吹き替え声優界のおさ・羽佐間道夫が激白!「『ロッキー』はミスキャストだった」
#海外ドラマ
――とくに記憶に残っている回はありますか?
羽佐間 やっぱり初回の「USA爆発刑事 バズーカ小脇に救出作戦!!」ですよね。出勤中にいきなりバズーカでビルをぶっ放す刑事なんて、いくら喜劇とはいえ、とんでもないコミック作品だなと脚本を読んで驚いたことを覚えています。
――『ハマー』以外にも海外の刑事ドラマはいろいろありますが、羽佐間さんから見たこのドラマの魅力とは、どんなところですか?
羽佐間 警察をギャグでいじるっていうのは、日本には当時も今もないんですよね。『こち亀』みたいなのはありますけどね。こんなに常識外れの警官がギャグとして許されるって、日本ではできなかったと思います。漫才とかコメディを見ている感じで見られるというのがいいですよね。ハマーに関していえば、どこか温かさを持っているところが魅力ですかね。刑事というとギスギスしているイメージがありますけれど、ハマーは人間味とユーモアのある刑事。犯人を痛めつけたりするシーンはほとんどないんですよね。どんな嫌な奴でも凶悪な奴でも、説得するだけ。このドラマを放映していた25年前というのは、日本はバブルがはじけてだんだんとすさむような時代に突入し始める時だったんですが、そんな中で、お茶の間で何も考えずに笑える作品というのがよかったんじゃないですかね。
――吹き替え声優界の大御所として知られる羽佐間さんですが、『ハマー』以外にも、実にたくさんの役をこなされています。これまでに吹き替えた作品は7000本以上もあるそうですが、その中でもやっぱり『ロッキー』のイメージが強いですね。
羽佐間 シルヴェスター・スタローンは、僕が一番苦労した俳優なんです。僕の声はハイバリトンだから、スタローンとはトーンが合わないんですよ。だからその分、エロキューションで稼がなきゃいけない。年を取ってローバリトンになってしまったから、本当はファイナルなんてやりたくなかったんですが、「5までやっているから、ぜひ6もやってください」って頼まれちゃいまして。それに、実はスタローンって、あんまり好きな俳優じゃないんですよ。マッチョマンが嫌いなんです。ヒョロっとしているけど繊細さがあって、どこか温かみがあるとか、そういう役柄が好きなんですよ。『評決』のポール・ニューマンとか、『クロコダイルダンディ』のポール・ホーガンとかですかね。
――それは衝撃の事実ですね。
羽佐間 僕は最大のミスキャストだと思いますね。それなのに、羽佐間を代表するものは『ロッキー』になっちゃう。この長い吹き替え人生の中で、みんなの印象に残っているのは「エイドリアーン」と「動くなよ。弾丸が外れるから」だけっていうのは寂しいですね。それ以外にも傑作をいっぱい放っているのに……。もっとほかの作品も褒めてほしいですよ!
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羽佐間 いまバイオレンス映画が多いけれど、『ハマー』は一見バイオレンスに見えて、実は人間の温かさみたいなのを貫いている作品だと思うんです。こんな時代ですから、そんなところも見直して、ホッと和んでもらえればと思います。
(取材・文=編集部)
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