日本の万引き被害額は世界ワースト2位!? なぜ人は物を盗むのか――『万引きの文化史』
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また、16世紀後半のロンドンには、帽子屋、服地屋、眼鏡屋など、ガラスショーウィンドウの魅力的な店が並び始め、世界で最も豊かな大都市になり、万引き犯が激増した。この時に、いわゆる万引き、“ショップリフター”という言葉が登場した。
人はなぜ万引きをするのか――。著者のレイチェル・シュタイア氏は、何人もの万引き常習犯にこの質問をぶつけている。
「うまくいくと、すごく気持ちがいいの。ざまあみろという気になるわ」
「自分を貶めることが快感だった」
日本やアメリカなど、先進国で万引きをするのは、何も貧しい人が食う物に困って……というケースに限らず、中にはお金を持っているにもかかわらず、罪を犯してしまう人もいる。
物を盗むという行為がもたらす快感やスリル、誰かに対する反抗など、その背景にはさまざまな理由が付随している。
またアメリカでは、万引きを社会貢献でもしているかのように考え、正当化する人々もいるという。個人商店ではなく、大きなスーパー、大企業の商品ならば万引きが許され、むしろ、盗むことで金持ちと貧乏人の貧富の差を是正する、と考えているそうだ。
「万引きは文化である」かどうかは別として、日本では軽い犯罪と思われている万引きについて、全311頁という膨大なテキストに書き綴られた思いから、万引きという行為について、あらためて考えさせられる。
(文=上浦未来)
●レイチェル・シュタイア(Rachel Shteir)
イリノイ州シカゴのデポール大学演劇学部準教授および、美術学士課程「批評および劇作法」の主任を務める。「ニューヨーク・タイムズ」「ガーディアン」「シカゴ・マガジンズ」など、多くの新聞や雑誌に寄稿。著書に、ジョージ・フリードリー記念賞を受賞したStriptease:Untold History Of The Girlie Show,Gypsy:The Art Of The Teaseがある。
訳者略歴
●くろかわ・ゆみ
翻訳家。津田塾大学英文学科卒。主な訳書に『イーティング・アニマル』ジョナサン・サフラン・フォア(東洋書林)、『トラウマと解離症状の治療』サンドラ・ポールセン(東京書籍)、『バナナの世界史』ダン・コッペル(太田出版)ほか多数。
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