町山智浩氏に聞く“日本人の知らないアメリカ”
#インタビュー #町山智浩
──有権者がユダヤ人=ユダヤ教徒ということは、共和党のロムニーは「福音派」(プロテスタント系のキリスト教右派。共和党の支持基盤でもある)というカードを切れませんね。
町山 フロリダはキューバ系の移民も多いんですけど、彼らはとにかく「共産主義が嫌い!」っていう思想だけ。あとね、ロムニーは大失言やっちゃったんですよ。アメリカ国民の47%は所得税を払ってないんですけど、彼は「所得税払わないやつらのことなんかどうでもいい」って言っちゃった。この47%にフロリダの老人は全員含まれるんですよ、所得がないから。
──それは痛いですね。一方のオハイオは、どういう州なんですか?
町山 オハイオはもともと工業地帯で、東欧とかロシア系、あとイタリア系やアイルランド系の移民労働者が多い。彼らはプロテスタントではなくロシア正教やカトリックだから、やっぱり共和党にとっては戦いにくい。そもそもロムニーはモルモン教徒だから、キリスト教徒の支持を得にくいんです。その点、オバマはクリスチャンだからまだ有利なんですね。
──それにしても、たった2州が世界のリーダーを決定するって、とんでもない話ですね。
町山 そこに関しては、最近はアメリカ人も「国の運命を決めるのが、ド田舎の労働者と年寄りでいいのか!」って怒ってるんですど、どうしようもない。
──選挙のシステム上、重要な州である以上、そこに媚びるしかないんですね。
町山 ところがロムニーは、オハイオに対してもやらかしてるんです。オバマが09年に、経営破綻したGM(ゼネラルモーターズ)に公的資金を投入したとき、ロムニーは「自己責任で倒産させろ」って反対しちゃったの。結果的にGMは再生して自動車業界は救われました。で、オハイオには自動車工場もたくさんあるんですよ。大統領選に出るつもりだったら、絶対に言っちゃいけないことだった。
──『USA語録』『格差ウォーズ』共に、失言製造機のサラ・ペイリン女史など共和党の議員が出てきますが、ロクな人がいない……。
町山 日本よりはマシですけどね(笑)。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事