芸術的格闘技“シラット”による映画革命だ! ジャカルタ発のアクション大作『ザ・レイド』
#映画 #インタビュー
層マンションにて肉弾戦から銃撃戦まで何で
もありなバーリトゥード戦を繰り広げる。
──主な舞台は高層マンションだけという極めてシンプルな設定。ブルース・ウィリス主演の人気シリーズの第1作『ダイ・ハード』(88)や、リュック・ベッソン監督の『レオン』(94)のホテルからの脱出劇などを連想させますが、よりスリリングな展開に仕上げていますね。
エヴァンス イエス。ストーリーをどう展開させていくかは、すごく考えたよ。通常のアクション映画をDVDで観るときって、どうしてもドラマ部分を飛ばしてアクションシーンを観てしまうよね? みんな、そうでしょ(笑)。この映画も、みんな格闘シーンが目当てだと思うけど、他のアクション映画みたいにドラマ部分を飛ばして観たいと思われないような展開にしたんだ。上映中は一切の油断が観客もできないような展開を考えたわけさ。もちろん緩急は付けているけど、ひと呼吸できても「いやいや、あの柱の後ろにはまだ敵が潜んでいるに違いない」と常にハラハラドキドキするようなアクション映画に仕立てたんだ。
──一切の無駄なシーンを削ぎ落とした作品が今回の『ザ・レイド』というわけですね。
エヴァンス そういうことだね。アクションシーンとアクションシーンのつなぎ部分に違和感がないようにまとめたよ。どうしてもこの手の映画は“脚本の10ページにつき1回のアクション”みたいなペース配分で、無理やりな展開になりがちだからね。つなぎ部分は休憩タイムじゃなくて、より観ている人たちの緊張感を高めるためのパートとして考えたんだ。つまり、『ザ・レイド』はアクション映画ではあるんだけど、サバイバルホラーでもあるんだ。ホラー的な演出、スリラー的な要素を盛り込むことで、観ている人の緊張感をずっと持続させているんだ。それに高層マンションに突入したSWAT部隊は途中から分かれてしまう展開になるんだけど、これによって異なるロケーション、異なるトーンや色調になることで、変化が出せたと思うよ。Aチームがギャングと格闘している一方、Bチームは別のフロアで逃げ場のない密室に追い詰められて……みたいに気が抜けない展開にしたんだ。
──主人公ラマが得意とするのは、インドネシアの伝統的格闘技シラット。エヴァンス監督はシラットのどこに魅了され、インドネシアで映画を撮るようになったんでしょうか?
エヴァンス 実はボクは6年前までは、シラットのことを知らなかったんだ。もちろん格闘技全般が好きで、カンフー、ムエタイ、柔道、合気道などのファンではあったんだ。それで格闘技好きなことからインドネシアでシラットについてのドキュメンタリー番組を撮ることになり、そのときシラットの奥深さを知ったんだ。ドキュメンタリーの撮影をしながら、目からウロコが落ちるような体験をいろいろしたよ。シラットには200以上の流派があり、その流派ひとつひとつに異なる哲学がちゃんとあるんだ。それにインドネシアはイスラム教徒が多いけれど、インドネシアではイスラム教よりもシラットの歴史のほうが古いんだよ。そして、何よりもシラットのスタイルが興味深かった。とてもフレキシブルで、いろんな環境に適応できるようになっているんだ。密室で1対1で戦う場合、広い場所で複数の敵に襲われた場合など、いろんなシチュエーションに応じた戦い方があるんだ。型がきっちり固まっておらず、いろいろと発展させて使うことができるし、他の格闘技の影響を受けて、今でも変化している。そこがすごく面白いなぁと思ったんだ。
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