町山智浩氏に聞く“日本人の知らないアメリカ”
#インタビュー #町山智浩
町山 もちろんそれもあると思います。どっちもどっちなんですよね。日本の雑誌も中国の記事ばっかりでしょ? アメリカでも「タイム」や「ニューズウィーク」は毎回中国とインドですよ。この両国はいま中流層が拡大しつつある過程で、彼らはいずれ巨大な消費層になります。日本とアメリカがなぜ大国になったかというと、消費力があったから。国力というのは生産力だけじゃなくて消費力=中流層の人口も重要。その点で中国とインドのポテンシャルは計り知れないから、これはヤバい。
──逆にいえば、いま日本とアメリカが弱っているのは、格差が広がって中流層が崩壊しているからだと。
町山 中流がいない、一握りの金持ちとたくさんの貧乏人で構成される国のことは「第三世界」といいますからね。だから、いまやらなきゃいけないのは格差の是正なんです。
■フロリダ州とオハイオ州を制した者が勝つ
──今回の大統領選は、「新自由主義」路線の共和党ロムニー候補 vs.「富の再分配」を標榜する民主党オバマ大統領ということになりますね。
町山 ロムニーのは、金持ちがもっと金持ちになればトリクルダウン(滴り落ちる)する、つまり貧乏人もおこぼれに与れるという理論だけど、それって科学的な根拠がないし、すでにブッシュ政権で失敗してます。一方のオバマは、大金持ちに課税して財源を得ようとしてるけど、議会で共和党に反対されて、まだ一度も課税法案を通せていない。
──町山さんは、どちらが勝つと予想されます?
町山 オバマでしょうね。実はアメリカ大統領選って、フロリダ州とオハイオ州を制すれば勝つんです。アメリカでは共和党が強い州と、民主党が強い州がはっきりしているんですけど、どちらが勝つかわからない激戦州というのがいくつかあるんです。
──共和党が強い州では、民主党の候補は何をしても勝てないわけですね。その逆もしかりで、結果として、その激戦州での選挙戦がカギを握る。つまり一握りの州の結果が勝敗を左右してしまうと。
町山 中でもフロリダとオハイオは、歴史的に見ても非常に影響力が大きい。まず、フロリダで票を動かすのは引退したユダヤ系の老人たち。フロリダって、州の政策として高齢者の税金を優遇したりして老人を呼び込んでるんです。彼らがニューヨークなど他の州で稼いできたお金をフロリダで使わせるためにね。で、この老人たちの関心事は何かというと、自分たちの年金と医療保険だけ。だから、そこだけ気をつけて戦えばいいんです。
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