぐカメラ目線になってくれるまでひたすら待つ感じになるので、夏なんかは熱中症になりかけました。しかも、近づきすぎると動物たちも怒りますからね。ここに登場するラマなんか、唾を吐く直前の顔です。これはラマにとって“威嚇”の表現なんですが、ホント、危機一髪でした(笑)」(橘)
これらの撮影はすべて、動物園の全面協力のもとに行われたとか。動物園に寄った際は、動物たちに“カメラ目線をいただく”という鑑賞方法も、面白いかも。
「それにしても、日本の動物園は動物にも観客にも優しいですね。前に中国の動物園に行ったとき、トラと2ショットを撮らせてくれるサービスがあったんですよ。500円で。怖いし、別にまったくやりたくなかったんですが、コーディネーターさんがゴリ押しするんで仕方なくトラと隣に並んだんです。そしたら、トラが全然カメラの方を向いてくれなくて。それでも一向に構わなかったんだけど、コーディネーターさんがバンバントラの頭を叩くんで相当ビビりました。突然キレて襲ってきたらどうするんだって話ですよね。どう猛な動物も野放し気味だし、申し訳程度に設置された柵も超低くて頼りないし……とにかく、中国の動物園はすべてにおいて雑でした。多分、こんな企画は日本じゃないと成立しなかったと思います」(リリー)
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