民主党は、年次改革要望書廃止に反発したアメリカに潰された!?
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民主党は、年次改革要望書廃止に反発したアメリカに潰された!? – Business Journal(10月26日)
民主党政権は、米国からの命令を聞かなかったために潰された――こう主張する衝撃的な新書が出版された。その新書のタイトルは『民主党大崩壊! 国民を欺き続けた1000日』(双葉社新書)。著者は2012年8月、民主党の消費税増税法案に反対し、離党した小泉俊明・衆議院議員(元民主党副幹事長、減税日本幹事長 茨城3区)だ。鳩山由紀夫元首相の側近としても知られ、与野党に幅広いネットワークを有し、政治の裏まで知り尽くしている人物だ。今回、小泉議員にインタビューし、その真実を語ってもらった。
――今回の新書は『民主党大崩壊!』という過激なタイトルで、民主党が崩壊した内幕を語っていますが、その崩壊は鳩山由紀夫政権の改革がきっかけだったとは驚きです。
小泉俊明氏(以下、小泉) マスコミ報道では、鳩山政権は沖縄・普天間基地移設問題の迷走の末に総辞職したようになっていますが、実際には、鳩山政権のいくつかの意欲的な改革によって米国側が反発し、総辞職するように仕向けたのです。マスコミ的には評価されていませんが、米国との関係の上では、既存の政治を見直した大きな改革が2点あります。東アジア共同体構想と年次改革要望書の見直しです。
まずは、東アジア共同体構想です。鳩山氏は総選挙3日前の09年8月27日、米国の「ニューヨークタイムズ」紙に「日本の新しい道(A New Path for Japan)」と題する論文を寄稿しました。これは、日本の外交戦略について持説を語ったものでしたが、米国主導のグローバリゼーションを批判し、格差是正や東アジア諸国によるコミュニティ形成の必要性を説いたものです。
9月には、国連総会出席のために訪問したニューヨークで鳩山首相は、中国の胡錦涛国家主席と会談し、欧州連合をモデルに単一通貨の導入の可能性も含めた東アジア地域の統一を目指す「東アジア共同体」の創設を提案。さらに、10月の東アジア首脳会議で「東アジア共同体」構想を発表したのです。
この鳩山氏の行動は、それまでの「米国依存」の政治から脱却する意欲的な改革でした。米国にはっきりものを言い、対等な立場で交渉に臨む姿勢を表したのです。
こうした姿勢は、年次改革要望書の見直しにも見られました。年次改革要望書とは、毎年10月に米国政府から米国企業の日本市場への参入を拡大するために日米規制改革委員会を通じて、提出されていた要望書です。この要望書に基づいて審議会に諮問され、答申書がつくられ、郵政民営化や公正取引委員会の強化といった米国に都合の良い法改正が行われてきました。鳩山政権が日米規制改革委員会を廃止したことで、年次改革要望書も廃止されたのです。
●拒否できない日本
――日本の規制緩和などの改革は、年次改革要望書を通じた米国の指示によるものだった。ノンフィクション作家の関岡英之氏がその著書『拒否できない日本――アメリカの日本改造が進んでいる』(文春新書)で、これらの事実が明らかにされ、国会でも取り上げられました。
小泉 鳩山政権は、それまでの年次改革要望書通りの改革が行われてきた対米追随型の政治を見直そうと、年次改革要望書を扱う日米規制改革委員会を廃止したのです。米国側はこれに猛反発し、その後、米国側は交渉のテーブルには乗ろうとしなくなります。国内的には脱「財務省」の政策を打ち出したことで、財務省も猛反発。鳩山政権は空中分解を始めます。
そして、鳩山首相の後任の菅直人首相に交代するや、オバマ大統領との第2回首脳会談(10年9月)で米国は、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加の検討を約束させます。それまでの年次改革要望書は個別法の改革を要求し、それに沿った形で法改正が行われてきました。
ところが、TPPは条約です。条約は国内法に優先するために、TPPで話をまとめれば、法改正よりも早く変更ができてしまう。個別に国内法を変えると3年から5年はかかることが、一度の交渉で変更できてしまうのです。米国にとっては年次改革要望書を拒否するならば、より国民にわかりにくい形で要望ができるTPPを日本に呑ませようと仕掛け始めたのです。
ただし、私は巷に流布するような「すべて米国がたくらんで世界を動かしている」といったような米国の陰謀論にくみするつもりはありません。日本の政治家は米国の指示に従うばかりではなく、自国の利益の主張をしていくべきではないかと言いたのです。
最近話題のベストセラーに、外務省OBの孫崎亨氏の著書『戦後史の正体』(創元社)という本があります。その中で孫崎氏は、日米の外交は常に米国からの圧力に対して、親米的な「対米追従」路線と、米国と距離を置こうとする「独立自尊」路線という2つの路線の間で、どのような選択をするかが最大のテーマだったと書かれています。小泉内閣のように親米的な政権は長続きし、細川護熙連立政権のように自主独立、アジアとの協調重視の政権は短命に終わるとも解説しています。
これは外交だけではありません。日本の政治、経済でのスタンスも、親米的な「対米追従」路線と米国と、距離を置こうとする「独立自尊」路線があり、その2つの路線の間でどのような政策をとることができるかが問われているのです。米国は当然ながら自国の利益のために主張し、行動します。ですから、米国の政策に同意する部分と反論すべき部分はあるはずなのです。
ところが戦後の日本は、親米的な「対米追従」路線が圧倒的に強いのです。当時のブッシュ大統領との蜜月関係を重視した小泉政権が典型でしょう。小泉政権がいかに日本経済を米国に叩き売りしたかについては、小泉政権時代に私は国会質問で追及しましたし、この新書でも小泉政権の新自由主義の問題点をまとめています。
●アジアからの侵犯が増えた原因は野田政権にあり
――鳩山政権に代わった菅直人、野田佳彦政権は「対米追従」路線を突き進み、消費増税に円高ドル安、TPPと米国にとって都合のよい政策を進めています。その結果と、して何度かの党分裂を繰り返してしまいました。
小泉 米国依存、財務省依存で、民主党は別の政党に成り代わったかのように大きく変わりました。まるで「対米追従」路線の小泉政権を引き継いだような政治を行います。その最たる例が消費増税です。
政権交代を果たした総選挙において国民に約束したのは、まずは増税をせず、特殊法人や天下りなどを廃止・見直し、無駄遣いを徹底的に削るとともに、予算の組み替えをして予算を捻出することだったはずです。ところが鳩山政権がツブれるや、財務省のレールに乗って安易に消費増税に突き進み始めるのです。15年以上続く、この不景気下での消費増税は消費者の負担が増し、景気がさらに悪化するのは火を見るより明らかなのに、です。
ですから私は、消費税増税法案の衆院採決で反対票を投じ(12年6月26日)、衆院国土交通委員会の筆頭理事を辞任しました(党員資格停止2カ月の処分)。8月8日の野田内閣への内閣不信任案には賛成の投票をし、翌日の8月9日には、離党届を提出したのです。
これほど野田政権には問題が多いにもかかわらず、8月8日に開かれた民主党の両院議員総会では「野田総理は決断をした。決断できる政治の復活だ!」などと、1年生議員の野田首相への礼賛発言が相次ぎました。反対意見が出てこないこの光景に、消費増税に賛成している国会議員たちからも、「この両院議員総会は反対意見もなく野田礼賛を繰り返すだけ……まるで新興宗教ではないか」という声が聞こえてきたほどです。確かに狂信者の群れのようです。狂信者たちが、日本を亡国の道へと突き進めるのです。
●各国首脳との会談もそっちのけの野田総理
野田政権がしたことは米国の言いなりの政治、消費増税だけ。これでは近隣諸国からもなめられます。消費増税の議論が最優先で、外交も後回しです。3月には、韓国でオバマ大統領をはじめ世界中のトップが集まり、核サミットが開かれました。各国首脳によるトップ会談が個別に開かれているのに、野田総理はどの国のトップとも正式な会談もせずに、この消費税増税の会議のために帰国してしまいました。しかも総理は、結局この会議には出席しなかったのです。外交が直接国民生活に大きな影響を与える時代に入ったにもかかわらず、この判断は明らかに国民の利益に反するものでした。
国内的にガタガタで、海外に目を向ける時間もないとなれば、近隣諸国は黙っていないでしょう。日本の領土である竹島に韓国の李明博大統領が上陸したり、尖閣諸島には台湾の活動家らが上陸をしようと試み始めるのです。自ら党が分裂するように動く政府です。これほどこっけいな政権運営はありません。海外からすれば、こうした政権のうちに、さまざまな上陸の既成事実をつくってしまおうと考えるでしょう。
野田政権には、早くNOを突きつけるべきでしょう。そう考えた私は、河村たかし名古屋市長、小林興起衆議院議員らとともに、新党・減税日本を立ち上げました。既成勢力に牛耳られた自民党でも民主党でもない第三極をつくるべく、尽力をしていきたいと考えています。
(文=松井克明/CFP)
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