町山智浩氏に聞く“日本人の知らないアメリカ”
#インタビュー #町山智浩
■アメリカ、中国、インドが三位一体で世界を支配!?
──では、今後アメリカはどこへ向かうのでしょう?
町山 いま中西部と南部では産業が崩壊しちゃったからスキルもないし、キリスト教原理主義だから高等教育を拒否して低教養な人たちが急増してるんですけど、彼らのような、「市民」として機能しない人たちをどうするのか。放っておくわけにもいかないから、アメリカはこれから大変な重荷を背負うことになります。
──日本も、ここ20年くらいで就職し損なった人たちがたくさんいますから、同質の問題を抱えていますね。
町山 加えて、いまアメリカの一流大学の学生の半分くらいは、中国やインド系のアメリカ人もしくは留学生に占められつつあります。だからシティバンクとかアドビとかぺプシとか大企業のCEOにもインド系が増えて来ました。逆に白人のエリートは減っています。
──学費が高すぎて大学に行けないアメリカ白人が増えている一方で、お金持ちの中国人やインド人がどんどん入ってくると。
町山 アメリカの中高生のレベルは先進国でも最低レベルですが、大学は世界一なんです。世界中のエリートがアメリカで学ぶから、、今後もアメリカは世界の「知的覇権」みたいなものを維持していくでしょう。ただ、中国とインド系のアメリカ人がアメリカの経済だけでなく、政治に加わるとどうなるのか。あるいは留学生たちが祖国に帰ってからどうするのか。おそらくアメリカで教育を受けた人たちはエリートになるでしょうから、中国もインドも変わらざるを得ないでしょう。当然、アメリカと両国との関係性も変わっていって、米中印の三位一体で世界を支配していくんじゃないですか。
──そこで日本は……。
町山 仲間に入れてもらえないでしょうね。日本からの留学生は激減していますし、政治家が英語できない国だし。
──ならば、この『USA語録』で英語の勉強を……。
町山 「まえがき」にも書きましたけど、まったく役に立たないどころか、うっかり日常で使うと銃で撃たれちゃうようなヒドい言葉も載ってますから(笑)。
(取材・文=須藤輝)
●まちやま・ともひろ
1962年、東京都生まれ。早稲田大学法学部卒。編集者として雑誌「映画秘宝」(洋泉社)創刊後に渡米。コラムニスト、映画評論家として「週刊文春」「ニューズウィーク日本版WEB」「クーリエ・ジャポン」「映画秘宝」などに連載を持つ。TOKYO MXTV『松嶋×町山 未公開映画を観るTV』、TBSラジオ『たまむすび』出演中。著書に『〈映画の見方〉がわかる本』(洋泉社)、『99%対1% アメリカ格差ウォーズ』(講談社)、『教科書に載ってないUSA語録』(文藝春秋)、『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』(文春文庫)など。
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