「ノマドの女王」安藤美冬×「百獣の王」武井壮 ノマドワーカー・サバイバル対談!
#IT #武井壮
──今年『情熱大陸』への出演で注目を集めた安藤美冬氏。彼女が提唱するソーシャルメディアを駆使した「自由に生きるための働き方」というスタイルは、仕事に追われる世のリーマンたちの心を突き動かした。しかしその裏で、「いや、本物はこっちだろ!」と言われ、同時に注目を集めた人物がいる。家なしの本気ノマドライフを送るアスリート、武井壮氏。果たして真のノマドはどちらか? ついに直接対決の火ぶたが切って落とされる──!?
『ノマドワーキング』とは?……「ノマド」は「遊牧民」という意味。決まったオフィスなどではなく、カフェや公園、取引先のオフィスなどでノートパソコン、スマートフォンなどを駆使し、ネットを介して場所を問わずに仕事をするスタイルを、「ノマドワーキング」と呼ぶ。
武井 壮(以下、武井) 安藤さん、テレビに出演してましたよね。なんか『情熱大陸』(TBS系)みたいな番組だったような気が。
安藤美冬(以下、安藤) それ、『情熱大陸』ですね(笑)。
武井 あ、そうでしたか! 似たような番組いっぱいあるから。安藤さんがその番組に出演したときに、僕のツイッターにもすごい反響があったんですよ! 「武井壮のほうがノマドじゃねーか」みたいな(笑)。それで、安藤さんのことを知ったんですよね。
安藤 (笑)。私も武井さんのことはテレビで拝見しました。
──では、お互いのことはご存じなんですね?
武井 申し訳ないんですけど、安藤さんがどんな活動やお仕事しているかはわからないですが……。
安藤 もともとは、集英社という出版社に勤務していました。
武井 「週刊少年ジャンプ」の!?
安藤 そう、その集英社です(笑)。7年間、広告部ではファッション誌の広告営業、宣伝部では書籍単行本のプロモーションに関わる仕事をさせていただきました。そして2年前に退社して、フリーランスとしての活動を始めたんです。でも実は、退社する最後の最後まで、「自分はこの仕事をやるんだ」ということを決められないままで。武井さんみたいにアスリートとして生きる、みたいな一生を捧げるだけの(仕事の)対象も覚悟もなかった。それがコンプレックスだったんですけど、じゃあやりたいことが見つからないなら、それを逆手にとって「仕事相手に領域を決めてもらおう」と発想を転換させました。ソーシャルメディアを通じて日々自分のことを発信していくについれて、学校の講座を企画したり、ウェブサイトのディレクションをしたり、コワーキングスペースに対して働く視点を提供するアドバイザリー業務をしたりと、「安藤さん、こんな仕事をしませんか?」とさまざまな依頼をいただくようになったんです。
武井 それで、安藤さんがノマドワーキングの急先鋒といわれているわけだ。
安藤 時々勘違いされますけど、別にスタバでMacBook Airをいじってかっこつけて仕事するのがノマドワーキングじゃないんですよ(笑)。自分で好きな仕事を作り出したり、組織に縛られずに自由でありたいという欲求をワークスタイルに合わせて生きていくことの、選択肢のひとつとしてノマドがあるんです。ノマドワーカー自体は昔から一定数いましたし、別に新しい働き方でもなんでもないですけどね。
──武井さん、安藤さんと自分のスタイルを比べてみてどうですか?
武井 まず、僕と一番大きく違うのは、僕は会社勤めをしたことがないということ。そういうことからは、身体能力だけで逃げ切ってやろうと思ってますから!
──そこまで断言されると、なんか心強いですね。
武井 で、僕は今もいわゆるノマド的な生活をしていますけど、もともと小学生の頃からその気持ちがあったんです。体育の授業は大好きだけど、週に3~4時間しかないじゃないですか。それ以外の時間は、ずっと嫌いな勉強の時間だったわけですよ。1日1時間好きな授業があっても、毎日4時間、1日の6分の1は嫌いなこと。6年間通ったら1年分ですよ! その頃から、「なんで楽しいことだけで選んじゃだめなのかなぁ?」と疑問に思っていて。それが今の僕の活動の根源になってますね。だから今は、ウキウキすることしかしてません。
安藤 すごく共感します! 今すぐ立ち上がって拍手したいくらい! 私はよく、「”What”から”How”の時代が来た」と言っているんですね。これまではどの会社に入って、なんの仕事をするか(What)が重要視されてきました。もちろん、それらも働くうえでの重要なポイントなのですが、これからの時代において大事なのは、どんなふうに人生を生きたいのか、そしてどんなふうに働きたいのか(How)だと考えています。まずやりたくないことを決めたり、ウキウキすることに動かされていったりする上で、最後にピースが埋まるように仕事がハマればいいと思うんですよ。私の場合は、そのHowを徹底して突き詰めたら、ノマドというスタイルに行き着いたんです。
──なんだか、すっかり”ウキウキ”がお2人の共通テーマになってるようですが……そのウキウキを求めるようになった原体験ってあるんですか?
武井 僕が子どもの頃は、褒めてくれる人が身近にいなかったから、先生に褒められたり、友達に「壮君すごい!」って言われるのを渇望してたんですよ。承認欲求が強かったというか。だから今でも「武井壮すごい!」って言ってくれることに喜びを感じますし。
安藤 私の場合は、子どもの頃から「自由に自分らしく生きること」への強烈な憧れがあった気がします。身体が強いほうではなかったですし、小学校ではイジメに遭っていたこともありました。毎日図書館に通っては、「少年探偵団」とか「ホームズ」が繰り広げる冒険譚に心躍らせていて。こんな風に、かっこよく生きられたらどんなに素晴らしいだろうって思っていたような気がします。
■ノマドは『ドラクエ』のようなものソーシャルメディアにマイナスなし!
──なるほど。お互いに子どもの頃の思いが今に生きているわけですね。そして、おふたりは、「ウキウキ」「ノマド的な生き方」という共通項のほかに、ツイッターをはじめ、ソーシャルメディアを頻繁に利用されているという共通点もありますよね。
安藤 武井さんのブログやツイッターを拝見してたら、「百獣の王を目指す男」ってキャッチコピーが真っ先に目に入ってきましたよ! このコピーを使い始めたきっかけってなんですか?
武井 昔、オレゴンの山の奥でものすごく大きな鹿に出くわしたことがあって、奴を見た瞬間、「殺される!」って思ったんです。「今まであんなにトレーニングをがんばったのに、観光に来て、鹿に遭っただけでそれが全部終わっちゃうんだ……。こりゃいかーん!」と。それで、「なにごとも、準備しとかなきゃ簡単に終わっちゃう」ってことを痛感して、動物のことを調べ始めたんですよ。で、それを何かに生かせないかと考えていたところに、自分がウキウキする肩書をつけようと思いついて、「百獣の王だ!」って。
安藤 個人が誰でもメディアになれる状況では、言葉を作る能力、具体的には発信を受け取る側に自分がどんな人間なのかを伝えるための”キーワード化”がすごく重要なんですよ。私の場合は「ノマド」「セルフブランディング」「ソーシャルメディア」「フリーランス」という4つのキーワードを1年以上前に定めて、「この人は新しいワーク&ライフスタイルを実践している人なんだ」っていうイメージがツイッター上で拡散していくのを狙ったんです。でも、それを自然にやってしまう武井さんはすごいと思います!
武井 お、おお……分析されている。実はね、「百獣の王」をグーグルで検索したら、上位4つ目まで武井壮なんですよ! ライオンが5位! ライオンの長期政権だった「百獣の王」が今、日本国内のネット上では「百獣の王=武井壮」なんです!
安藤 すごい! やっぱり継続して発信し続けることって大事なんですよね。
──おふたりとも順調に活動しているようですが、これまでピンチはなかったんですか?
安藤 実は、独立してから5カ月間は収入が「0」だったんですよ。会社員時代は毎月の給料やボーナスもかなりいい額をいただいていたこともあって、それが0になった途端、社会から「お前いらねーよ」って言われてるような気がして。その頃は本当にノックアウトされてましたね……。
武井 唯一のピンチは、100メートルのタイムが11秒台に落ちてしまった時ですね。僕は陸上を始めて、最初の100メートル走が10秒9だったんです。それからずっと10秒台をキープしてたんですよ。それがアメリカに渡ってゴルフを始めたら、走らないもんだから体力もなくなって、2〜3年もたつと体重も増えて、すげー足が遅くなっちゃって。100メートルが11秒7にまで落ちたんですよ。
──それでも十分立派なタイムだと思うんですが……。
武井 いや、11秒台になるとスコアも伸びなくなって。それで日本に帰ってきてからトレーニングを強化して、今年、10秒台が出たんですよ。そしたらテレビにも出られて調子が上がってきたんです。武井壮は10秒台で走ってると最高なんだけど、11秒台になるとピンチが訪れる「武井壮11秒台ピンチ説」という現象が起きているわけですよ! だから日本の男子たち、100メートルは11秒を切っておけよ!
──いやいや、無茶言わないでください(笑)。安藤さんは、ピンチをどうやって脱出したんですか?
安藤 当然ですが、仕事がなければ仕事のことは発信できませんよね。おまけにつまらない見栄をはりたい気持ちから、「仕事がない。仕事が欲しい」と周囲に頼むこともできなくて。外には出かけるのだけれども、周りに自分の内面をさらけだすことができない「外こもり」状態を経て、どんどん後ろ向きになって、なおさら仕事がない状態に陥ってしまったんです。そんな状態がもうすぐ半年、となった頃に「このままじゃいけない」と覚悟が決まりまして。「よし、自分を発信するぞ!」と意を決して積極的に自分のことを発信するようにしたんですよ。そうしたら、少しずつソーシャルメディア経由で依頼が来るようになりました。まずは発信すること、そしてあきらめずにずーっと続けることですね。
武井 続けることって、プラスにしかならないですよね。僕のことを知らないのが0で、「武井壮つまんねーな」は1だと思ってます。「武井壮おもしれーな」がプラス100くらいな感じで。そうやって武井壮がどんどん伸びていけばいいなぁ。
安藤 武井”草”が伸びていくわけですね(笑)。「つぶやきがつまんない」とか言われたりしても、結果マイナスだったことはないですよね。
──自身の発信に対する批判もあるわけじゃないですか。それについてはどう考えてます?
安藤 ソーシャルメディアは世の中に対して開かれたツールですから、中にはそうした反応があるのはごく自然なことだと思います。『情熱大陸』放映中にツイッターのフォロワーさんが1万4000人ほど激増したんです。そしたら、人に好かれたいと思う気持ちが強くなりすぎて、つぶやきができなくなってしまって。「普通のカレーを食べていることをツイートしたらカッコ悪いんじゃないか」「いや、ここは庶民的なところを見せたほうが印象いいかな」とか考えちゃったり(笑)。人の視線を気にして、自分らしくなくなっていることに気がついたんです。それからはもっと自分に正直になろうと思って、発信をしていけばこういう日もあるさと前向きに考えるようになりました。
武井 僕は、毎日”エゴサーチ”してますけどね(笑)。ソーシャルメディアがなくてケータイが主な連絡手段だった時は、1時間誰からも連絡がないだけで「地球上の60数億人が、1時間=3600秒もの間に、誰も武井壮に連絡したいと思っていないのか……!」という不安があったもんで。
──これまたスケールの大きな不安ですね。
武井 だからソーシャルメディアが成熟してきた最近は、毎日が楽しいですよ。ツイッター開いたら、いろんな人が「武井壮、武井壮」って言ってくれて。「ほほう、悪口まで言っちゃうか!」なんて思ってみたり。僕は「武井壮」を知ってほしいっていうのが大前提にありますからね! 今や、その希望が動物にまで及んでいるくらいです!
一同 (笑)
武井 動物たちにも「お! 武井壮じゃん」って言ってほしいんですよ! ヌーの群れが「武井が来たから行こうよ」とか言って囲んでくれたり、ゴリラがオレのことを見つけてバナナ持ってきてくれたり。そんなことになったら、地球で生活するのが楽しくてしょうがないじゃないですか!
安藤 そうそう、ノマドというスタイルを生きながら、その中でインフラのようにソーシャルメディアを使って仲間を増やしていくのが楽しいんですよね。私、これって『ドラゴンクエスト』に例えられると思っていて。「サイゾー」読者の皆さんも、『ドラクエ』やったことある世代ですよね?
──そりゃもう、「復活の呪文」を入力していた世代ですよ。
安藤 それです、「復活の呪文」(笑)。『ドラクエ』のように、ある日自分の使命に目覚めて、ソーシャルメディア上で自分を発信するようになる。「私はこんなことを考えていますよ」「一緒にこんなことをやりましょう」とか、さまざまなことを日々発信していき、受け手の反応を見ながらレベルアップしていく。そのフィールドには、どんなモンスターやボスが待ち構えているかわからないですけど、「この指止まれ」とフラグを立てれば、自然と仲間が集まってくるのが現代の素晴らしいところ。個人が世界に自分を発信していくことで、人や情報がどんどんつながっていって、仲間やチャンスや仕事をつかんでいけるようになる。そんな冒険が始まると思うと、ワクワしませんか!?
(構成/高橋ダイスケ)
安藤美冬(あんどう・みふゆ)
1980年、東京都育ち。(株)スプリー代表。SNSでの発信を駆使した、独自のノマドワークスタイル実践者。さまざまな企業・業種からの依頼で活動しながら、連載、講演、広告出演なども行う。11月、初の著書をディスカヴァー・トゥエンティワンより発売予定。
武井壮(たけい・そう)
1973年、東京都生まれ。アスリート。中央学院大学在学中に陸上を始め、3年生の時、十種競技を開始、2年半後には日本タイトルを獲得する。その後、アメリカにゴルフ留学をしたり、台湾で野球チームのコーチを務めたりもした。8年以上家のない生活を送っており、日夜「百獣の王」を目指してトレーニングに励んでいる。
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